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19話

第十九話 追われる理由


「いたぞ!!」


男の声が響く。


道路の向こうから十人近い参加者達が走ってくる。


全員の視線は同じだった。


黒パーカー。


そして。


その手にある能力カード。


「やっぱりな」


スーツの男が小さく呟いた。


俺も同じことを思った。


能力カードを持って堂々と歩いていたのだ。


狙われない方がおかしい。


「どうする?」


俺は黒パーカーを見る。


すると。


黒パーカーは能力カードを俺へ差し出したままだった。


「だからいらないって」


「いる」


「いらない」


「いる」


話にならない。


なんなんだこいつ。


その間にも追手との距離は縮まっていく。


「お前ら何やってんだ」


スーツの男が呆れた顔をした。


「逃げるぞ」


それが正解だった。


戦える能力なんて誰も持っていない。


俺達は走り出した。


黒パーカーも当然のようについてくる。


「なんでついてくるんだよ」


「探していたから」


「意味が分からない」


本当に意味が分からない。


だが今はそれどころではなかった。


後ろから怒鳴り声が聞こえる。


「待て!」


「能力カード置いてけ!」


「追え!」


補給地点で見た連中だろう。


数が多い。


しかも全員が戦闘能力を持っていない保証もない。


走る。


とにかく走る。


角を曲がる。


ビルの陰へ入る。


さらに走る。


しばらくして。


ようやく追手の声が遠くなった。


「撒いたか?」


俺が息を整えながら聞く。


美咲は目を閉じる。


観測。


数秒後。


「まだいる」


最悪だった。


「何人だ?」


「七人くらい」


減ってはいる。


だが十分多い。


「なんでそこまで追ってくるんだ」


俺は黒パーカーを見る。


すると。


黒パーカーは少し考えた。


「たぶん」


「たぶん?」


「能力カードじゃない」


「は?」


今度はスーツの男が聞き返した。


「じゃあ何なんだよ」


黒パーカーは当たり前みたいに答える。


「俺」


沈黙。


誰も理解できなかった。


「お前?」


「うん」


「なんで」


黒パーカーは少し考える。


そして。


「よく追われる」


そう言った。


「そういう能力なのか?」


スーツの男が聞く。


黒パーカーは首を横に振る。


「違う」


「じゃあなんで」


「分からない」


俺達は顔を見合わせた。


意味が分からなかった。


このゲームに来てから何度も意味が分からないことはあった。


でも今のはかなり上位だった。


「お前本当に何なんだよ」


俺が言う。


黒パーカーは少し黙った。


そして。


「回収役」


そう答えた。


「能力じゃなくて?」


「仕事」


今度は全員固まった。


仕事。


今こいつ仕事って言ったか?


「待て」


スーツの男が真顔になる。


「仕事ってなんだ」


黒パーカーは当然のように答えた。


「回収する仕事」


「だから何を」


「死んだ人の能力」


空気が止まった。


風の音だけが聞こえる。


誰も喋らない。


俺も。


美咲も。


スーツの男も。


言葉を失っていた。


死んだ人の能力。


その言葉だけは理解できたからだ。


「……おい」


最初に口を開いたのはスーツの男だった。


「今なんて言った?」


黒パーカーは不思議そうな顔をする。


そして。


もう一度言った。


「死んだ人の能力を回収する」


まるで。


それが当たり前のことみたいに。


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