↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天下一★文化祭  作者: 浅野エミイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/24

伏兵・タカラヅカ3-4

「……だけど、どうしてみっくちゅ♡とヅカ愛好会が一緒にここにいるんだよ」


 アイスコーヒーのストローをくわえたまま、真尋がじろっと女子たちをにらむ。コーヒーを苦く感じながら、グラスをかきまわしている白玲につぶやくと、白玲もむすっとした。


「メイド喫茶は男の楽園じゃねぇのか」

「まあまあ、女装メイド喫茶ですから」

「おや、男女差別かい?」


 イチバンがフォローすると、極が小さく笑う。赤塚が口を開いた。


「あんたたちが食堂でそこの男たちに声をかけられていたところを、花柳さんが見てたのよ」

「ヅカファンのあんたが?」


 花柳は長い髪を耳にかけながら、つやのある微笑みを浮かべた。


「ふふっ、ステージに出るもの同士として、どんなことを考えているか、気になるじゃない?」

「はぁ……」


 華太が呆れたような視線を向ける。


「つまり、好奇心だよ」


 極がざっくり言うと、FDのメンバーは渋い顔をした。


「……ヅカ愛好会さん、あんたらは文化祭のステージに出たあと、何か目標とかあるんすか?」


 アイスコーヒーにミルクとガムシロを入れ忘れていた華太が、単刀直入にたずねる。ストローでグラスを混ぜると、コーヒーをごくりと飲む。

 FDの目標は、文化祭のステージに出ることだけではない。文化祭のステージは、あくまで中途目標。最大の目標は、ミュージシャンとしてデビューして、ビルボードのランキングに載ることだ。


 でも、みっくちゅ♡やヅカ愛好会は、ただ楽しくステージを盛り上げたいとか、自分たちの研究の発表をするためだけに文化祭のステージに立ちたいとか、真尋たちとは目標が違いそうだ。


「……僕たちがステージに立ちたい理由? 『音楽学校生じゃなくても負けないくらいの実力がある』――僕らはそれを世間に認めさせたいのさ」

「……」


 真尋たちは黙って極をじっと見た。なんだか訳ありみたいだ。極は河合のほうに目をやると、今度はそっちにたずねた。


「キミたちはどうなんだい? 紗理」


 みっくちゅ♡のリーダー、というかアイドル研究部・部長の河合は、赤塚と青田に視線をやってから口を開いた。


「あたしたち、昔はいじめられてたのよ。ぶりっことか、男に媚びてる、とか。それならぶりっこの頂点である、アイドルになっちゃえばいいじゃんっ! ってね」

「安直だなぁ」

「……いや、それはそれで立派な動機だよ」


 白玲が呆れるが、千家がフォローした。するとタイミングよく、星川と月本がオムライスを運んできた。


「お待たせしましたぁ~。メイドの愛のオムライス☆ でぇ~す!」


 テーブルの上にオムライスを置くと、星川と月本はケチャップを持った。


「ではではご主人様方、オムライスにおいしくなる魔法をかけますね!」

「お、おう……」


 華太は少しどぎまぎする。メイド姿の星川と月本は、女の子よりかわいいのではないか。

 真尋と白玲も照れ笑いしている中、イチバンは落ち着いていた。


「イチバン、余裕だな?」


 華太が聞くと、イチバンは頭をかいた。


「僕、お姉ちゃんがいるので」

「おーっ、紳士だな?」


 真尋がからかうと、イチバンは更に照れる。それを見て、面白くなかったのはアイドル研だった。


「何よ、あんたら。アイドルレベルのかわいいあたしたちが一緒なのに、女装した男たちのほうにデレデレしちゃって!」


 河合はぷんすかしながら、オムライスに魔法をかけているFDを見る。4人のオムライスに、星川と月本はケチャップでハートを描く。


「はぁい、おいしくなぁれ!」

「おいしくなぁれ!」

「バカみたい」


 魔法をかけるメイドふたりとともに呪文を唱えるFDたちに呆れる赤塚。しかし、その様子を見ていた極たちヅカ愛好会3人は、じっと真剣に見つめていた。


「……あの、なんですか?」


 イチバンが極たちの視線に気づいてたずねると、ヅカ愛好会は笑った。


「いや、じろじろ見てすまなかった。――ここは、メイドさんたちの『ステージ』だったんだな」


 感心したようにヅカ愛好会がメイドたちを褒めると、星川と月本はふたりでポーズを決めた。


「カフェ・アルテミスの看板メイド! セイラと!」

「ナギサ! 見参中っ!」


 びしっと決めると、ホールの他の客からも拍手が起こる。ヅカ愛好会の3人もだ。


 ヅカ愛好会の3人は、FDとメイドふたりをふむふむと見つめてから、口を開いた。


「アイドル研究部のレディたち。僕らと一緒に組まないか?」

「……へ?」


 ヅカ愛好会にふと呼ばれたみっくちゅ♡3人たちは、驚いた表情を浮かべた。そこで千家が補足する。


「私たち、3人だけだとステージでできる芝居が限られちゃうんだよね。だから、一緒にステージに出ようよ!」

「……いいの?」

「もちろんよ」


 花柳も優しく笑う。逆に焦ったのはFDだ。


「お、おい、いいのかよ」


 白玲が真尋の肩を揺さぶる。真尋はオムライスに夢中だ。


「真尋!」

「ふふっ、FDさんはあたしたちと組めばいいでしょ?」


 白玲に言ったのは、星川と月本だった。ふたりは極たちヅカ愛好会の3人を見て、ふふんと鼻息を荒くした。


「ヅカ愛好会たちは、男のあたしたちを見て焦った……。だから、みっくちゅ♡と組もうとした。でしょ?」


 艶っぽく笑う星川に、極は前髪をかき上げてから肯定した。


「……メイド喫茶というステージで、これだけお客を楽しませてるのはプロだよ。僕は感心した。そして……負けられないって思った」

「よしっ、それなら文化祭で勝負しようぜ。俺たちFDとメイド喫茶・星川、月本対みっくちゅ♡&ヅカ愛好会」

「何の勝負ですか?」


 勢い込んだ華太が立つと、イチバンが見上げる。少し華太は考えるが、代わりに口を開いたのは星川だった。


「文化祭のMVPを投票で決めるらしいじゃん? アイドル研&ヅカとFDとメイド。男子か女子、どっちがMVPになるか、勝負すればいいんじゃない?」

「それだ!」


 星川の提案に、賛成したのは華太本人だった。華太はリーダーの真尋を見た。


「MVP獲れたら、デビューに箔がつくぞ?」

「……悪くないな、それ」


 真尋もにやりと笑みを浮かべる。


「フッフッフッ、負けないわよ。フューチャー・ドラゴン!」

「それは俺たちの台詞だ!」


 赤塚が啖呵を切ると、白玲も腕まくりする。イチバンはオムライスのケチャップが口元につくのも構わず、ガツガツと食べていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。