第15話 徹底的に証拠は… 〜断罪まであと3ヶ月〜
あの日から数週間が経ち、今は9月の下旬に差し掛かっている。婚約破棄が予定されている祝宴まで、あと2ヶ月といったところだろうか。
学園も後期を迎え、生徒達も各々戻ってきて、今度は土産話に花を咲かせている。
先日ケイとユージン君が担当していた、監視カメラとカメラが無事完成し、学園が始まる前に王弟が学園の許可を取ってくれた。だが数に限りがある為、ミスティ嬢の情報を元にイベントが発生する箇所を優先して設置した。
カメラは監視についている影にそれぞれ持たせている。今回この2つを使用するにあたって、王弟が正式な証拠として使用できるように王へ申請してくれた。それが晴れて承認が降りた経緯もあり、学園に設置できたということもある。いつもあんな感じだが本当に仕事ができる方だ。
その反面、先日のユージン君が録音していたデータはいわば承認が降りていない上に犯罪行為の為、証拠として使用できない。それもあって、こちらとしては隣国との癒着がある証拠を期限までになんとしても揃えなくてはいけないミッションがあるのだ。
そして今、証拠と思われる紙が俺の目の前にある。実は、先日気を失ってから目覚めた後、ジャックから帰り際に預かっていたのだ。どうやら隣国の王子に贈ったクッキーの包みについていた折り紙モチーフが他の男性にあげているものと違かったらしく、影がすり替えて持ってきたらしい。
また、ハロルド君が先日クッキーを持ってきてくれて、解析したところ、見事に魅了薬が入っていることが判明した。しかも、中毒性が非常に高い成分が含まれているらしい。摂取すると瞳孔が開き、一種の迷妄状態になるようだ。また。自白剤のような成分もあったことから、王太子はその状態で情報を口にしてしまった可能性が出てきた。その為、ローズクォツ嬢が王太子に渡すクッキーに関しては、その成分が含まれていないクッキーとすり替える形で影が対処することになった。ハロルド君の大手柄だ!
だが、夏休み明けに遠目から王太子達の側についているハロルド君を見たら、目が死んでなかなか限界そうな様子だった。
ミスティ嬢からの話では、夏休み中ずっとヒロインからの奇襲に耐えていたそうだ。また、我慢する際に唇を噛む癖のあるハロルド君の口が、傷とそこからの口内炎ができて大変だと手紙でクレームがきていたのを思い出した。
なので、消炎作用のある薬を送り、「ミスティ嬢が直接ハロルド君の唇に塗ってあげなさい」と言付けしたところ、後日ハロルド君が職員室にいきなりツカツカとやて来て、その場で跪き、俺の手を握って涙目で感謝されてしまうという出来事があった。
一部の女性職員に「プロポーズされたのかと思った」とキャッキャされてしまった。…本当に勘弁していただきたい。
仕事が終わり、自宅に帰って寝室のソファに座りながらこの手紙を霞目で眺める。最近仕事と事情聴取に加えて、俺の身辺で刺客が来るようになり寝不足気味だ。王弟やジャックにはすでに伝えて、ある程度は対応してもらっており、なんとか生活できるようになってきている。だが、それでもすり抜けて来る輩は自ら対応しなくてはならない。
最初、依頼主は王太子やヒロインかと思ったが、どうやら違うようで、まだ不明のまま時だけが過ぎている。
それとは別途、ジャックはミスティ嬢が後日知らせてくれたヒロインの幼馴染なる人物の所在について調査している。
先日の録音を聴いて、"幼馴染"というのに違和感を感じ考えたところ、どうやらヒロインには同郷で奨学制度を使用し、一緒に入学してくれるサポートキャラがいるらしいのだ。ヒロインには"マリー"と呼ばれているらしい。
だからせめて、この問題だけでもこちらで解明できれば…と思いつつも、影が守ってくれている社宅にいるこの時間しか考える時間が取れないでいる。
「うーん…と」
思わず声を出し、ソファに座りながら腕を上げ伸びをする。こういう時は、ざぶんと湯に浸かりたくなるが、ここはぐっと我慢する。入れば最期そのまま寝てしまい、風呂場が今世の死に場所になりかねないからだ。
「特に何も書かれていないし、筆圧がかかった凹みをなさそうだな…」
花の形に折られていたそれを広げ、折り目がある用紙を軽く伸ばして慎重に表面を観察する。一応宮廷の鑑識にもすでに調べられたが、特に異常がなかったようだ。ただ、相手が″前世の記憶持ち″ということもあり、念の為ということで俺に協力を求められたのだ。
「専門家でもダメだったんだからどうにもならないんじゃないか…?」
そう気が弱くなりそうになりながらも、考えてみる。気付けにとウィスキーを飲もうと思ったが、この状態で飲めば、酔いが回って思考出来なくなると目を擦りつつも留まった。
代わりに、机においてある飴を入れた瓶から飴を取り出して口に放り込んだ。
「はぁ…、こういう時こそタバコを吸いたくなるなぁ……ん?レモン…?」
思わずタバコを吸うポーズを取り1人ぼやいていると、カラコロと口の中に広がるレモンの味に前世の記憶がジワリと蘇って来る。
「そうだ…なんか小学生位の理科の実験かなんかでやった…レモンの汁で書いた後…あ」
部屋を優しく照らす魔鉱石の照明を見上げ、ぼうっと独り言を呟きながら思い出していると、ふと先程のタバコを吸うポーズを取っていた右手に照準があった。
「…そうだ、火で炙るんだ…!暖炉…では少し火が強くて危ないから…と」
ソファから跳ねるように起き上がった後、火を使用する道具を探す。
「確かこの引き出しに封蝋用の蝋燭が…、あったあった!」
執務書類をまとめている引き出しの中から、蝋燭と、ロウを入れて火に当て溶かすスプーンのような器具をのせる小さな台も一緒に取り出した。
まず、暖炉に向かい、蝋燭に火を移し、火が灯る蝋燭を上から5cmほどで切り取り台にセットする。その後、用紙を台の上でかざし、ジリジリと熱せられるのを待った。
室内は静寂満ち、備え付けの掛け時計のチクタクという音だけが響いている。
「…!出てきた」
大事な証拠に火が燃え移らないようにかざしていた用紙から、微かに焦げる匂いが漂い始めると、うっすらと何か文字が浮かび上がってきた。そのまましっかりと字が読めるまで気を緩めないよう引き続き火にかざして浮かび上がらせていく。
「……これは」
完全に浮き出た文字を読み、眉間に皺が寄るのを感じた。それも仕方がないと思ってもらいたい。なぜならそこには…
「アダマス王国の軍備予算と流通経路が書かれている…だと?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
評価やブックマークをいただけますと励みになります。




