第7話 パーの試練
「これでチョキの試練合格者が10人決まりましたのでチョキの試練は以上になります。ありがとうございました。」
チョキの試練のじゃんバトのレフェリーを務めたチョキ君はやっと仕事が終わってホッとしていた。
「コンコンココーン!」
逆転勝利でチョキの試練の10人目の合格者になったごんすけは両手をきつねの形にして腕をクロスして叫んだ。
自分で考えたポーズだ。
「コンコンココーンって何?」
チョキの試練合格者の1人、香港のリンはごんすけの謎の掛け声に、思わずきょとんとした。
「分からないけど嬉しいって事じゃない。」
同じくチョキの試練合格者のイギリスのキャサリンはフォローを入れた。
「あれって日本で流行ってるのかい?」
アメリカのマットは日本人のドボ名人に聞いた。
この2人もチョキの試練合格者だ。
「いや全く。」
ドボ名人はすぐに否定した。
第10戦で敗れた西ドイツのフリッツは椅子に座って上を向いたまま固まっていた。
「もう終わったん?」
チョキ君に声を掛けたのはグー君とチョキ君の三つ子の兄弟のパーちゃんだ。
顔も身長も体型も、クルクルパーマまでグー君達と同じ。ただし女の子で、髪色はピンク色。Tシャツにはパーのイラストがプリントされスカートを履いている。
「終わりました。」
チョキ君はやり切った顔で答えた。
「あそこで固まってはる子おるけど…。」
パーちゃんはフリッツを指さした。
「もう終わりだからそのままにしときましょう。」
チョキ君は淡々と言った。
「まあウチはどっちでもええけど。ほな、いくか。チョキの試練合格者のみなさーん!ウチがパーの試練案内人パーちゃんどす。試練会場すぐ近くやさかい。だから歩いて行きまひょ。」
パーちゃんの声が響き渡り、チョキの試練合格者達はパーちゃんの顔を見た。
また同じ顔かとほとんどの者は思った。
OP『お子様歩いてる』
お子様歩いてるー
お子様歩いてるー
イカセノミーカーハビロチャマアー
お子様歩いてるー
お子様歩いてるー
お・子・さ・ま歩いてる〜〜
チョキの試練合格者達がパーの試練会場に歩いて向かっていると、ごんすけはドボ名人を見つけた。
「あっドボ名人。んちゃ。」
ごんすけは笑顔でドボ名人に近付いた。
「あーさっきの。どうも。」
ドボ名人はごんすけのテンションの高さに少し戸惑いながら返事をした。
「オイラの事知ってんだ。」
ごんすけは更にテンションが上がった。
「あんな逆転勝ち見せられたらそれはね。」
ゲーム好きのドボ名人にとってごんすけの勝ち方は印象に残っていた。
「あー、さっきのじゃんバトってゲームの事か。それより高橋名人とのゲーム対決ってどうなったの?オイラこの世界に来たから見れなかったんだ。」
ごんすけは番組が始まる前にアマチャロビに飛ばされたので、ずっと気になっていた事だった。
「いや、僕も控室にいて、対決の直前にここに飛ばされたからね。」
ドボ名人も憧れの高橋名人との対決したかったので、ずっと引っかかっていた。
「えー、楽しみにしてたんだけどなー。」
ごんすけは心底残念がった。
あまりにもごんすけの声が大きくて他の参加者にも聞こえていた。
「おー、さっきのごんすけとかいうミラクルボーイ。オレンジキャップのボーイは有名人なのかい?」
マットがごんすけの声に反応して話しかけてきた。
「ドボ名人はゲームの名人だよ。」
ごんすけは自分の事のように自信まんまんで答えた。
「ゲームってさっきのじゃんバトみたいな?」
マットにとってもごんすけの勝ち方は印象が強くて頭に残っていた。
「じゃんバトも強かったけど、テレビゲームの時はもっと強いよ。」
ごんすけは何故か誇らしげに言った。
「あー、テレビゲーム。そうか。そのオレンジキャップはそのゲームと関係あるのかい?」
マットは帽子が好きなのでドボ名人の被ってる帽子が気になって仕方なかった。
「これは日本のプロ野球のファイターズってチームの帽子で、好きだから被ってるんだ。」
ドボ名人はファイターズファンなので帽子の事を聞かれて嬉しかった。
「おー、野球の!僕も野球やってんだよ。それで試合当日の朝に寝てたらこの世界に飛ばされたんだよ。」
