page17:救出(後編)
「わかった。まずはこの階の内田を確保しよう。理市、発信機の信号へ案内してくれ」
「はい。こっちです」
理市さんの案内にしたがって進むと、男性用トイレまで来た。
ここはいわゆる廃墟なので全く気にすることはないのだが、それでも抵抗感はある。
当然ではあるが、理市さんと毛利さんは全く気にすることなく進む。
「ここです」
一番奥の個室に、念のためか銃を向け、理市さんが言った。
毛利さんは私たちに下がるようジェスチャーをした上で、隣のドアへ身を寄せた。
腕のみ伸ばし、その個室の扉を叩く。
「…いるか?」
反応は早かった。
「…毛利の姐さんか」
毛利さんが頷くと、理市さんが扉を開ける。
すると、フタの上に内田が腰掛けていた。
「…すまねぇ、助かった」
毛利さんは、内田が立ち上がるのを補助する。内田は胸を庇うようにしていた。あの杖を突き立てられた箇所だ。ひどく火傷をしている。
「…知っている状況を話せ」
「…すまないがあまり力になれない。ここに来る前は一つ下の階の倉庫みたいなところに、海野海月といたが」
「そこからは移動したらしい」
「まぁ、そうだよな」
内田は個室から出ると辺りを見渡して、私と澪莉を見て視線が止まる。
「…あんた、小さい方が碧の娘か。思ったより元気そうだ」
…娘!?
驚いて澪莉を見ると、澪莉も首を傾げつつ、内田の手錠を外していた。
「…?血のつながりはありませんし、父娘の年齢ではありません」
「いや、例え話だ。碧から聞いてる。で、そっちは噂の新人か。こんな現場までご苦労なこった」
「…どうも」
トイレの出口まで来て、毛利さんは通信機に触れる。
「挨拶は後だ…楠木君、織星君、聞こえるか?」
自然と毛利さんに視線が集中する中、内田が突然表情を変える。
「姐さん!!」
「っ!!」
内田の声を受けて、毛利さんは出口に視線を向ける。
私も見ると、黒い人影が見えるようだった。
楠木さん?いや、だとすると内田の反応がおかしい。それに、そのサイズが変だ。
考える間に、毛利さんは瞬時に移動して人影に向かっていった。
「…セァア!!」
体当たりのような姿勢で人影にぶつかり、一瞬宙に浮く。
そして、その瞬間。
「…圏です!」
私が叫ぶとほぼ同時に、甲高い音が、金属を爪で弾いたような音が空気を裂いた。
そして、毛利さんは瞬時に脱力して、姿勢を保てず背中から地面に落ちた。
…マズい。
私が飛び出る前に理市さんが前へ出て銃を構えた。
しかし、再度金属音が響く。
今度は少し小さい音。しかし、反応が早かった。
理市さんは手が痺れたように、銃を取り落としてしまう。
この音…響きは、海野さんを連れ去る時のあの音だ。
でも、それならばおかしい。私たちは対策してる。事実、私の耳にはそんなにダメージがない。
でも、毛利さんは動けず、理市さんだって…。
…音。
いや、違う。織星さんも言っていたではないか。
『私の呼吸から伝わる振動を制御して伝えました』
音として判断すると視野が狭くなる。
あの甲高い音の振動で、筋肉に作用した…!
「何でもかんでも武器だけではな…!」
内田は理市さんを庇うように前へ出て、懐中電灯を灯す。
暗闇に慣れ切った私たちと同様に、突然の光に対して、相手のキャリアの行動も止まったようだ。
「このままじゃ無理だ!C対の若いの、お前は歩けるか!?」
「はい…」
「姐さんは俺が背負う。奥に逃げるぞ!走れ!!」
考える暇はない。
私たちは内田の提案通りに動いた。
来た道はキャリアに塞がれる形になっている。反対側へ向かって走る。
この広い道は、両開きの大扉へと続いた。
振り返ると、相手のキャリアも追ってきている。
人影としては大きくない。澪莉よりも小さい。
あんな、子どもが…!
それでも、今は逃げるしか…ここに、入るしかない!!
理市さん、澪莉と共に扉を開けて雪崩れ込むようにして入ると、そこは…
「コンサート、ホール…」
・3話まで毎日投稿。4話以降は1日おきに続きを投稿予定です。
・CASE FILE 02: 歌声は完結しています。全22話完結(8/22完結)予定。
・pixivで全編投稿済みです。先が気になる方はこちら(url: https://www.pixiv.net/novel/series/15989613)へ!
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