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友達とメイド

かくれんぼって英語では「ハイドアンドシーク」って言うらしいね。ちょっとカコイイ。

16


 翌日もベルはラルゴと一緒にシルヴァニア家へ庭仕事をしに来た。

 しかし案の定ベルはジェラルドに引きずられて行ってしまった。それをラルゴは「ガッハッハ」と見送る。


「なんですかもう!」


「なんですかとはなんだ!ベルはオレ様の子分だろーが!」


「子分じゃないよ!」


「ほほうこの侯爵家嫡男ジェラルド様に向かって良い度胸だな!」


 それでなぜか殴り合いのケンカになってしまった。といっても殴り合っているわけではなく、ジェラルドが一方的に殴っているのだが。ベルはベルで殴れないので、そのジェラルドの拳をかわしている。


 ベルはかわしながらも、ジェラルド以外の視線を感じ、辺りを見回す。


「貴様ぁぁオレを前に余所見とは!」


 その時ラッキーなパンチがベルのこめかみにクリーンヒットした。

 その後は馬乗りになったジェラルドの滅多打ちになり。

 満足したジェラルドは「もういい」とどこかへ去って言った。


 ベルは口の中を切った様で袖で口元を拭う。

 すると中庭の柱の影から小さい目がクリッとしたメイド服の女の子が顔を出していた。

 ベルは噴水の縁に腰掛けてもその女の子はジッとベルを見る以外動きを見せない。

 ベルも意地を張って視線を外さない。むしろこういう経験は過去にあった。そう、あの病院で知り合った女の子だ。

 なんだか凄い昔の事のように思えてベルは笑った。


「あ、あの……」


 唐突にメイド服に着られている女の子が、柱に隠れながらベルへ話しかけてきた。


「なに?」


 すると女の子はベルに近付いてきて、メイド服のスカートを少しつまんでお辞儀をして、布を差し出した。


「くれるの?」


 すると女の子は頷く。


「でも大したことないからいらないかな」


 女の子は紺色の髪のおかっぱ頭で目が瑠璃色のメイドであった。

 ベルはどこかで見たことあるなぁと首を傾げていると。


 女の子は恥ずかしそうに布を顔に当ててどこかへ消えて行った。

 ベルはなんなんだ?とそのままラルゴの所へ帰って庭仕事を手伝った。



「くそぉベルのクセにぃ!どうしてオレの言う事を聞かない!」


 ジェラルドはジェラルドでエレノアの授業中にも関わらず愚痴る。

 それを本の角で小突くエレノア。


「った!」


「アナタが学んでいるのは正にそう言う人に協力してもらえる様にするにはどうしたらいいのか?と言う授業です」


 ジェラルドは納得いかないと言う目つきで、エレノアを睨んだ。


「よろしい、ならばその話しを聞きましょう」


 ジェラルドはオレは偉いのに反抗するなんて許せないと言うような事を話した。


「当たり前です。ジェラルド様はまだなんの権限も持っておりません。偉いのはアナタの母であるクロエ様です。その権力を傘に威張るなんて情けないです。それに例え権力を持ってもそれを私的な理由で乱用すれば嫌われるのは当然の事。ですから、ジェラルド様はジェラルド様ご自身の力でなんとかしなければなりません。暴力でねじ伏せるなどもってのほか。相手が自分であったとするならばどう思うかを考えてみてはどうでしょう?」


