第25話 時に任務は
「ライオネル!会いたかったぞ!!」
「ぐぇっ!……ハンス兄さん、久しぶり」
俺達まで100mといったところで馬から飛び降り転がるように俺の元まで駆けて来てその勢いのままハグして来たのは3番目の兄貴であるハンス兄さん。俺と二つ違いだが、上2人と同じく親父に似てガタイが良く、俺とは骨格からして違う。
ちなみに俺は、親父の弟である叔父に体格は似ているそうだ。
「殿下の話では兄弟で試合をしたって聞いてたけど、まさかハンス兄さんが上の兄貴達に勝ったのか?」
「いや、なんとか1勝はできたが…途中で親父に兄貴達は駆り出されて俺がお前のところに行くよう言われたんだ」
「えぇ?なにかあったの?」
「あぁ、ちょっとな…、ただここではちょっと言えないことだからお前の馬車に入れてもらって道中説明させてもらえるか?」
「いいですよ、ライのお兄さんの馬はどうします?」
兄さんの迫力に気押されていたジャックが気を使ってくれ、促してくれた。
「馬は問題ない。ほら、この通り他の馬達とついていくさ」
俺から体を離し、指を指した方を見ると、すでに兄さんの乗っていた馬は他の馬と合流し、文字通り道草を食っていた。視線を戻せば、馬車の馬の鼻を優しく撫で「よろしくなぁ〜」なんて挨拶してから乗り込んでいた。
「さあ、行こうか」
早速のオブシディアン節を食らってポカンとしているジャックに苦笑しながら声をかけ、馬車に一緒に乗り込んだ。馬車が発車するとピィッという指笛が聞こえ、騎兵隊が馬車の前後を守るように並走した。
「2人とも目立ちたくなかったろうが、我慢してくれ。ここら辺は水害から避難する者を狙った盗賊がいる区域で、支援物資を運ぶ荷車も被害に遭いだしているからここから一緒に同行させてもらう」
「なるほど、ありがとう兄さん」
「なぁに、可愛い弟に会えるだけで嬉しいからな!」
そう言いながら向かいに座る俺の頭をワシャワシャと撫で回した。このハンス兄さんは自分の下の弟ができたのが嬉しいのか3人の兄貴の中で1番俺を可愛がってくれているが、さすがにこの歳になると気恥ずかしさが勝つのでその手を軽く押し退け反論した。
「もうそんな歳じゃないですよ」
「俺はお前がジジイになってもずっとやると思うけどな。…あと話は戻るが、俺が同行した理由はもう一つある」
かき回されてさらにボサボサになった髪を手櫛しながら言った言葉に、ケロッとした顔で返し笑った。それを苦笑で返していると真面目な表情になり、説明を始めた。
「何かあったんですか?」
「まぁな、実は王弟殿下から我が家宛に魔電報が届いた。内容は3つ、1つは隣国の王子がこの国の機密情報を持ち、隣国へ出立した情報が入った」
その情報に馬車内の空気がピリッと張り詰めた。
「それで、指令というのは」
「あぁ、それで隣国への経路が俺達の領の近くを経由して国境を越えようとしているらしい。だからそれを阻止して身柄を確保する指令が来た」
「それで兄さん達が駆り出されていると…」
「あぁ、親父に「お前達の世代の手柄を立てて来い」って煽られてな。これで確保すれば褒賞がもらえるそうだ。だからお前が思っている以上にことは大きくなっているぞ?」
「……もうわかってるよ」
髭が薄く生えた顎をさすりながらニヤリと言う兄貴に思わず遠い目をして応えた。……俺はこの件に関わってから意識を遠くに飛ばすことが増えたなぁ…。
「それで次に2つ目、お前にまた刺客が送られたことがアメジス公爵経由で王弟に連絡が入った。今回は予算を公爵が絞ったのもあり、人数は少なめだが、お前の友人のクォツギルド繋がりで取り急ぎ調べたところ、変装の手慣れで先鋭の人物が2人程送られているらしい」
「そりゃまた…」
「つまり、これから向かう街の住民に紛れてすでにいる可能性があるということですね」
「そういうことだ。あとクォツ君の話ではその刺客はナイフ使いだそうだ。毒も長けてるとのことだから気をつけろとさ」
「またナイフと毒の組み合わせか……」
やだなぁ…と手で口を覆い拭うように払い、背もたれにぐったりと身をあずけると、さらに兄貴は話を続けた。
「おっと、まだ終わりじゃないぞ。最後の3つ目だ。これは、これから向かう場所とさっきの件とも関係がある話だが、…どうやら奴さん、これから探すお嬢さんを消す為にお前とは別途刺客を送っているらしい」
「なんですって?」
俺とジャックはガタッと立ち上がりかけるが兄貴に手で制された。
「お前を狙っている犯人はアメジス公爵のとこの義息だってぇのはわかってんだが、そのお嬢さんに刺客を送った犯人はわからないとのことだ。……まぁ犯人には予想がついてるらしいが証拠が欲しいそうだ。だからお前達の任務は、
1:件の娘の幼馴染のお嬢さんを探す
2:お嬢さんを狙った刺客を生きたまま身柄を拘束し、依頼主を聞き出す
この二つを遂行してもらう。わかったか?」
「「はい」」
俺達は見合って頷き兄貴に応えた。それを満足そうに聞いた後、前方からまた指笛が今度は2度聞こえてきた。
「お、ついたようだな」
そう言い窓から外を覗き込んだ。俺もそれに従い、そちらと反対側の窓を除き、前方を見ると、太い丸太を使用し、建てられた柵砦が見えてきた。
「さぁ、ここが辺境の村、パイライト村だ」
そう言い自分のマントの襟元を鼻まであげて俺達に告げた。
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