間話 〜アン・ローズクォツの独白〜
私がこの世界に転生したことに気付いたのは5歳の頃だった。ちょうど村の幼馴染と遊んでいて、ケンカして揉み合いになった際に頭を打ってしまい思い出したの。
その時、私は神に感謝した。前世では碌でもない人生を送っていたからきっと神様がご褒美として今世をくれたんだって。
でも時が来るまで待つには長すぎるわ…。
だから手始めに村の男達を前世でやった通りに魅了していった。そうは言ってもまだ子供だから大人達は無理だけれども、気に入らない女がいたら、罪をでっち上げて、男達を利用して村八分にしてやった。
でも、私に引っ掛からなかった男もいた。しかもそいつは、私が前世を思い出すきっかけを作った幼馴染を守りやがった。気に食わない…。だから男達を利用して、幼馴染を人質に動けなくしてやった。
その後、ストーリー通りに王都へ行き、母親がやっと病で死んだ後、貴族の養子になった。ジジイ達が来るたびに媚を売っておいて正解だった。
貴族の淑女教育はやってられなかったから、ジジイに泣きついて、気に食わない教師はどんどん辞めさせていった。
私がその度に甘えると、ジジイは鼻を伸ばして喜んだ。対してその頃から、ババアの様子が変わっていった。目ざとい老害は消えてもらいたかったが、もう学園に入学する前だったから我慢してやった。
学園に入ってからはゲームの世界そのままで最高だった。少し不安だったけど攻略方法をやってしまえばコロっとこちらに堕ちてきて楽しいったらないわ。
それだけじゃ物足りないから、攻略対象者以外の男たちにもアプローチしていった。みんな少し甘えたり、ボディタッチしてあげればイチコロなの。その男たちの婚約者がこちらを見て悔しそうにする姿が最高なのよねぇ!
私は男が好きなんじゃなくて、|人のモノを奪ってダメにする《・・・・・・・・・・・・・》のが大好きなの♡大事にするなんてもってのほか。前世でもそうやって生きてきたんだから今世でも同じように好きにするわ!
それでも、学園でもうまくいかないことがあるの。ミッションを重ねて隠しキャラたちを探しても出てこないの。
「…もう!あの人達がいないとサイラスのことを攻略できないじゃない!忌々しい…!!これじゃ秘薬が手に入らないじゃないのよ…この!!!!」
「きゃあ!!」
学園寮の自分の部屋で、お茶を淹れたメイドに向かって一口飲んだ後だけのお茶の入ったティーカップを思いっきり投げ付けてやった。
メイドが紅茶の熱さと割れたティーカップに悲鳴をあげている声を聞き、少し胸のすく思いがした。どうせ泣きついたところで、私がジジイに泣きつけばクビになって新しいメイドが来るんだからいっそ片付けられて清々するわ。
「ハロルドの様子も違うし…、ゲームだと騎士団長の息子と同じくらい脳筋で単純馬鹿だったはずなのに…。しかもその騎士団長子息もいつの間にかいなくなっているし…どうなってるのよ!!」
また沸き立ってきた怒りを先ほどのメイドが出ていった扉に向かい、花瓶や置き時計を投げつけて発散する。しばらくそうしてから、息が切れた頃にユージンからもらったブローチが目に入った。ブローチは金の薔薇の装飾にピンク色の魔鉱石がはめ込まれているものだ。身につけている人に呼応して淡く光作りになっていて気に入っている。
「…ふん、まぁいいわ。とりあえず男共から貢がせたモノを売って資金にして、アレク様にプレゼントしないと♡」
そう、私の本当の本命は隣国の王子、アレクサンダー・ローゼリアなの。続編でメインヒーローの父親である皇帝として登場する。エキゾチックな褐色な肌にたくましい出立ちがタイプなの♡
でも、その王妃が、ぼやけていたからわからないのでけど、ソフィア・アメジスに似ているの。
「だから、この国の王太子との婚約をめちゃくちゃにしてやって、続編で幸せになるかもしれない未来も私が奪い取って、惨めに叩き潰してやるわ!」
あの女が絶望する顔を想像するだけで愉快で仕方がない。
「でもその前に、王子から |教えてもらった大切な情報をアレク様にまた伝えなくちゃ。キミツ情報?ってやつ?それでこの国もメチャクチャにして〜、アレク様の王位継承の手柄にして〜、それで皇帝になるアレク様の隣でお妃様になるの!!キャハハハハ!!」
自分の計画があまりに完璧すぎて堪らず大きな声で笑ってしまった。
「さ〜てと♪そろそろクッキーに混ぜてる好感度アップのお薬も切れるから、そろそろ買いに行かないと!よく考えればこれって歴とした惚れ薬よね〜。いいのかしらぁ〜…まぁいっか!私が食べるわけじゃないしねぇ〜。それにアレク様にも入れてないし〜!あとは、アレク様へキミツ情報を手紙に書いてクッキーと一緒に渡さないと♡」
そう言いながら気持ちを弾ませながら手紙の準備をしていった。
——————その時、ユージンからもらったブローチが鈍く光っており、その言葉をすべて録音されていることにも気づかずに。
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