ライバルはアイドル2-4
女子たちやメンバーと別れたFDは、確実どうやって20枚のチケットを売りさばくか思案を巡らせる。
イチバンは、さっそく新しく動画サイトに画像を上げた。
『初めてバンドを組みました! ライブします!』
主にいつも通りのジャズの即興をしながら、ライブの場所やチケットの申込みなどの方法を告げる。
華太は、また助っ人で出ているバンドの演奏のときに、観客を募集した。
「チケットはワンドリンク、2000円ね。場所はもちろんここっ!」
「おぉっ、とうとう華太が自分のバンドを……」
「このライブハウスからも、新しいバンドが生まれるのか……」
謎に古参のバンド好き観客が拍手する。華太は照れくさそうに笑った。
そして、問題は真尋と白玲だった。
『で、曲はできたのか?』
『うーん……一応。6曲、1週間で作った。今お前のタブレットに送る』
Macで作り上げた曲を、真尋は白玲に送信する。6曲、これが良い曲なら、1枚のアルバムにもなる。アルバムができたらライブハウスで販売することも可能だ。
『……ともかくあとの作詞は任せた。はぁ……』
『ため息つくのはまだ早いぞ。この曲を演奏した動画を作って、チケット売りさばくんだろが』
『お前もな。いい歌詞つけてくれよ?』
真尋はそうして白玲にバトンタッチする。あと、編曲やアレンジをお願いするために、華太とイチバンにも曲を送る。夜にふたりからもチャットが来た。
『……お前、意外な才能持ってたんだな?』
『真尋先輩、すごくいい曲ですね! 白玲先輩、どんな歌詞をつけるんだろう』
ふたりも真尋の曲をべた褒めする。ふたりは厳しい視点でアドバイスをすると思っていたので、真尋は驚いた。だが、嬉しい気持ちは素直に受け取る。
――こうして曲作りが完了し、楽器隊は演奏動画とともにライブチケットの販売をする。白玲はというと……。
『来る9月20日――レアーズでライブしますっ!』
SNSに動画を載せて宣伝はするが、歌っているところは載っていない。だが、演奏を披露しているのが――
『ギター、作曲、リーダー兼バンマスのマヒロ! ベース、ジャズベ経験者で有名なイチバン! ドラムス、レアーズの天才助っ人、華太! そして俺、ボーカル、白玲! 当日ステージで待ってます!』
『……なんか、人のふんどしじゃねえ?』
『何とでも言え。今から6曲作詞するんだから』
白玲の動画を見ながら呆れる真尋。華太とイチバンも苦笑いを浮かべる。
『だけど、これでひとり20枚、売れるかねぇ?』
『ってか、売るしかねーよ。無茶苦茶難癖つけてくるアイドル女たちに負けてたまるか』
『あの、彼女らはどんな方法でライブチケット売ってるんですかね?』
イチバンが男子なのに女子よりかわいらしく小首を傾げる。華太はSNSを起動した。
『えーっと、『みっくちゅ♡じゅーちゅ』公式と、河合、赤塚、青田の個人アカウントだな』
『ってか、あいつら地下アイドルかよ! 握手会付きとか、商売うめえな!?』
真尋が頭をかく。
『……俺たちも、握手会とかチェキとかするか?』
『バカか、触発されんな、リーダー』
『そうですよ。僕たちはロックバンドです。アイドルと一緒にしないでください。色恋営業なんて、才能がないやつらがするもんですから』
華太はともかく、イチバンがかなりきつい口調でアイドル研究生の文句を言っていることに、真尋は驚いた。
『……ともかく、僕たちは正々堂々と音楽だけを武器にして。ね?』
『音楽は武器じゃねえよ、イチバン』
『えへっ☆』
意外と思想が強いイチバンが誤魔化すように笑う。FDの4人は、各自ネットを駆使してチケットを売り始めた。
――そして迎えた9月20日。ライブハウスの控え室に、FUTURE DORAGONとみっくちゅ♡じゅーちゅは集まっていた。
「……いよいよだな」
「ふん、あたしたちに負ける準備はできてる?」
つっかかってくる赤塚を気にせず、入口のカメラを見るFDのメンバー。私服がパンキッシュだったり、いかにもロッカーみたいな男たちがいる。あれは多分FDを聞きに来た客だろう。
みっくちゅ♡じゅーちゅのファンも、男性のほうが多い。痛バを持っていたり、法被を着ている。だけど、どちらかというと今のところ、どうやらFDのファンのほうが多そうだ。
「……開場するぞ」
華太が口火を切ると同時に、ライブハウスの扉が開かれる。
「……お目当ては?」
「フューチャー・ドラゴン!」
ミーハーそうな女の子たちが、真尋たちのバンド名を叫ぶ。それを防犯カメラで見たFDのメンバーは、ガッツポーズをする。
次の恰幅のよい男性陣は、みっくちゅ♡じゅーちゅだ。ふたりは2枚チケットの半券をもらって、飲み物を引き換えに行く。
ここまでは大体同人数くらいだ。しかし、怪しい風向きになってくる。
「お目当ては『ヅカオンステージ』です!」
「……は?」
もぎりのスタッフは首を傾げる。カメラを見ていたFDもみっくちゅ♡じゅーちゅも頭に疑問マークだ。
「日にちを間違えて来た、他のグループファンか?」
カメラに向かって合図するもぎりのスタッフに、華太はマイクで連絡した。
『いいよ、入れちゃって。ヅカオンステージだかなんだか知らねえけど、俺たちのファンにしちゃる!』
『貸しなさいっ!』
そう言った華太のマイクを取ると、河合も叫んだ。
『同性ファンに売り込むのはみっくちゅ♡じゅーちゅよ! あたしたちのファンにするんだから!』
イヤフォンをつけていたスタッフは、やれやれと言った様子で2組とは関係ない『ヅカオンステージ』目当ての客を入れ始める。しかし、そこからが問題だった。
『ヅカオンステージ、見に来ました!』
『えっ、今日はヅカのワンマンじゃないの?』
『ともかくヅカファンです!』
関係ないグループのファンたちがFDとみっくちゅのファンを抜くのに時間はかからなかった。
開場してあと10分でステージが開く。控え室にもぎりをやっていたスタッフが駆け込んで来た。
「何、どうしたんだ?」
華太が血相を変えて走ってきたスタッフに声をかける。するとスタッフは、華太と河合に言った。
「よくわからねぇけど……今一番来場しているの……『ヅカオンステージ』だ。どうすんだよ! ヅカなんてグループ、知らねえんだけど」
「……えっ」
華太は思わず声を漏らす。河合もつい真尋と顔を見合わせた。
さ




