男子、メイクアップ!5-2
「……お待ち」
「ちがーうっ! 『お待たせしました、ご主人様』じゃいっ!」
「ぶっ!」
星川が堂島にツッコむところを見て、僕らは噴き出した。
……普通の女の子みたいだ。いや、というかそれ以上だったりするか? 僕は思わずアイドル研の3人とヅカ愛好会の3人、6人の女子の顔を見た。……アイドル研もヅカ愛好会もそれぞれかわいい。だが、ダンス男子は身長もあるので、まるでモデルみたいだ。
「へいっ! お待ちぃっ!」
寺山はやけくそなのが、江戸っ子口調でオーダーしたドリンクを並べる。それを横目で見ていた月本も、チョップを食らわした。
「だから、『お待たせしました、ご主人様』だって、2回も注意させんなっ!」
「へいへい」
「……こいつら反省してねぇよ。どうする? 上崎」
突然振られた僕だが、冷静に言った。
「じゃ、僕はサービスだけど、他のみんなのドリンク代を払ってもらうなら? 慰謝料ってことで」
「よっしゃ! いいね、それで行こう!」
「げっ、女装までしたのに、その上奢り? 勘弁してくれよ……」
へにゃへにゃとテーブルに倒れ込む堂島だが、このくらいしないと反省しなさそうだからな。僕が女の子だったら、更に危なかっただろうし。
堂島を退かしてドリンクをテーブルに並べると、その後ろに全員が座って、写真撮影だ。
「堂島と寺山は真ん中ね!」
「嘘だろ……」
赤塚と青田がノリよくダンス男子を真ん中に座らせて、僕たちもその後ろに立つ。
「ほら、レディ。笑って?」
「レディ……嬉しくねぇ……」
極が寺山のあごにちょんと触れて、口説き文句を言うが、ふいと横を向く。
「女のほうがかっこいいとは」
「言うな、白玲」
中山が大里をぼそっと注意すると、カメラを持っている星川と月本が僕たちにレンズを向けた。
「はぁ~い! お嬢様、ご主人様。写真を撮りまぁす! 行きますよ~? はい、チーズ!」
カシャリとシャッターの落ちる音がする。撮影すると、メイド男子ふたりの横から撮れた写真を確認する。
「おいおい、撮り直しだろ。これ」
「……ですね」
和宮と領土が苦笑いする。僕も見せてもらうと、女装した堂島と寺山が本人と識別できないくらいの変顔をしていた。
「せっかくかわいいのに、ダメじゃん」
千家がむすっとする。さすがヅカ愛好会でヒロイン役を務めているだけあって、ぷうと頬を膨らます表情もキュートだ。
「そうね。……そうだわ、雷来。あなたとのツーショットにしてあげたらどう?」
花柳がにっこり笑顔で指名すると、極は前髪をかき上げた。
「祈に頼まれたらNOとは言えないな。もちろん『男らしい』キミたちも……だよね?」
『男らしい』と言われた女装ダンス男子はがっくりとうな垂れる。
「なんで女装して、男女と写真なんて……」
「何でって、罰でしょ。ほら、さっさと写真撮るよ」
河合たちアイドル研がダンス男子を突き出す。
「はい、チーズ!」
カシャリ。
写真を何枚か撮る。撮ったものを見せてもらうと、なかなかに耽美なできあがりだった。ダンス男子たちも真顔だと美人だし、結局ヅカ愛好会・極はイケメンなのだ。
「ふうん……なかなか艶っぽい写真だな」
「これ、ブロマイドとして売っていい?」
「バカか。『売っていいよ』なんて言うかよ」
「もったいなー」
星川と月本が堂島に拒否されてがっくりとする。本人たちが嫌がる写真をブロマイドとして販売するのは、当然良くない。
「もういいよ。堂島も寺山も、もう暴力振るうなよ?」
「それ、女装させたり奢れとか言ってるお前らがいう!?」
僕はしらっと運ばれてきた『らぶらぶスイート♡チョコフラペチーノ』を食べ始める。……うん、冷たいチョコアイスだ。外が暑いからちょうどいい。
僕は失礼して、先ほど教室でやろうとしていた仕事をテーブルに置いた。
「上崎先輩、それは?」
領土が首を傾げる。僕は簡単に説明した。
「文化祭のときの警備計画だよ。あとステージの内容をまとめてる。FDもヅカオンステージもあるよ。あと、ダンス男子はチーム名あるのか?」
たずねると、ダンス男子たちはふふんと鼻で笑ってかっこつけた。
「ボクたちは『クレイジー・グラス』で申し込んでる」
「ああ、これか。文化祭初日」
確認すると、パンフレットとノートに書き込みする。僕はじろりと女装したダンス男子たちにズバリ言った。
「――君たち、出演禁止ね」
「……えぇっ!?」
堂島と寺山はドンッ! とテーブルを拳で叩いた。
「ちょっと待て! 連行して体育館倉庫に閉じ込めたのは謝ってるだろ! 更に女装して、写真まで撮られた! それプラス、全員のドリンク代金まで払った挙げ句にステージ出演禁止とか! どんだけ厳しいんだよ!」
「……上崎って何考えてるかわからなくて、少し怖いな」
中山がぼそりと和宮に耳打ちする。大里と領土もごくりと唾を飲み込む。僕はあっさりと言った。
「厳しい……ね。社会なんてそんなもんだろ。ともかく罪を犯したグループをステージに立たせられないだろ、常識的に考えて」
「ぐっ……」
「しかも誘拐した理由が、あるかどうかもわからない僕の『福の神パワー』にあやかるためって……。まぁ、FDもなんだけどさ」
「お、俺たちはちゃんと自分で頑張るって」
中山が言い訳する。しかし、それだけではなかった。
「……まぁね。だけど君たちにも問題があってね。ヅカ愛好会もなんだけど、君たち、学外でライブやったときにたくさん人集めたらしいね」
「ちょっと! そのライブ、あたしらもファンをいっぱい呼んだんだけど!?」
「そうよ! もともと対バンでFDと競ったのはあたしたち!」
河合と赤塚が声を荒げるが、そんなことは関係ない。ともかくこの2つ……アイドル研を入れたら3つのグループは集客力がある。だからその警備を考えないと行けないのだ。
「……そうだな。事前に観覧席チケットを配ってもらうかな。それならスムーズに行きそうだ」
「そうだな。そういうことなら、自分のステージくらいしっかりチケット配るよ」
和宮が真剣な顔でうなづく。ヅカ愛好会も納得してくれた。問題は……というと。
「くっそ……マジかよ。せっかくダンスの練習をしてきたのに……」
ダンス男子たちは、ステージに出さない。それはやっぱりいけないことをしたらペナルティなのだ。
「で? FDとメイド男子、アイドル研とヅカ愛好会が競うとか言ってたな。それはどういう意味だ?」
僕がたずねるとみんなは黙って顔を見回した。