 ジェラルドはうーんと考え込み。


「確かにオレの方が体もデカいし、むやみに殴り返す事も出来ないし。フェアじゃなかったかもしれない……オレ、ベルに謝るよ」


「グッド。素晴らしい判断ですジェラルド様。では歴史の授業を続けますよ」


「ええー」


「ええーとはなんですか。勿論ロスした分は延長します」


「悪魔!」


「ほほほほ悪魔なので悪魔らしく。数学の授業も追加します!まだなにか?」


「くっ」


 その日、ジェラルドはおとなしく授業を受けたそうな。




17


 昨日と同じくマーシアの宿屋で夕御飯を食べたベルはラルゴを見送り。モグモグと川魚の煮物みたいのを食べていた。


 今日はあの三バカ(アレックス、ガンドロフ、ルーディ)がいないので、静かな食卓となっている。


 その時騒々しく入り口の扉が開かれた。


「ひょーうい!!見てくれマーシアさん!!こんなに薬草がとれたぜ!!」


「まあ俺のおかげだよな!」


「いや私の頭脳のおかげでしょう!」


「んだとコラァ!!」


「はあん?なんですか?やりますか?」


「落ち着けって!興奮するなよ!マーシアさんに見てもらおうぜ!」


 入ってきたのは三バカだった。なんか非常に体に悪そうな草を大量に背負っている。


 マーシアの前に草の山が置かれる。その様子を三バカがキラッキラした目で見ている。


「コレ間違えてるよ。全部毒草だよ」


「……なん、だと?」


 三バカは真っ白な灰になった。力尽きて倒れた。


「ホンっトバカだねぇ?ね、ベル?」


 いきなり同意を求められたベルは、苦笑いをするしかなかった。



18


 ベルは眠れなかった。眠たくないわけではないが、どうしても気持ち悪くて眠れなかったのだ。

 ベルは顔を洗いに井戸へ行こうと一階に降りると、クレアの部屋から明かりが漏れていた。

 ベルはまだ起きてるのかな?とクレアの部屋のドアを開けると。クレアはベッドで縫い物をしているところだった。


「ベル君どうしたの?眠れないの?」


「い、いえ。大丈夫です。クレアさんも寝てないとダメです」


「うんそうね。じゃあおやすみベル君」


「はい」


 そう言って再び寝床に付くベル。


 今度はなぜかグッスリ眠れたベルだった。




18


 今日もベルはラルゴと庭仕事。と思いきや、ジェラルドがやってきてベルを引きずっていく。


「なんですか!やめてください!」


 中庭に来た所でベルは強引にジェラルドの腕を引き離す。

 ジェラルドはジェラルドで口をへの字にしたまま、ジッとベルを見る。


「ジェラルド様?」


「スマン!」


「は?」


「だから!昨日殴って悪かったって言ってんだよ!」


「ああー。いいですよ別に」


「今後オレ様は殴らないと決めた。許してくれ!それからジェラルド様と呼ぶな、ジェラルドで良い」


「そう……じゃあジェラルド!」


「おう、なんだ。ベル!」


「遊ぼう!」


「しかたねーな!」


 そして二人は遊ぶ事になったのだが、二人では面白く無いことがわかった。


「かくれんぼは良いんだが。二人だとつまらんな」


「そうだね。じゃあもう一人誘おうか」


「誰だよ」


 するとベルは、窓辺から顔をちょんと出してコチラを伺ってるメイドを指差した。昨日のメイド服に着られている女の子である。

 女の子は直ぐに引っ込んだがまた顔をだす。


「おい!そこのメイド!こっちへ来い!」


 ジェラルドが手招きする。女の子はパタパタと走りながら、ジェラルドの前でスカートをつまんで挨拶をする。


「お前、名前は?」


「……アリア」


「よし!アリア!今からかくれんぼするからお前が鬼をやれ!」


「で、でも、お仕事が」


 モジモジと小さく言い訳するアリアを強引に鬼にするジェラルド。


「百まで数えろよ!はい、スタート!」


 戸惑うアリアを完全にスルーして二人は一目散に逃げて行った。


「いーち……にーい……」


 アリアはしゃがんで両手で顔を覆うと数を数え始めた。


 


 ベルが隠れたのは裏の馬小屋の近くにある納屋で、さらに藁の中だった。カモフラージュは完璧で絶対に見つからない必勝法であった。


 しかしそれは裏切られ、直ぐに藁越しにポンポンと叩かれ。見つけられてしまった。


「見つけました」

 とニコニコ笑うアリアに信じられないと言う表情のベル。

 ものの十分たらずで見つけられてしまうとは……。ベルは隠れる事に自信があった分落ち込んだ。

 ちなみにジェラルドは始まって三分くらいで見つかったらしい。

 それから鬼を変えなんどもやったが、アリアには直ぐに見つかってしまう。

 一番下手なのはジェラルドだった。


「オレ様は隠れても有り余る存在感のせいで見つかってしまう……因果なものだ」


「そうだね、ジェラルドは隠れるなんて似合わないよ」


「そうだろそうだろ」


 三人は中庭の噴水の縁に腰を下ろし反省会のようなものを展開した。


「しかし、アリアは見つけるのが上手いな!」


 ジェラルドがアリアに話しかけると、萎縮しているのか照れているのか、俯き加減でコクコクと首を縦にふる。


「どうしてそんなに見つけるのがうまいの?」


「えと、なんとなくここかなって……思ったら」


「見つけたと。才能あるぞアリア」


 ジェラルドが話し遅いアリアに代わって結論を急ぐ。ベルは何の才能だよ!とツッコミを入れたかったが、確かにアリアの的中率は驚異的でありなんかの役に立つ様な気がしないでもなかった。それとは別にベルはやはりどこかでアリアを見たような気がして首を傾げる。


「ジェラルド様ー!お勉強の時間ですよー!早く来ないと教科増やしますよー!」


 どこか遠くの方でエレノアがジェラルドを呼んでいる。


「今日はなぜか捕まらない自信がある!ベル!またな!」


「ああ」


 そう言うとジェラルドはカモフラージュ用のギリースーツの様な物を着て駆けて行った。


 二人きりになったので、ベルはあの質問をぶつけてみることにした。


「アリア?あのー前にどこかであった?」 


「……」


 アリアは俯いていた顔を上げて、その瑠璃色の瞳でベルを見る。


「ノルニル村で見ました」


 ベルは心臓が止まるくらいに驚いた。そして思い出した、あの賊に襲われた村で女性ばかりが繋がれた列に居た女の子だ。


「そうだったのか……お父さんとかお母さんは?」


「皆死にました」


「……」


「でもカナリアさんが言ってました。ベルさんが知らせてくれたから沢山の人が助かったんだって」


「僕は必死に逃げただけだから」


「そんなことないです!」


 アリアはベルの手を握るが、ベルは涙を流しながら首を横に振る。


「……でも」


「私は大丈夫です。御屋敷の人達は優しいです」


「ありがとう。なんか逆に慰められちゃって」


「い、いえ。あ」


 手を握りしめていたアリアは直ぐに放して、噴水の縁から腰を上げて飛び降りる。


「元気出して下さいね!」


 するとそそくさと屋敷に入って行った。


 ベルは空を見上げながら、自分はなんて幼いのだろうと軽蔑した。本当は自分がアリアに言いたかったのに。

 強くなりたい。せめて誰か一人を守れる強さが欲しい。そんな事を思いながら拳を空へ突き出した。



「アリア!居ないと思ったらなんでそんな泥だらけなの!」


「……ごめんなさい」


「早く着替えなさい。着替え終わったら、皆と同じ様に夕餉の支度を手伝いなさい!」


「はい!」


 給仕長の恰幅のよいメイドに怒られたアリア。でもその足取りは軽やかであった。


 ちなみにジェラルドはあの後直ぐに捕まり、ギリースーツ姿で授業を受けたそうな。




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