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転生おっさんのミリしら乙女ゲームRTA〜悪役令嬢を影から助けようと思ったらとんでもないことになった〜  作者: 二葉 葵


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第26話 黄屑のステージ



 柵壁の門扉に向かい、門番に身分証明を見せ承諾をもらう。


「よし、じゃあ中に入るぞ。お前達も顔を何かで覆えそうなら覆っておけ」


 兄貴のアドバイスの意味がこの時はわからなかったが、地面が朝霜で溶けぬかるんだ通路を馬車で入ると、その真意がわかった。


「硫黄臭い…」


「硫黄?黄色いやつのことならそうだ。ここの村の先の山からそのガスが出ていてな、普段はここまで酷くはないんだが、今の冬の時期になると、山からの冷たい空気と一緒にガスも流されてくるんだよ。それにしても今日はひでえな…」


 俺達が急ぎ社内で厚手のマントを羽織り口元を覆う中、少し馬車の窓をスライドさせ開け確認し、眉間にシワを寄せている。我が家の領に隣接している村とはいえ、ここに来るのは初めてだ。


「まぁこういう匂いがあって大変なのもあり、好んで住む奴は少ないから土地があるし、水害があるわけでもない。さらにこのくせえ鉱物も火薬の材料に使えるから立入禁止区域を越えなければ職にも困らないってんでここが避難場所になったのさ。ここに入っちまえば盗賊も入ってこねぇからな」


「なるほど」


 家や財産を失った住民にとって、冬越えする蓄えを作ると考えると、臭いに文句を言わなければ人手も欲しているし、良い環境ということか。


 そのまま村の中を窓から見渡す。やはり、硫黄を扱う村ということもあり、みんな外では火を使っておらず、全て魔鉱石を使ったランプや調理器具を使っているようだ。さらに村の至る所にメーターのようなものが設置されていた。


「あのメーターは?」


「あぁ、あれはこのガスや飛んでくる黄色い粉末の濃度を測定するメーターだ。ここの村はなるべく家にガスや粉末が入らないように気を遣ってはいるが、あのメーターの赤い部分を指している時は高温になるランプも使用禁止になるんだ。じゃねぇと爆発しちまうからな」


「そうなると日によって夜の行動が難しくなりそうですね」


 その問いに兄貴は一つ頷き、その任務の難しさを肯定してきた。もし接近戦になりつば迫り合いがあった場合も、火花が散る可能性があるから危険かもしれないな……。


 そんなことを考えていると馬車が停まった。外に出ると腐ったゆで卵のような硫黄の匂いがマント越しにも感じて声が漏れそうになる。降りて踏みしめた土の色も、どこか黄色混じっている。


「ようこそ、パイライト村へ」


「どうも村長。事前に便りは送ってはいたが、こんな悪天候の中悪いな」


「いやいや、急に人が何人増えたところで大したことないわい」


 兄貴と会話を交わすと、今度は俺達の方を見た。


「あなた達もようこそ。事情はこちら様からうかがっておりますわ。遠路はるばるお越しくださりご苦労様です」


「いえ、こちらこそいきなり来てすみません」


 そう応えると、人が良さそうな顔で二カリと笑った。その歯は黄ばんでおり、ヤニというよりこの土地由来だろうかと考えていると少し離れたところから駆け足で恰幅のいい男性がこちらにやって来た。


「オヤジ」


「おう、…あぁ、こちらワシの倅(せがれ)です。客人用にコレを身につけてもらえるように持ってこさせてたんですよ。今日は一段と山から粉が降りて来ていますからな」


 そう言い俺達にターバンの様な被り物を渡してきた。確かに目の前の2人や周囲の住民もマントやターバンを巻いて髪や体を包み込んでいる。

 俺達はお礼を言いながらも手早くそれを被った。前世や村の住民のターバンと違い、どちらかといえばヘアバンドに近い形のもので、俺達でも簡単に被れた。


「それじゃあ早速だが避難してきた住民のいるところに案内してもらえるか?」


「はい、それなら倅に案内させやしょう。オイ、じゃあ頼んだぞ」


「おう。それじゃ、案内しますんでついて来てください。…おっと、その前にお泊まりになる場所に荷物を置いたり、休憩してからにしますか?」


「俺は平気だが、ライ達は大丈夫か?」


 兄貴にそう尋ねられ、2人で顔を見合わせた後首を横に振った。


「大丈夫、それよりもまずはどんな状況か現場検証したいかな」


「了解です。じゃあついて来てください。少し歩きますが、そこまで遠いわけじゃないんで」


 そう言いながら、改めて村長の息子に従いついて行った。



—————————————



「ここが避難者が住まう区域です」


 歩いて20分程した場所に簡易的な家やテントが建てられた区域に到着した。


「ここはこの通り黄色い粉やガスが来るもんで避難者の為に家を建ててはいるんですが、新しく避難所に来た者は、家が建つまでの間こうやってテントに泊まってもらってるんですよ」


「なるほど。…それにしても歩いている者が全然いないようだな」


 確かに、兄貴が言う通り、区域の通りには全然人がおらず、家やテントからも人の気配をあまり感じない。


「あぁ、おそらくみんなこの奥にある集会所に身を寄せてるんですよ。あそこはしっかりした作りをしている建物で、現在避難者に開放しているんです。中は暖炉もあって暖かいですし、テント住まいの住民は、今日みたいなガスや粉が酷い日はここに避難しているんです。家ができてる人も、こんな日は人寂しいからか集会所に行ってる者も多いと思うので、まずはあそこに行ってみますか?」


「えぇ、お願いします」


 そう言い、俺達はさらに区域の奥の集会所に向かった。





 

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