雄蝙蝠6.悪事がバレたヴァンパイア
最近、服で首元を隠したり、首に布を巻いて歩く女性が増えた。若い人や高齢の人の区別なく同じ状態である。しかも、色んな噂で世間は持ちきりだ。
「ねぇ、聞いた?『ある診療所で薬を安く処方されるらしい』わよ」
「ええ、女性限定みたいね」
「あたしの親戚も噂を聞いて受診したけど、条件があるらしいの」
「それって?」
「『イケメンヴァンパイアに首の血を吸われる』のよ」
「イケメンならいいじゃない!私も具合は悪くないけど、顔を拝みに行こうかしら♡」
「それが行列ができるほど混んでて、3時間待ちは当たり前らしいわ。以前なら、1時間程度で診察できたとおじさんが言ってたもの」
「あ、あの人を見て!首に布を巻いてる」
「血がにじんでるわね…痛そう」
「世の中上手い話なんてないのよ」
「アタシもこないだ受診したけど、安くならなかったわ…」(純粋なオネエ)
「れ、例外もあるのかしらね…」
そろそろ潮時かと俺っちは思った。
予想していたよりも早い段階で患者が増え、多少の痛みをものともせず、吸血痕を残してでも費用を抑えようとするヒトの精神を理解するのは難しかった。
もし、自分が吸われる側ならそんなリスクは選ばない。痛いの苦手だし。
退職しようかと職場に出勤すると、上司から呼び出された。
「カルーア、君に話がある」
「はい」
「うちの診療所に患者が溢れかえっているのだが、なぜだと思う?」
「俺っちが薬代を安くしているから」
「もう1つ聞きたいのだが、君が働き出してから首をケガした女性が増えている。その事に心当たりはあるか?」
「それは…」
「正直に答えて欲しい。君の目的は何だ?病気やケガを治療する診療所がケガ人を増やすなんて、おかしな話だろう。そう思わないか?」
「確かに矛盾してるね。でも、俺っちも生きるのに必死なんだ。だって、ヴァンパイアだから」
「ヴァン…パイアだと!?非科学的なものが実在するなんて…」
「俺っちには鋭い牙が生えてる。ほらね☆」
口を開けて牙を見せると、上司は怯えて震え出す。
「やめろ…それ以上近づくんじゃない!僕を殺さないでくれ!!」
「怖がらないで。誰も殺してないから!それに、俺っちは女性の血しか興味がないんだ。男性の血なんか飲みたくないしww」
「そ、そうなのか…。無駄に騒いでしまった」
「まぁ、このまま働き続けるつもりはないよ。迷惑をかけてるのは間違いないしね。じゃ、そういう事で」
「あ、おい!いいのかそれで。最近の若い子はあっさり辞めてくな…」
俺っちは、踵を返して歩き出す。この世界でヴァンパイアとして生き残るのは難しい。改めてそう思ったのだった…。
雄蝙蝠7へ続く…
読んでいただきありがとうございます!
小話⑥ジェミニに今作を見せたら、彼の口ぐせの「〜☆」が移ってましたw もし、流行ったら彼は喜ぶかもね☆