マットは野球の話になってテンションが上がった。
「それでそのユニホーム?」
ドボ名人が指摘したマットの着てるユニホームは、白地に赤のピンストライプが入り、胸には赤で縁取られた青い文字で『Mats』と刺繍されているユニホームだ。
「そう、楽しみだからユニホーム着たまま寝てたんだ。」
マットは何故か嬉しそうだ。
「えー、もしかしてその帽子も?」
ドボ名人は目を丸くして言った。
その帽子は青地で、オレンジ色の『M』のロゴに白い縁取りがあるものだ。
「うん、被ってたよ。」
マットは当たり前みたいな顔をした。
「それはちょっと凄いな。」
ドボ名人は少し引いた。
「凄いかな。そうかもね。それよりごんすけ、さっきのコンコンっていうのは何だい?」
マットは初めて聞いた掛け声だったので気になっていた。
「コンコンココーンの事?キツネの雄叫びだよ。」
ごんすけは右手をキツネの形にして答えた。
「きつねの雄叫び?」
アメリカではキツネの鳴き声を「コンコン」と表す習慣がないため、マットはピンとこなかった。
「オイラが考えたものでさっきみたいな勝負で勝った時にやるんだ。確かマットだったよね。野球で勝った時にでもやるといいよ。」
ごんすけはノリノリになっている。
「ハハハ、機会があったらね。」
マットはやりたくないので軽く流した。
「ドボ名人もゲームで勝った時にやるといいよ。」
ごんすけは笑顔でドボ名人にも振った。
「それは絶対嫌。」
ドボ名人は断固拒否した。
「えー、嫌なの?それとも今やる?
ドボ名人もマットも一緒に。コンコンココーン!」
ごんすけは両手をキツネの形にして腕をクロスし、2人も一緒にやるように催促した。
「絶対やらない。」
ドボ名人は勘弁してくれと思った。
「俺も遠慮しとくよ。」
マットもごんすけのテンションに困惑していた。
「はーい!みなさんパーの試練会場に着いたどす。」
パーちゃんがタイミングよく到着の案内をしたので、ドボ名人もマットもホッとした。
パーの試練会場は、マカランガーデンと呼ばれる場所にある石造りの建物だった。
その建物の木の扉には『MakaranRoom』と書いてあった。
「パーの試練はこのマカランルームに入ってもらうだけどす。試練名はマカランセレクション。マカラン様に選ばれた者は能力を得られ、選ばれへんかった者は何も起こらへん。…せやけど、精神的にきついんは、選ばれたほうかもしれまへん。」
パーちゃんは意味ありげな言い方をした。
「どういう事だい?」
マットは気になってすぐに反応した。
「あかん、ウチとしたことが口がすべったわ。堪忍え。…入れば分かるどす。」
パーちゃんは言いながら手のひらを口に当てた。
「そうかい。分かったよ。」
マットはまだ気になってるが、それ以上は聞くのをやめた。
「それではまずはマーシャ・ミコワはんからマカランルームへ、どうぞお入りやす。」
気まずい空気を振り払うように、パーちゃんはすぐ試練を始めた。
「入ればいいのね。」
マーシャは無表情でパーちゃんに聞いた。
「ええ、そうどす。」
パーちゃんが頷くと、マーシャは無言で扉を開けて中に入った。
「どうなるんだろう。」
妙な緊張感にキャサリンは息を飲んだ。
「さっきのじゃんバトでは別格だったしね。ここはカタイんじゃない。」
リンも若干緊張しながら答えた。
「そうだよね。さっきは本当に凄かったからね。」
キャサリンが話していると、キーッと扉の開く音が響き、マーシャが外に出てきた。
「何も起きなかったわ…。」
マーシャは淡々と呟いた。
ED『タマちゃん』
タマちゃん
タマちゃん
タマちゃんみたいだね
かわいい
かわいい
タマちゃんみたいだね
タマちゃんみたいだねパカパン
次回予告
やあ、オイラごんすけ。
ごんすけって名前、父ちゃんが『ごんぎつね』が好きで、そこから付けたみたいなんだ。だからオイラもコンコンココーンって考えたんだ。ドボ名人は嫌がってたけどファイターズでそのうちきつねの踊りとか流行るかもね。
そんな訳で次回の話は歌姫。
お楽しみに。




