謎の主人公 4-3
ヅカ愛好会とみっくちゅ♡じゅーちゅの女子たちは、上崎を探すことにした。
まずは上崎のクラス。カバンがあることを確認する。――まだクラスにカバンがあるということは、帰宅しておらず学校にいるのだろう。
「上崎が行きそうなところって?」
青田がたずねると、極はあごに手を当てていくつか場所を挙げた。
「そうだな。文化祭実行委員会で集まるところにはいなかったから……学食か購買、それか職員室ってところかな」
「じゃ、まずは学食から見回ってみようか」
河合が音頭を取ると、さっそく移動する。靴箱の近くを通ったところだった。
「げ、みっくちゅ♡とヅカじゃん」
「FD! ……あ、そうだ。ちょうどよかった。あんたたち、上崎隼人どこにいるか知らない?」
赤塚が聞くと、男子たち――リーダーである真尋は女子をにらんだ。
「上崎? お前ら、俺たちの話を盗み聞きしてたな? 俺たちは情報料としてパフェ代3200円分払ったんだが?」
真尋が極に詰め寄る。さすがに4人でメイド男子たちに計3200円も払って得た情報だ。それを女子たちに盗み聞きされたらたまったものじゃない。
極は頭をかく。詰め寄ってきた男子に文句を言ったのは河合だった。
「何よ。同じ空間にいたんだから、嫌でも聞こえちゃっただけでしょ!」
「だからって、こっちはひとり800円払ってるんだからな?」
華太も顔を赤らめて怒っている。その間に入ったのが、極だった。
「失礼失礼。だったら僕たちも半額払うよ。3200円だから……1600円かな?」
極が財布を出すと、他の女子たちもやれやれと言った感じでお金を取り出す。だが、それを見ていたメイド男子・星川と月本は、首を振った。
「いーや、FDはひとり800円払ってる。女子たちもひとり800円! 800円×7人で5600円ね?」
星川が商売スマイルを見せると、月本もウインクする。それを見た女子たちは舌打ちした。
「それより上崎がどこ行ったかだろ。俺たちは会ったけど」
白玲が呆れた様子で言うと、星川と月本はニヤリとした。
「上崎に会いたいなら俺たちに任せろ!」
星川が胸を叩くと、イチバンが首を傾げた。
「星川先輩たち、何か心当たりがあるんですか?」
「まあな、とりあえずついて来い!」
月本がサムズアップする。一行は月本と星川について、パソコンのある視聴覚室に向かった。
視聴覚室に到着すると、星川はノートパソコンの前に座った。
「パスワード、わからないんじゃないですか?」
イチバンが星川に聞く。だが、星川はパスワードをブラインドタッチで素早く入力した。
「……パスワードが何だって?」
「いえ、何でもないです」
「星川、学内の監視カメラを」
「ほいよっ!」
月本が、星川の座っているイスの背もたれに触れる。画面は数分割に分かれた学校の監視カメラだ。
「えーと、上崎が俺たちと会っていたのは30分前……そのときは教室にいた」
真尋も画面を見つめて、星川に指示を出す。
「30分前、教室……ね。よし」
「あっ、上崎だ」
画面に出てきた上崎は、男子生徒ふたりと一緒にいる。これは――引きずられてる?
「……誘拐じゃね、これ」
華太は、上崎が堂島と寺山に連れ去られたところを確認すると、マウスで3人が移動した画面に切り替える。
男子生徒3人は、体育館倉庫のほうへと向かう。
「おいおい……これ、危なくねぇか?」
「行こう、俺たちも!」
FDとメイド男子は、視聴覚室から駆け出す。
「……これ、先生たちに知らせたほうがいいよね?」
青田が聞くと、極がうなづく。
「そうだね。僕たちは職員室へ寄ってから向かおう」
駆け出した男子生徒たちを見た女子たちも、職員室へと走り出した。
「おいっ! 何か武器は必要か?」
「いらねえだろ! 向こうは男子ふたり、こっちは男子6人と女子だ! そのまま体育館倉庫に突撃だ!」
FDとメイド男子はそのまま体育館倉庫に直行だ。職員室に向かった女子たちは――
「すみません! どなたか先生! いじめですっ!」
極が叫ぶ。さすが舞台慣れしているだけあって、声が通る。女子たちのところに、担任教師が立った。
「なんだ。物騒だな」
花柳がすぐ先生相手に状況を説明する。
「文化祭実行委員会の上崎くんが、男子ふたりに体育館倉庫に連れて行かれたところを見て……」
「なんだと? ……ちょっと見てきます! 案内しろ!」
先生に言われると、女子たちは体育館倉庫に走った。
――体育館倉庫内。僕を乱暴に連れてきた堂島と寺山をにらみつける。
「僕をこんなところに連れて来て、一体どうするんだ」
マットの上に座らされると、堂島と寺山は僕の目の前に立った。
「言ったじゃん。ボクたちの踊りを見てって」
「それだけでいいから……ね?」
「……」
僕は手荒な真似をしてでも踊りを見せようとするふたりに舌打ちする。
「……めちゃくちゃだな。そんなに僕の謎の力を過信されても困る」
「そこを何とかっ!」
「手荒な真似をして頼み事とはね。呆れてものが言えないよ」
僕が堂島と寺山を冷たく突っ返すと、ふたりは顔を見合わせた。
「……もし、僕の福の神とか言われている能力が本物だとして。その福の神に乱暴してたら罰当たりになるんじゃないか?」
はっきり言うと、堂島はカッとしたように顔をしかめた。それに気づいた寺山も舌打ちする。
「……お前は何か欲しいものあるのか?」
「今度はもので釣るのかよ。ダンスの実力でもなんでもないのな」
「くっ……言いたい放題言いやがって!」
「……どうする? 刻。ここでダンスを無理やり見せるか?」
寺山が堂島に聞くと、堂島はうーんと唸った。
「この狭くて暗いところで見せても、ダンスのダイナミック差がわかるかどうか……」
「ってか、お前らこんな狭いところで踊るなら、ぶつかって怪我するぞ?」
「お前は黙ってろ!」
堂島と寺山がハモる。僕は頭をかいて、咳き込んだ。体育館倉庫の砂埃がすごいのだ。
……こんなところでダンスを見ろ……だと? やめてくれ、暑っ苦しい。
僕は立ち上がると、ふたりに告げた。
「ともかく、暴力を使うなら君たちのステージは見ない。用事はそれだけだな? 失敬する」
「っ、ちょっと待てよ!」
堂島と寺山は僕の肩に手を置いて座らせると条件を出した。




