雄蝙蝠3.かつては、あどけなかったヴァンパイア
「ま、まんま」
「今『ママ』って言った?パパも聞いたでしょ」
「いや、『まんま』じゃないの?」
「絶対『ママ』よ!」
「…そう言う事にしておこうかw」
俺っちが初めてちゃんとした言葉をしゃべった日、ミモザ夫妻はもちろん、近所中に自慢しに行ったそうだ。
「カルーアは『忌み子』なんかじゃないわ!ちゃんと『ママ』って言える賢い子なのよ」
「へぇ、そうかい」
「まんまぁ~」
「ほら、今も言ったでしょ」
「もう帰ってくれ。1軒1軒訪ね歩かなくても、集落中に伝わってるよ」
「まだ全軒行ってないわ」
「エリカ、さすがにいいんじゃないか?これ以上は逆効果だ」
「…分かったわ。この子に何かあっては、一生自分を責めてしまうものね」
また、俺っちが歩き出す頃になると、どちらかが必ずそばにいて絶対に転ばせまいと構えていた。1歩進む毎に過剰な程に褒めちぎる為、歩きづらそうにしていたと後にミモザおばさんから聞いた。
俺っちが少しでも泣くと、すぐ村医者に見せようとするので、簡単には泣けなくなった。
子供達は割といるが皆女の子の為、遊びも限られてしまう。おままごとではお父さん役だったり、親の化粧品を借りて死ぬほど紅を塗られたりと、うんざりして何度も逃げた。
見かねた母が、主に遊びの相手役となってくれた。父の仕事が休みであれば、3人で遊ぶ。虫取りをしたり、ボールを蹴り合ったり、石で水切りゲームをしたりと女の子ではやりたがらない遊びができて満足だった。
俺っちが笑顔を見せる度に、両親は大喜びしてくれる。段々と自分がやりたい事ではなく、親が喜ぶ事をするようになった。村の学校で必死に勉強して1番の成績を取ったり、持ち前の運動神経でぶっちぎりのタイムを叩き出した。また、積極的に女生徒に優しく接したり、先生達の手伝いをして味方を作った。
こうして俺っちは、誰からにも愛される『理想の男』となり、『忌み子』などと揶揄される事はなくなった。
だけど、自分自身を失った俺っちは心が空っぽだった。
番探しの時期を迎えたのをいい事に、逃げるように住処を出ては仕事をして日銭を稼ぎ、その金で毎晩酒場に通って女遊びを繰り返す。普通のヴァンパイアとは違い、血を飲まず食事をする為、人間の男と変わりない。毎回違う子を宿屋に持ち帰って朝帰りする派手な日々を過ごしている。
心に空いた穴を埋める為にこんな日々を過ごしているはずなのに、住処へ帰る頃には虚しさでいっぱいになる。番としてピンときた女性は1人もいないし、何が足りないのか今だに分からなかった…。
雄蝙蝠4へ続く…
読んでいただきありがとうございます!
小話③「忌み子」というイメージを払拭させようと過保護に育てた結果、反動でグレてしまいました。カルーアは大暴れするので、引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!




