雄蝙蝠8.ヴァンパイアに手を出すヴァンパイア
ヴァンパイアの住処で、動物を狩っては血を飲む生活に飽きてきた。ヒトの血がどうしても恋しくて、自分の腕を噛んで飲んでみたが、やはり不味いのだ。
見かねた母がこう言った。
『動物の血にハッカを混ぜたら、飲みやすくなるんじゃない?』
『血よりもにんにくの方が元気が出るわよ!』
それで解決するならばどんなに楽か。腹立たしくて、母とはしばらく口を聞いていない。
俺っちは気晴らしに外へ出た。ヴァンパイア達が家事をしたり、子供達が遊んでいたりと思い思いに過ごしている。
他のヴァンパイアの血ってどうなんだろ。皆女性だし、一応興味はある。ただ、番が生きているヴァンパイア達は避けたい。後が怖いからだ。
芝生に寝転がり、本を読んでいた女性に声をかけてみた。
「ねぇ、キミ。その本って面白いの?」
「…カルーアか。貸してあげようか?他にも本はあるから」
「そうじゃなくて、一緒に読んじゃダメ?」
「2人で読むような話じゃないんだけど」
「どんな内容でもいいんだ。キミと読みたいだけ」
「…しょうがないな。いいよ」
「やった!隣失礼するね☆」
血を吸うチャンスがきた。
「これは何系?」
「ヴァンパイアの冒険物語。動物と旅をするの」
「新しい事に出会うのは、ワクワクするよね。俺っちも新しい発見がしたいから、キミの血を吸わせて?」
「は?何言ってるの?」
「ちょっと痛いけど、我慢して。もう動物の血はうんざりなんだ…」
「っ!」
力加減に気を遣って、牙を刺す。にじんだ血を吸うと、動物の血よりはるかに美味しい味がした。
「ありがとう。やっぱり、キミの血の方が美味しい!」
「同族の血を吸うヴァンパイアなんか初めてよ。何してんの…」
「これ、巻くから許して☆」
「手慣れてるわね。いつもこんなんばっかやってるの?」
「ヒトの血が飲める事に気付いてからは、そうしてた」
「本当にチャラいわね…」
その後も隙があれば女性に近づき、血を吸わせてもらった。特に番を失って子供も独立している女性は、寂しさを紛らわせられると快く協力してくれた。(見た目は若いが、実年齢は相当なものだろう)
「血を吸う立場だったのに、吸われる日が来るとは思わなかったよ。旦那の気持ちが分かった気がするね」
「なるべく痛くしないように心掛けたんだけど、やっぱり痛い?」
「出産の痛みに比べればかわいいもんさ。あんたの吸血には、愛がこもってる。このくらいの加減であれば、毎日吸われても嫌にはならない。むしろ、病みつきになるね。番だっていつか見つかるさ」
「そこまで言ってくれるとは予想外だったけど、嬉しいな☆おばさんが運命の番ならよかったのに…」
「何言ってんだい!あんたはまだ若いのだから、こんな年寄りの相手なんかしなくていいさ」
「俺っち、年齢は全然気にしないタイプだから、無理してるワケじゃないよ。女性と交流するのが楽しいんだ☆」
「そうかい。あたしも話ができて楽しかった。若返った気分だよ」
「長生きしてね!またね☆」
おばさんと別れてからも、気分は晴れ晴れとしていた。最近は怒られてばかりだったから、お世辞でも褒められると嬉しいものだ。鼻歌を歌いながら次なるターゲットを探していると、声を掛けられた…。
最終話へ続く…
読んでいただきありがとうございます!
小話⑧今作はモブが多いです。挿絵の女性達も全員モブです。カルーアのせいですw




