まどろみへの誘い
ep.48 幕間 昔語り
のあと。幕間の幕間
「何も、怖いことはありません。ただ安心してその身を委ねて良いのです」
ジルはイスの上で崩れ落ちたジェシカの前髪をかき分け、歌うように囁いた。
ジェシカはゆっくりと目を開ける。その瞳はぼんやりと遠くを見ているようだった。
「うん。怖くないよ…」
どこが幼さすら感じるあどけなさでジェシカは微笑む。
「もうすぐ、あなたの一番大事な人が来られますよ。夜伽の支度をしましょう?」
ジェシカの目をまっすぐ見つめるジルの目には慈愛の色すら浮かんでいた。
「夜…伽?でも…今は…」
まだ少し、理性が残っているのか、戸惑いを口にするジェシカ。
「もう終わったんですよ。よく頑張りましたね。だから何も心配いりません。さあ、この手を取って」
ジルが差し出す手にジェシカはそっと手を乗せ、ゆらりと立ち上がった。
「あなたの大事な人は誰ですか?」
「グレン…」
「そう。今からあなたを抱くのはその方です。愛されて、幸せでしょう?」
ジルの指がジェシカのほおから顎の先までつぅっとなで下ろし、ジェシカはピクリと身動ぎした。
「うん…。ずっと、寂しかったから、嬉しいな。早く会いたい…」
とろけるように微笑むジェシカに、ジルは一瞬だけ痛ましげに顔を歪めた。だが、すぐに慈愛の微笑みを浮かべた。
「さあ、行きましょう。綺麗にしてお迎えしましょうね。お手伝いしますよ?」
ジェシカの纏う、重ねの美しい長衣を滑らかに落としながら、ジルは祈りの旋律を唇にのせた。
懐かしいその響きにジェシカうっとりと目を閉じた…。
「あなたの大切な人が…迎えに来ていますよ…」
冷徹なジルさんの手腕よ…。
この暗示のスキルで王の政敵を自ら破滅に導くなど汚れ役を一手に引き受けていました。




