17話
「今の人、悠人を探してた気がする」
美咲の言葉に、俺は思わず聞き返した。
「なんでそう思うんだ?」
「分からない」
美咲は首を振る。
「ただ、そんな感じがした」
そんな感じと言われても困る。
だが。
観測の能力を持つ美咲が言うと、少しだけ気になった。
「考えすぎじゃないか?」
俺が言う。
「俺、あいつと会ったことないぞ」
「俺もそう思う」
スーツの男も頷いた。
「補給地点で初めて見たはずだ」
それは事実だった。
少なくとも記憶にない。
もし会ったことがあるなら覚えていると思う。
あれだけ特徴的な人物だ。
その時だった。
補給地点の方が騒がしくなる。
能力カードの存在が広まったらしい。
参加者達が集まり始めていた。
「まずいな」
スーツの男が呟く。
「完全に取り合いになる」
俺も同意だった。
食料や水なら分けることもできる。
だが能力は違う。
強くなれる。
生き残れる。
そう思えば誰だって欲しくなる。
「帰ろう」
俺は言った。
「今度こそ」
美咲も頷く。
スーツの男も反対しなかった。
三人とも同じ気持ちだった。
関わりたくない。
補給地点から離れようとした。
その時。
空から放送が流れた。
『補給地点イベント終了まで残り十分』
誰も聞きたくない声だった。
『なお、回収されなかった報酬は消滅します』
ざわめきが広がる。
補給地点の空気がさらに変わった。
焦り。
欲望。
警戒。
色々な感情が混ざっている。
そして。
「始まるな」
スーツの男が小さく言った。
次の瞬間だった。
補給地点の中心で怒鳴り声が響く。
誰かが能力カードを奪ったらしい。
押し合いになる。
悲鳴が上がる。
参加者達が距離を取る。
そして。
俺達は見た。
一人の男が能力を使う瞬間を。
地面から石が浮き上がる。
次の瞬間。
周囲へ飛んだ。
悲鳴。
混乱。
能力者同士の戦いが始まる。
「行くぞ!」
スーツの男が叫んだ。
俺達は走る。
後ろは振り返らない。
補給地点の方向から爆発音が響く。
また誰かが戦っている。
また誰かが死ぬのかもしれない。
でも。
今は関係ない。
俺達は逃げる。
ただ生き残るために。
しばらく走った後。
ようやく人の気配がなくなる。
三人とも足を止めた。
「最悪だったな」
スーツの男が息を吐く。
「能力カードとか出すなよ」
俺も同感だった。
あんなものがあれば争いになる。
分かりきっている。
その時だった。
美咲が急に立ち止まる。
「どうした?」
俺が聞く。
だが返事がない。
美咲は道路の先を見ていた。
俺達もそちらを見る。
そこには。
誰かがいた。
黒パーカーだった。
まただ。
補給地点から離れたはずなのに。
男はそこに立っている。
そして。
今度ははっきりと。
俺達を見ていた。
いや。
俺を見ていた。
逃げる様子もない。
近付いてくる様子もない。
ただ立っている。
まるで。
待っていたみたいに。
「……おい」
スーツの男の声が少し低くなる。
「今度は俺もそう思う」
「何がですか?」
俺が聞く。
男は黒パーカーから目を離さずに答えた。
「たぶんあいつ」
「お前を探してる」
黒パーカーは何も言わない。
だが。
その場から動こうともしなかった。
まるで。
ようやく見つけたみたいに。
「面白かったらブックマーク、下の評価よろしくお願いします!」
ブックマークや高評価、ランキングでこれからの投稿に力が入ります
___




