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16 ゲロを吐く なこっち

LINEとかTwitterとかの名称は一応もじっている

でもいい感じのもじり方がわからない。そんなところ。




 Rheinの通知が鳴る。普段鳴ることのなかったその音に、那己は飛び起きる。

 誰から来たのかと思えば曜だった。



「そういえば……連絡先交換してたんだった……」



 思えばぼっち脱却に前進している自分に一抹の感動を覚えると共に、トークを開いて確認する。



ーーーー


hikari<具合はへーき?


比窟 那己<大丈夫です。ただのゲーム酔いです。


hikari<よかったわ


hikari<ゲームは程々にしないとダメな(笑)


hikari<先生にプリント渡すの頼まれたから


hikari<帰り寄る


比窟 那己<了解。


ーーーーー



 デジタルの文字列を見てると、だんだん気持ちが悪くなってきた。諸連絡を済ませてスマホをパッと閉じると布団の中に潜り込む。



◆◆



 インターホンのベルが鳴る。ゆっくりと起き上がる。体調が悪い時特有の頭が割れるような痛さに悩まされながら、よろり、よろり、と廊下を渡り、白い玄関の扉を開ける。

 門の前に、いたのは見覚えのある顔。



「あっ、曜さん。どうも」


「……」



 今日も鮮やかなピンク色を後ろに束ねている。最初見た時は明らかにやべーやつだと思っていたが、もう見慣れたもので……。



(あれ……)



 横に見慣れない顔が一つ。青色の目が特徴的な、美人という言葉はこの人の為にあるのではと思えるほどに美しい顔立ち。

 にもかかわらず、自分の中で沸き立つ感情は"うわ、いやだ"。

 那己がそんな反応になるやつは他に1人としていないだろう。



「げっ……鐘望メアさん……」


「おっはー!!だいぶ体調悪そうだねー!!とりあえず冷えピタ買ってきたよ?……ってー、そんな露骨に嫌そうな顔しないでよ、なこっち」


「なこっち……??」



 まるで呼ばれたこともないあだ名をつけられて、驚嘆と困惑に襲われる那己。

 すかさずその横にいた曜が、メアの頭をチョップしながら声を荒げる。



「なにが"なこっち"や?お前そんな仲ちゃうやろ!!」


「えー??昨日の敵は今日の友って言わない??」


「お前に限っては言わんわ!!……ごめんなぁ、那己ちゃん。コイツ学校からずぅーーーっとついてきよるねん」


「だって、お見舞いしたいし?」


「すんな!!来んな!!頼んでないわ!!」



 曜に押し出されて、退かされる。だがメアはそんなこともお構いなしに、門の上から手を伸ばして、「はいこれ」と冷えピタやらスポーツドリンクやらが入ったレジ袋を渡してくるのであった。

 助かるが首を傾げた。どういう風の吹き回しなのか。本当に「昨日の敵は今日の友」案件なのか。そんな馬鹿な。



「ぁぁ……?」


「ほら、それで早く元気になって。君が学校に来てくれないんじゃ、私も部活勧誘できないよ」


「「は?」」



 メアのセリフに、2人は同時に反応する。目を丸くして。顔を見合わせて「「何言ってんだコイツ??」」という心情がシンクロして、そのままメアに視点を戻す。



「えぇ?うそやろお前。まさか、あたしらのこと勧誘する気なんか?」


「もちろん!!君らみたいに強いプレイヤーを折角見つけたのに、逃すわけないじゃん??」



(うそでしょ……図々しすぎない?)


「おえええええええ」


「ああ、あかん!?あまりの酷さに那己ちゃんがゲロったぞおい!!」



 2人はドン引きした。なんという図太さ。これが人気者のメンタリティの恐ろしさなのだろうか。

 ついこの間の対立の熱も冷めないうちに、スカウトしにくるとは。


 その神経、一周回って清々しい。



「あんなぁ、お前みたいなホラ吹き、あたしも那己ちゃんが許すわけないやろ?」


「ええ?それは、なこっちに聞いてみないとわからないでしょ?どう?部活入らない?」


「えっ……あっ……」


「那己ちゃんあかんで!!こんな奴の言葉聞くだけ無駄や!!」


「あかん、とか言ってるけど"ひかりん"はもう部活入るの確定だよ?」



 ひかりん。突然出てきた謎の固有名詞にハテナを浮かべる。

 ひかりん、ひかりん。ひかり……(ヒカリ)



「おいちょっと待てや、なんであたしが入ることなっとんねん!?お断りやアホ!!」


「え??ダメだよ??拒否権ないよ??」


「なんでや!!あるやろ!!」


「だって君、負けたじゃん。忘れちゃったのー??『私の言うことなんでも一つ、聞いてもらう』って約束」


「ガッ……!?」



 確かに言った。ニセモノであるとケチつけたのだから、リスクを背負ってもらうと。

 メアに負けたら言うことをなんでも一つ聞くと。


 言った。言ったけども!!



「勝ったからノーカンやろがい」


「なこっちはね?君は?」


「うっさいわ!!つーか、お前結局ニセモノやんけ!!通るかそんなもん!!」


「でもー??実力にケチつけたのは事実ですよねぇー??ニセモノかどうか以前に、私のこと雑魚呼ばわりしたこと忘れてないんですけどー??その雑魚に負けたの君だけどぉー??」


「なんやとコラーっ!!もういっぺんやってわからしたるわ!!」


 2人はさも自然な流れでVRヘッドギアを学生カバンの中から引っ張り出したかと思えば、家の前でそれを装着し、決闘(デュエル)だと言わんばかりの勢いになって……。




(いや、あの、わたし体調不良なんだけど!?ひとんちの前でなにやってんのこの人たちぃぃ……!?)

 



 この後、那己の体調が悪化したのは言うまでもなかった。


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