第18話 浪漫逃避行
王弟に言われるがまま、俺は今暗い道を通っている…城内の秘密の通路を。これにはワケがある。
「せっかくだから国王に会いに行こうカ!…今・カ・ラ♡」
「は?」
ご飯食べに行こうか〜位の気軽さで提案されて思考が停止しかけたが、先日の事件もあり、すぐに起動する。
「殿下!また何いきなり言ってるんです。そんな、さも軽くできるみたいな提案じゃないですよ…」
「ダイジョウブ⭐︎私が持ってくる用件はどんなに忙しい時でも聞いてくれるカラ♡」
「それって…」
面倒な内容ばかり持ってくるからでは…?そう口に出かけてたところ天井からトントンと音がして上を見た後、再び視線を王弟に戻した。すると、いつの間にか王弟の後ろに影が姿を見せ、王弟の耳元で言付けして去っていった。さすが日本人が作った乙女ゲームなだけあって服装が忍者に近い出立ちだった。
「どうしました?」
「うん…来るヨ」
何が、と聞こうと思った瞬間、シッと人差し指を立て口元に当てたので口を閉じた。すると、突然執務室の扉が強く叩かれた。
「王弟殿下!いらっしゃいますか!話があるんですが〜!」
野太い年配の男性の声が荒々しく響き渡る。気配からして他にも5人程はいそうだ。
「隣国と懇意にしている貴族連中ダヨ」
「それっていうと、つまり…」
「そう、サイラスを傀儡にしようとしている連中サ。私が裏で動いているのを察知して約束もなしに最近はやってくるヨ。…全く相手にしていないケドネ⭐︎」
目を怪しく光らせ説明した後、呆れたように笑った。そうこうしているうちに2人の影が近寄ってきて、その顔を見てギョッとした。顔が俺達2人とそっくりで出立ちまで似ていたからだ。
「まぁ、そういう訳デ。あとは彼らに任せて私達は兄上の所にドロンしようじゃないカ⭐︎今回の″ふるい″に引っかかった奴等に用はないからネ」
そう言い立ち上がると、自分の影武者の肩に手を置きウィンクしてみせた。
「しかし、どうやって…扉は彼等に塞がれて………まさか」
嫌な予感がして冷や汗が出る。
「そ♡そのまさか…ヨ⭐︎」
にっこりと笑いながら自分の執務室の本棚の本を1つ傾けると同時に、王弟の執務デスク下からガコンッという深い音が響いた。
「ほぅら、行くヨ〜♪」
ルンルンと声を弾ませながら、迷うことなくデスクの下に身を沈めていく。急いでそこまでいくと、予想はしていたが秘密の通路になっており、開いた床から石階段が闇深く続いていた。
ゴクリと唾を飲みためらっていると、王弟の姿をした影が近寄ってきた。
「早くしてください、ここは私達が対応するので。この先は私達も行けない通路。…そんな場所に殿下を1人で行かせる上に、殿下1人で陛下に会わせる気ですか?」
「それはダメだね。…わかった」
低い声で言われた内容に即答し、今度は躊躇うことなく秘密の通路に身を潜り込ませた。階段を20段ほど下がったところでゴウゥン…と音が響き、辺りが一気に暗くなった。耳を澄ませると、先程の貴族達が入って来たようで、早速応対しているようだ。
しばらく暗がりを歩いていると、先行している王弟の鼻歌が聞こえ。よく見ると魔鉱ランプを携えて少し行った所で待っているようだった。
「じゃあ、王弟自らこの国の国王の所まで案内してしんぜヨウ⭐︎」
「…あの、質問いいですか」
「ん?何かナ?」
「この道を知っている人って、どれだけ…」
「ン〜、私と兄上に、影とそれを仕切る君の友人のダマスカス君位かなァ?」
「え…じゃあ王子や他の宰相や貴族達は?」
「知るワケないじゃないカ⭐︎」
ダラダラと嫌な汗が伝うのを感じつつ聞かずにはいられず尋ねると、とても良い笑顔で告げられた。
「だから、謀叛なんて考えないことだネ〜⭐︎私達のヒ・ミ・ツ♡ダヨ⭐︎」
狭い通路に王弟の軽快な笑い声がこだまする。寝不足に疲労困憊な身体に今の発言でダメージ食らいクラクラとしかける。
クソ〜、なんでこんなに信頼されているんだ…。
心の中で悪態をつきながら通路の構造を脳内で考える。どうやらこの通路は、王弟の部屋から螺旋階段状に降りてからまっすぐ王宮までつながっているようだ。そして、王宮に着く位置になると幾重にも道が出てきた。
おそらく王弟がいなかったらここから無事に出られないだろうと思い、必死について行く。それに反して王弟は自分の兄に会えるからか鼻歌まじりにズンズンと勇足に歩いている。
…この人、綺麗な顔して図体がデカいから歩幅が広いんだよな。
再び心の中で悪態をついていると、王弟がピタッといきなり止まった。そしてランプを持った手をかざし、目の前の扉を照らした。よく見えないが、おそらく国王の紋章が裏側の木の扉に刻まれているようだ。
「…さぁ!ついたヨ⭐︎」
歩き始めてから1時間程。さすがの王弟もランプの光に照らされた顔には疲労と汗が見えたが、その瞳はワクワクとしておりキラキラと輝いていた。
こうなるとこのドッキリに付き合わないといけないことを把握している俺は、呆れつつも頷いた。
ギギ…ギ…ガコンッ
王弟が仕掛け扉を開くと外側で何かがはまる音がした。扉の中はまた狭い空間があり、足元に半円の切れ目があり、その先から外の光が漏れている。
「じゃあココ乗ってネ」
半円の上に乗るよう言われ、言われるがまま乗る。すると壁にあるレバーを軽く引かれ、そこが外側に回転した。俺は突然の外の光に思わず目を細める。
目が慣れ始めて室内を見ると、山のように書類が積まれているデスクの前で黙々側近と話しながら業務をする人物がいるのを確認できた。
この人物こそ、この国の国王、アーサー・アダマスその御仁がそこにいた。
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