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4話

第四話 夜が来る


数字は減っていた。


【997】


さっき見た時よりも。


いつの間にか。


俺と彼女はしばらくその数字を見ていた。


つまり。


この短時間で、また誰かが死んだ。


そういうことだ。


「……減ってる」


彼女が小さく呟く。


俺は何も言えなかった。


言葉にしたくなかった。


人が死んでいる。


そんな当たり前の事実を。


認めたくなかった。


外では相変わらず爆発音が響いている。


遠いようで近い。


近いようで遠い。


時間の感覚がおかしくなっていた。


「そういえば」


彼女が口を開く。


「名前聞いてなかった」


「あ」


確かにそうだった。


「俺は悠人」


「私は美咲」


それだけだった。


苗字も聞かない。


どこの学校かも聞かない。


そんな気分じゃなかった。


ただ。


少しだけ。


本当に少しだけ。


知らない人ではなくなった気がした。


グゥ。


変な音が鳴る。


お互い固まる。


そして美咲が顔を赤くした。


「ご、ごめん」


「いや」


俺も腹が減っていた。


そうだ。


考えてみれば当然だった。


人間は殺し合いをしなくても死ぬ。


食べないと。


飲まないと。


生きていけない。


「食料とかあるのかな」


「探すしかないと思う」


正直、外へ出たくはない。


でも。


このまま隠れていてもどうにもならない。


その時だった。


『参加者の皆様へ』


突然。


空から声が響いた。


俺達は顔を上げる。


またあの声だった。


『ゲーム開始から三時間が経過しました』


『現在の生存者は九百八十四名です』


「は?」


思わず声が出た。


美咲も固まっている。


さっき997人だった。


十三人。


たった数分で。


十三人も死んだ。


『なお、夜間は危険度が上昇します』


『安全区域は存在しません』


『どうか最後までお楽しみください』


放送が消える。


沈黙。


誰も喋らない。


「お楽しみくださいって……」


美咲が呟く。


その声は少し震えていた。


俺も同じ気持ちだった。


ふざけている。


人が死んでいるのに。


その時。


窓の外が少し暗くなった。


夕方だった。


気付けば太陽が傾いている。


もう夜が来る。


嫌な予感しかしなかった。


その時。


ドンッ!!


下の階から音がした。


俺達は同時に口を閉じる。


ドン。


ドン。


何かが階段を上がってくる。


一歩ずつ。


ゆっくりと。


建物の中は静かだった。


だから余計に聞こえる。


足音だ。


誰かいる。


俺は息を止めた。


美咲も顔を青くしている。


ドン。


ドン。


確実に近付いてくる。


偶然じゃない。


この建物を目指している。


俺は周囲を見回す。


逃げ道は。


ない。


そして。


ギィ……。


部屋の扉がゆっくり開いた。


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