↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/22

page20:おかえり

正面入り口で待っていると、地下駐車場から車が二台飛び出してきた。


それぞれに、楠木(くすのき)さんと織星(おりほし)さんが乗っていた。


私たちは慌てて飛び乗って、現場から離れた。


楠木さんによると、キザ野郎はあちこちの柱を焼き切りながら逃亡したらしい。四年前の意趣返しというやつかもしれない…と言っていた。


「…私と織星さんが相手にした構成員は七名ほどでした。全員、ただ無力化しただけでした」


楠木さんも、悔しそうに話す。


「あいつにとっては、結局、構成員たちは道具でしかないのでしょう。あいつ一人を見逃したばっかりに…」


遠くに見える土埃から、私たちが相手にしたものの恐ろしさを、改めて感じた。


話しているうちに、CAMの神奈川支部に到着する。


内田(うちだ)と海野(うみの)さんは、検査入院という形でしばらくここにいることになった。


もう深夜と呼んでいい時間だが、受付には明かりが灯っている。


海野さんは、支部に入る前に、こちらを見た。


「澄空(すみそら)さん、ありがとうね。ああして、色々言ってくれて」


「…うん」


失礼なことも言ったし、私自身の感情でしかないことも言った。


それを謝るべきかもしれない。


でも、ここで言っても、しょうがないことだとも思った。


「…内田さんが、いてくれたからだと思う」


私がそう言って内田を見上げると、内田は視線を逸らした。


「CAMは教育がなってねぇ。年上を呼び捨てしやがって」


え、そうだっけ。無意識だ。


「そういえば、内田さんっていくつなんですか」


「…碧(あおい)の一つ下だ」


「…え」


…うっそぉ!?絶対碧さんの方が若い。


内田さんは海野さんを見る。


「さっきはおじさんおじさん言ってたが、まだそんな歳じゃないからな」


海野さんは即答した。


「わかったよ、おじさん」


「おじさんじゃねぇ!俺にも名前があるんだよ」


「でも私、名前知らないよ?」


「ん、そうだったか…」


内田としては、推しにわざわざ名前を言って認知してもらう必要はないと考えていたのだろう。以前の写真の移り方からしても、そう思っていそう。


「だから教えてよ、おじさん」


海野さんの追撃に、内田は顔を歪ませ、溜め息を吐く。


「…内田詩行(うたゆき)」


「めっちゃ歌手っぽい名前じゃん」


「嫌味かよ」


言いながら、内田は振り返って支部入口へと歩き出す。


それを見て、楠木さんが毛利(もうり)さんに言った。


「私も付き添います」


「必要ねぇ」


聞こえたのか、内田は振り返る。


「お前はそっちの二人を家まで送ってくのが仕事だろうが」


楠木さんは、こちらをちらりと見て、笑った。


「…わかったよ」


内田は少し足を止めたままだったが、再度歩き出し、軽く手を挙げた。


「…今のお前、昔っぽかったぞ」


海野さんはそんなやり取りを見守ると、こちらへ振り返る。


「私も行きます。皆さん、本当に…ありがとうございました」


深々と頭を下げた。その動作もきれいだと思った。


顔を上げると、海野さんは内田を追うように走り出した。


「詩行おじさーん、待ってよー」


「そっちで呼ぶな!嫌味かってんだ。ていうか、おじさんじゃない!」


「あ、そういえば詩行おじさん、どうやって私の住所わかったの?」


「お前が俺のタクシーの客だったからだよ」


「え、いつ…?」


正直、海野さんをこちらに引き留めたのは、内田の力と、そして、あの男の子のシンドロームを目にしたことが大きいと思った。


自分のことというものは、外側から見ないと、判断がつかない。


毛利さんが、口を開く。


「我々も、今日はここに残る。監視を付けんわけにもいかないからな」


織星さんも続いた。


「私もそうします。車は、まだ碧に貸す必要があるみたいですしね」


楠木さんは微笑んで頷いた。


「ありがとうございます。お借りします」


織星さんは一度頷いたが、少し考えて指を立てた。


「明日の夕飯、約束通りですからね。私の家まで迎えに来てください」


「…あ」


「…忘れてましたね」


「いえ、明日とは言ってな――」


「明日です。では、お二人も、ゆっくり休んでください」


織星さんは、楠木さんにキーを投げ渡すと、私たちに手を振ってから支部へ向かう。


C対の二人も、苦笑を浮かべて後を追った。


自然と、私と澪莉(みおり)の視線は楠木さんへ集まる。


「…じゃあ、帰りましょうか」


織星さんの車はツードアのクーペ。やはり楠木さんのセダンタイプの車と異なるようで、後部座席は狭く感じた。乗り降りもひと工夫必要だし。


それでも、楠木さんと同じ車種と言ってもいい車を、若干のタイプ違いで購入した織星さんの考えは、少し掴めてしまう。


さすがに全員疲れ果てており、ほとんど会話がないままマグノリアに到着した。


楠木さんが鍵を開き、ドアノブを握る。


扉を開きながら、私たちに言った。


「二人とも、お帰りなさい」


私と澪莉は顔を見合わせた後、声を揃える。


「「ただいまです…!」」


マグノリアは、いつもより心地の良い暖かさだった。

・3話まで毎日投稿。4話以降は1日おきに続きを投稿予定です。

・CASE FILE 02: 歌声は完結しています。全22話完結(8/22完結)予定。

・pixivで全編投稿済みです。先が気になる方はこちら(url: https://www.pixiv.net/novel/series/15989613)へ!

・感想やリアクションが励みになります!どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。