雄蝙蝠2.『忌み子』として生まれたヴァンパイア
ダリア・グラジオラス共和国には、人とヴァンパイアが住んでいる。前者は100万人いるが、ヴァンパイアはたった1,000人しかいない貴重な存在。
ヴァンパイアとして生まれた者は皆女性で、野生動物の血を吸いながら住処でひっそりと暮らす。
ある年齢になると、番を探しに街に出る。番は本能で分かるらしく、捕まえられた男性はヴァンパイアの住処へと連れて行かれる。彼らはそのヴァンパイアに血を吸われたり、子を為したり、働いて生活費を稼いで日用品や自分の食事を整える等、番として一生を捧げるのだ。
生まれた子供も女の子の為、母親と同じ運命を繰り返している。
これを聞くと、男性側がかわいそうに感じるかもしれない。しかし、番となる男性達は人の世界で生きるのに疲れていたり、変わったタイプが多いので、むしろヴァンパイアの住処でスローライフを送る事に向いていたりする。
例として、母エリカの友達のミモザと番のアリウムを挙げる。
アリウムはにんにく好きで、本来ヴァンパイアの天敵であった。しかし、ミモザが番探しの途中で転んだのをきっかけに2人は出会った。ミモザを助けようとしたアリウムは、にんにく臭の為に彼女から避けられてしまった。
しかし、彼は決して諦めなかった。
大好きだったにんにくを絶ってまで、いつ会えるか分からない彼女に惚れていたのだ。
ケガの回復後に、番探しをしにきたミモザと再会して2人は結婚した。その後、一人娘を授かって幸せに暮らしている。
ヴァンパイアの寿命は200年と長く、生きている間に番が見つからないまま亡くなったり、番を見つけても彼らに先立たれてしまう事がほとんど。子を授かれない事もあったり、番の後を追う者もいる。ヴァンパイア達も、決して生易しい世界では生きていないのだ。
ちなみに、動物の血よりも人間の血の方が美味しいらしく、必死で番を探すのはこの為だとも言われている。
ここまで話してきたが、おかしいと思っただろう。
そう、俺っちは本来生まれるはずのない『男』のヴァンパイアなのだ。
母・エリカはヴァンパイアとしては珍しく、父子家庭だ。彼女の母親は寿命間近のヴァンパイアだったらしく、エリカの命と引き換えに出産した。
残された父親は、動物の血を一切飲ませずに普通の食事でエリカを育てた。もちろん、にんにくが出る事はなかったが。
血が苦手な理由は、恐らくこの環境で育った為だろう。
にんにくに至っては、街の路上で倒れていた所に人間からにんにくを投げつけられても平気だった事から、食べられると気付いたそうだ。
なんやかんやあって、父となるアキメネスと出会って子供を妊娠した。そして生まれた俺っちを見た現場が凍りついた。
「なんで、なんで男の子なの?」
「不吉ねぇ」
お産婆さんや取り巻きが早々に立ち去ったが、両親は俺っちに真剣に向き合ってくれた。
「エリカ、オレは男の子でも嬉しいよ!大事に育てよう」
「そうね!生まれたこの子は何も悪くないもの。来てくれてありがとう。大好きよ♡」
こうして『忌み子』の俺っちは、親バカ全開で育てられる事となる…。
雄蝙蝠3へ続く…
読んでいただきありがとうございます!
小話②前作を読んだ事がない人向けに説明していますが、この際はっきり言います。読んでいただいた方が分かります!




