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11話

第十一話 弱い能力


補給地点は思っていたより静かだった。


もっとこう。


戦いが起きていると思っていた。


能力者同士が暴れていて。


近付くだけで死ぬような場所だと。


そう思っていた。


だが違った。


誰も動かない。


参加者達が遠巻きに補給地点を見ているだけだった。


まるで様子見だ。


「なんか変だな」


スーツの男が呟く。


俺も同感だった。


補給地点の中央には巨大なコンテナが置かれている。


食料らしきものも見える。


水もある。


それなのに。


誰も取りに行かない。


「罠か?」


「たぶんな」


男が頷く。


すると美咲が目を細めた。


「人が多い」


「それは見れば分かる」


「違う」


美咲は首を振る。


「戦える人が多い」


その言葉で少し緊張する。


確かに。


ここまで生き残っている連中だ。


強い能力者もいるだろう。


「そういえば」


俺はスーツの男を見る。


「分析ってどれくらい分かるんですか?」


「能力名だけだな」


「本当に能力名だけ?」


「本当に能力名だけ」


男は少し考える。


「ただ、近くなら見える」


「近く?」


「目が合うくらい」


不便だった。


思ったより不便だった。


「弱くないですか?」


「だからお前には言われたくない」


まただった。


「生存だぞ」


「知ってる」


「本当に何なんだよその能力」


「だから俺も知らない」


美咲が笑う。


「悠人の能力だけ説明雑だよね」


「ひどくないか?」


「能力説明、生存だけだもん」


それは否定できない。


実際そうだ。


分析。


観測。


名前から想像できる。


生存。


全く分からない。


「改めて思うんだけど」


俺は二人を見る。


「俺達戦闘能力ないよな」


沈黙。


「ないな」


男が答える。


「ないね」


美咲も頷く。


「終わってないか?」


「終わってる」


「終わってるね」


三人とも黙る。


周囲を見れば。


炎を出している奴がいる。


巨大な剣を持った奴もいる。


身体強化らしき能力者も見える。


明らかに戦える連中だ。


それに比べて。


分析。


観測。


生存。


ひどかった。


RPGなら即パーティ解散レベルである。


「なんで生きてるんだろうな俺達」


男が呟く。


「本当に」


美咲も苦笑する。


俺も少しだけ同意した。


その時だった。


男が突然周囲を見始める。


真面目な顔だった。


「どうしました?」


「見える」


「何がですか?」


男は少し黙る。


そして。


「強い能力が多い」


そう言った。


「例えば?」


「炎熱」


「雷撃」


「身体強化」


「念動」


聞くだけで嫌になる。


どれも強そうだった。


「逆に弱い能力もいる」


男は続ける。


「清掃」


「記録」


「収納」


「整理」


「俺達以外にもいるんだな」


「いるらしい」


少しだけ安心する。


俺達だけじゃなかった。


ハズレ能力組は。


その時だった。


男の表情が変わる。


初めて見る顔だった。


「どうした?」


思わず聞く。


男は一点を見ている。


補給地点の反対側。


人混みの向こう。


誰かがいる。


「なんだあいつ……」


男が呟いた。


声が少し震えていた。


「何が見えた?」


俺が聞く。


男は答えない。


ただ。


その人物を見続けている。


そして。


小さく呟いた。


「初めて見た……」


「能力名が読めない」


その瞬間。


空気が変わった。


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