第22話 ノーバケーション 〜断罪まで後1ヶ月〜
婚約破棄が予定される祝宴まで、残すところあと1ヶ月となる11月になった。
季節は冬となり、この前クローゼットの奥からまたツィードのスーツを主力選手として取り出す。さらにウール地の黒い上着を何着か出したことで、改めて冬になったことを感じた。
ここ2〜3週間は怒涛の修羅場を過ごしてきた。先日の陛下との謁見後、王弟の指揮の元、調査が行われた。するとでるわでるわ、″城壁内にレールを敷く上で必要な資料″という名目で、城壁から宮廷までの見取り図だけでなく、宮廷内の秘密のルートや宮廷内の見取り図といった関係のない機密情報まで調達しようとしていたことが発覚。
そして、関与していた貴族がこれまた隣国よりのものだったこと。さらに、第四皇子との癒着があり、内通していたものまでゴロゴロ出てきた。
また、俺が言ったわずかな情報から、王弟がケイのギルドに爆弾作成に必要な材料の調査と、国内でその材料を多く発注している依頼はないか調査依頼を出した。結果、驚くことに先日俺を毒刃で襲いかかり、処罰された子息の家が処罰される前に発注しており、地下倉庫にごっそりと残っていることがわかった。
ここに繋がるとは思わず驚いてしまったのと、王弟の俊腕さに舌を巻いた。
俺もこの間ただ傍観していたのではなく、それ以上に色々働かされた。
通常の学校での出向業務に、相変わらずたまに来る刺客の迎撃対応をする。
また夜になれば、夜会に参加し、年末の祝宴に参加する貴族や業界人達に王弟や、ジャックといった宮廷関係者に同行して顔繋ぎをした。
普段なすがままにしている髪を、夜毎にオールバックにカッチカチにセットし、貴族ではあるのだが、辺境伯領では縁のないドレスコートをして参加し、話に置いていかれないよう寝不足で働かない頭をフル稼働し対応した。
そして週末になると、これまた王弟の指示でケイと、あれからケイのギルドでケイや王弟に依頼されている魔道具や薬を作るため待機しているユージン君に情報共有と、ケイからは調査依頼に関しての進捗共有をしてもらっている。
ケイ達といる時は大体週末の夜会で、寝不足のボロボロ状態で行くもんだから、毎回行く度にユージン君特製のポーションをもらっている。
飲んだ後驚くほど回復するのだが、効くまでの間ぼーっとしていて、変なことを色々言っているようだ。先日はどうやら前世のことを聞かれて、「ゴムがこの世界にはないからゴム製のクッション性のあるタイヤは作れないよね〜」とか「こういう具合で宙に浮くバイクとかもあったんだよ〜」なんて酔っ払っているかのように言ってしまってた気がする。
薬が効き始め、気づいた時には目をキラキラさせてメモしているユージン君と、対照的に何やらギラギラと金を数えている時のように嫌に目を輝かせてニヤニヤしているケイが視界に入り、何を言ったか全部は覚えてないがやらかしてんなぁと自覚した。
そして、ジャックが捜査しているヒロインの幼馴染だが、難航しているようだった。というのも、ヒロインと幼馴染の故郷が、先日たまたま見かけた水害があった地域で、まだ安否確認がされていないのだそうだ。
どうしたものかと皆で集まった時に考えていると、
「多分、すでに避難場所のオブシディアン領の隣の領に向かってると思うわ」
と、ミスティ嬢が確信めいたものを感じるようで、自信満々に言った。
「なんでそんなに自信があるんだい?」
「ストーリーがここまで崩壊していて、私の恐れていた″強制力″というものはないと思っていたのだけれど、少なからず運命を補正しようとしている力を感じるのよね…まぁ女の勘だけど!」
途中まで真面目に言った後、ぺろっと舌を出しておどけだして思わずズッコケそうになった。
「冗談はさておいて、避難区域が″転生者″であるライオネルさんの実家の隣っていうのは、何かのお導きかなと思うのよね…」
「なるほど…」
確かに、と俺も少し思い直していると、王弟がみんなに自分が持ってきた王太子とヒロイン周辺の近況を資料と合わせて説明し始めた。もちろん、今回の資料には早速ユージン君が作ったカメラで撮影された写真が使用されている。しかも、この短期間でさらに改良され、カラー写真になっているから髪色やその日の服装の色もわかって、証拠の信憑性も高い物になっている。
それによって、さらに″ミリしら″だったが故に知り得なかった衝撃の事実がそれによって発覚するなどこの時の俺達は知る由もないのだが…、そんなことよりだ。
「オブシディアン様ですね。ようこそ、アメジス公爵邸へ。奥の客間にご案内いたします」
…そう、アメジス公爵殿から口約束だと思っていたら、本当に招待状が届き、俺は今、王都のアメジス公爵邸に訪れることになったのだ。
………どうしてこうなった。
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