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前日譚 オニクセル侯爵の純愛

狸親父は純愛でした




「この子たちは、きっと私の事を忘れてしまうのでしょうね…」


 病床によじ登り、絵本を読んでもらいながらスヤスヤと寝息を立てている双子。その頭を撫でながら、ロゼリアはぽつりと呟いた。

 顔は青白く、息は途切れがちだった。


「バカなことを言うな。早く元気になって、孫の顔を見るくらい長生きしないと」


 若き日のオニクセル侯爵は、今にも儚く崩れそうな妻をそっと寝台に横たえてやった。


「本当に…そうできたら…。でももう、これ以上は難しそうです」


 ロゼリアは昔から身体が弱かった。

 熱を出しては寝付く日々を繰り返し、同世代との交友もほとんどない生活。このまま、何もないまま死ぬ時が来るのだろうと諦めて生きていた。


 ところが、そんな自分に突然、婚姻の打診があった。

 とても女主人の仕事など務まらないと断ったが、ただいてくれるだけでいいから、と、押し切られたのだ。


 そうして、辺境とはいえ立派なオニクセル侯爵家に嫁いだものの、なぜ自分が選ばれたのかずっと不思議だった。


 伴侶となった侯爵家の三男は父が剣の指南を務めており、稽古のためにロゼリアの家に頻繁に訪れていた。


 初めて会ったのはいつのことだっただろう。

 あれはロゼリアがいつものように外気浴のため木陰に座っていた時のこと。

 軍の剣術指南役である父に完膚なまでに叩きのめされた少年を助け起こし、顔を拭いてあげたことがあった。

 ロゼリアよりずいぶん年下だったはずのその少年は、時を経て立派な青年へと成長していった。


「わたくしを、伴侶に願われたのは何故ですか? この様に年嵩で、とてもお役目を果たすことなどできそうにありませんが」


 ロゼリアは、そもそもあと何年生きられるか分からないほど病弱だ。

 幼い頃には、成人まで生きられるかどうか…と言われていたため、今生きていることすら奇跡だと思っていた。


「ただ、そばに居てくれるだけで十分だ。俺は感謝している。俺が伴侶を望める年齢になるまで、君が誰のものにもならなかった事に」


 後にオニクセル侯爵となるその青年は、幼い頃に出会った、消え入りそうに儚いこの女性をずっと特別に思っていた。思慕が恋に変わるのに特別な出来事などなく、触れ合いもなく、ただ木陰で本を読む彼女を遠くから見つめ続けていたのだ。

 侯爵家には上に二人の兄がおり、三男である彼は比較的自由な立場にあったことも後押しして、ロゼリアを妻に望んだのだった。

 身体を締め付けすぎない仕立てのよいドレスに身を包み、ロゼリアは衣装一つに込められた気配りと愛を感じて涙した。

 聖女キャロラインの像の前で婚姻の誓いを行い、晴れて夫婦となった二人だったが……ロゼリアはいつまでも清いままであった。


「なぜ……? 妻としての務めを果たさなくてよいのですか? お世継ぎも……」


「君は側にいてくれるだけでいい。身体の負担になる事は考えるな」


 触れるような優しい口づけはくれるけれど、それ以上は決して望まれない。

 そのまま、穏やかな日々が続くと思われた。


 しかし、事態は急変する。


 視察に出ていた父である侯爵と二人の兄が崖崩れに巻き込まれ……帰らぬ人となったのだ。

 ロゼリアは、急遽爵位を継ぐことになった夫に離縁を申し入れた。

 今の自分に侯爵夫人としての重責が務まるとは到底思えなかったからだ。

 今からでも、若く健康的な伴侶を得る方が彼のためになる。


「何を言っている。認めん! 爵位はいずれ弟に譲るつもりだ。あいつはまだ年端もいかないから、俺が代わりに継いだだけだ!」


 ロゼリアの申し出をオニクセル侯爵は一蹴した。


「それではわたくし、あまりにも申し訳が立ちません。わたくしが不甲斐ないばかりに、皆様に多大なご迷惑を……」


 だがロゼリアも引かなかった。

 いつも侯爵を立てていたが、こればかりは譲れないとばかりに食い下がる。長い口論が続いた。


「ただそのまま生きていることの、何が迷惑なのだ! 何を遠慮する必要がある!?」


「どうしてそこまで、わたくしの事など……」


「理由が無いとだめか? 忘れられなかった。ずっと気になっていた。伴侶になってくれて心から嬉しかった。それでは理由にならないのか?」


 ロゼリアは……ずっと怯えて生きてきた。

 いつかいなくなる自分が、誰かの心に住み着くなど烏滸がましいこと。望んではいけないと戒めてきた。

 だが、この真っ直ぐな気持ちがたまらなく嬉しい。ただ好きだ、と不器用に告げる伴侶が、たまらなく愛おしい……。 


「それならば……お願いがございます」


「なんだ?」


「わたくしに、お子を。あなたとわたくしのお子を下さいませ。わたくしを身体ごと、愛して下さいませ……」


 はらはらと涙を流しながら、それでも力強く、ロゼリアは呟いた。





 それから2年の後、オニクセル侯爵家に元気な双子の産声が響くことになる。





「抱いてくださいませ」


「ダメだ」


「なら離縁を」


「ダメだダメだ!」


「では抱いてくださいませ!さあ!」


 シュルシュル衣を脱ぎ捨てたロゼリアに押し倒され、ついに侯爵は観念したが、ちょっとでもロゼリアが痛そうにすると手が止まってなかなか進まず。

ようやく本懐を遂げられ、ロゼリアは心の底から笑ったという。


 いやもう、一生触れずに大事にしておくつもりだったのに逆に襲われるとは青天の霹靂ですね。



 ロゼリアさんは諦めて生きていただけで、目標が定まったらハンター並みの即断即決即行動でしたね。

 多分身体が弱くなかったら女傑になってたかも(笑)


 いや。キャラかわりすぎ?

 侯爵の惚れた女性とはかけ離れちゃったかな?


 

 狸親父とロゼリアさんの馴れ初めも書いてはいるものの、グレンとジェシカの馴れ初めより長いってどうよ?と我に返る(笑)

 機会があればまたそのうち…。



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