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幕間 居場所

騎士団卒業…

 1週間後にはいよいよグレンとジェシカの誓いの儀が行われる。

 ジェシカは段取り打ち合わせや衣装準備の合間を縫って、王城に上がってからずっと所属していた騎士団へ挨拶に訪れていた。

 この地を離れるわけではない。

 ただ、自分の立場が変わるだけだ。

 わかってはいたのに、やはりとても寂しかった。

 もちろん、王子妃になってからも訓練に参加させてもらいたいとは思っている。

 一応王子にその許可はもらっている。


「今までお世話になったね。毎日とても充実していたよ。みんな、ありがとう」


 ジェシカは訓練場に整列した騎士団員の前で頭を下げた。

 皆から拍手が沸き起こる。


「ジェス!頑張れよ!耐えられなくなったらいつでも来いよ!相手してやるぜ!」


「ほんとに大丈夫かあ?俺は一ヶ月持たない方に賭けるぜ」


 次々にかかる声にジェシカは一つ一つ答えて皆に温かく送り出された






「みんなに挨拶に行ったんだって?」


 執務室に行くと王子が書類から目を上げて声をかけてくれた。


「はい。一応今日まで籍を騎士団に置いていましたので、正式に除隊の辞令を…受けてきました…」


「ジェシカ…。寂しい?」


 その問いかけにジェシカは笑って否定しようとして…やっぱりできなかった。


「はい、正直に言うと寂しいです。すみません…。あそこは私の居場所でしたから…っ」


 思い返せば5年と少し。訓練に精を出し、時には諍いもあり、笑い合って皆と過ごした。女の身で気兼ね無く過ごせたのは皆の温かい心遣いがあってこそだ。

 言葉が詰まり、こみ上げるものがある。

 

「ごめんね。君の夢を、居場所を奪ってしまう事になって…」


「……いいえ。王子のせいではありません。私が自分で選んだんです。だから…」


 ジェシカは一粒だけ涙を流したが、あとは吹っ切れたように笑った。


「これからの私の居場所は、あなたの隣です」


 その眩しいまでの笑顔にグレンは目を細める。そして椅子から立ち上がりジェシカの頬を愛おしげに撫で涙を拭った。


「そうだね。君だけの特等席だよ」


「はい…」


 ジェシカはその温かい胸に頬を寄せた。


 


 ジェシカは騎士団に所属していて、側近としての仕事はアンソニーを含め三交代で行っていました。

 騎士団での任務や訓練に参加したり…仲間たちとも充実した日々を送っていたと思います。

 力は男性陣にかないませんが、技術とスピードを磨き、騎士団でも一、二を争う腕前で一目置かれる存在ではありました。

 けれどこの頃合いには、一番て何だろう?一番になって何がしたいんだろう?と漠然と思いながら過ごしていました。

 誰よりも高みにいなくても、今の自分より上を目指す事さえ忘れなければ、それが一番である必要は無いんじゃないか…と。

 結果、ジェシカは自分でグレンの側にいる事を望みました。

 大事なのは、悩んで選んだ答えを受け入れる事なのだと思います。 



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