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煌めく星と湖と

やはり、華やかな場も欲しいかなぁと…



 離宮で開かれた祝勝会には国中…いや国外からも祝辞が届き、名だたる賓客が列席した。

 王子の来場が高らかに告げられ、皆、入口の扉に視線を集め、期待を高まらせる。

 扉が開き、王子が妃と共に現れると、離宮には割れんばかりの拍手と歓声が響き渡った。

 王子は眩い白のローブに身をつつみ、胸には戦功の証である銀の十字大勲章を掲げている。十字の中央には紫水晶(アメジスト)が十字の先には萌翠石(ペリドット)があしらわれている。

 妃は煌めく銀のドレスを纏っていた。美しく引き締まった背中には首から垂れる銀の極細の鎖が放射状に輝いている。

 それはまるで、雪の重さから枝を守る雪吊りの様で、厳冬の国ブレイグからの守りを彷彿とさせる。

 ドレスには紫水晶(アメジスト)のかけらが散りばめられ、キラキラと光を反射していた。

 会場の中央を優雅に歩をすすめる二人にあちこちからため息が漏れた。

 王と王妃の元へ二人が歩み寄り、深く頭を垂れる。

 王は感慨深げに頷くと高らかに告げる。


「改めて皆に紹介しよう。長きに渡るブレイグとの戦争を終結させた功労者である我が王子を!」


 グレンとジェシカは賓客に向き直り再び頭を垂れると、離宮は歓声に包まれた。


 

 次から次に声をかけられ、王子ともはぐれてしまったジェシカは王子の手腕や、双子の兄アンソニーの戦地での猛攻を讃えられた。

 本当はアンソニーのフリをして出陣した自分の事だから、なんだかこそばゆい。

 そしてアンソニーを見ると、盛りに盛ってここぞとばかりに戦場での活躍を周りに話している。

 劣勢からの逆転劇。最後は力尽きて捕縛され捕虜にされた事実は綺麗に抹消され、撃退したことになっている。

 あまりの捏造ぶりにデイビッドやセインに止めさせろと目配せしても、お手上げとばかりに両手を開き、大げさに肩をすくめていた。

 張本人としては居た堪れなかった。


 一つ一つの熱意ある心からの賛辞に丁寧に応対し、のどもカラカラになった。

 主要な賓客との挨拶を済ませ、ジェシカはバルコニーに出て一息ついた。

 夜風が心地よかった。


「あ…」


 バルコニーの向こうには湖がさざめく星々の瞬きを水面に映していた。


「帰ってきたんだなぁ…」


 この湖と星々が様々な思い出を想起させジェシカは微笑んだ。胸の奥に切ない何かが込み上げてくる。


 グレンと再会した湖のほとり

 皆で眺めた星空

 求婚のあと逆三日月が湖面に沈む茜に染まる夜明け

 婚礼の夜、星空だけが見届ける二人だけの誓い


 星々が沈む湖は数多の光を抱え、変わらず瞬いていた。


 ふと、背中が温かくなり柔らかく抱きしめられた。


「凄く、きれいだね」


 耳元で囁かれる低く心地良い響きに、ジェシカは顔を向ける。

 そこには優しく見つめる紫の双眸があり、ジェシカの新緑の瞳を映し出していた。

 …よく抜け出してこれたものだ。 

 抱きしめる手にそっと自分の手を重ねる。


「ええ、星が…」


 グレンが何を指しているかはもうわかっているが、やはり、照れくさい。


「君が、だよ。僕の光は君だけだ。愛してるよ…」


 グレンは背中越しにジェシカに口づけを落とした。



これを載せるのはすべてを描ききってからと思っていましたが、いつまでも小話が出てくるのでまあこだわらなくて良いか、と投下。

ジェシカのドレスはアンソニーが仕立てたものです。

グレンの色彩で固めて戦勝の祝賀ムードの演出です。

雪吊り…わかりますか?冬に雪の重さから松の枝などを守るために施されるものです。急に和風だけど大好きなモチーフなので(笑)

銀の十字大勲章にはアメジストだけだったのがグレンの要望でペリドットが追加であしらわれています。

ま、グレンは戦場では悪手や後手ばかりでジェシカの働きがなければ全滅でしたから、感謝の意味を込めて。

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