エピソード1 幽霊からの手紙 第8話
8話です。
「なんですぐに言わねェーんだよッ!!」
「あの状況で言えるわけねーだろ!!」
「知らねーよ! さっさと言えばよかっただろ! オレが死んでるのには変わりねェーんだからよッ!!」
猫と佐渡は大声で言い争う。
それにしても傍目から見ると佐渡が地面に向かって怒鳴っている姿になるので絵面がかなり異様に見える。
それもあって人の目を気にしなくてもいいように場所は公園から近くの資材置き場に場所を移していた。
資材置き場は野良猫の溜まり場でもあるので野良猫たちは遠巻きにして怒鳴り合う姿を見ていた。
そんな中、佐渡は猫の抗議に反論した。
「さすがにあの場面で言うのは気まずい! ってか、フツーに泣くわっ!!」
「なんで、テメーが泣くんだよッ! オレのコトだろッ!!」
「だってなぁー!!」
横で見守っていた藤原が「まぁまぁ」と佐渡を宥めた。
「猫が探してたのは竹内だったんだな」
「ああ、そうみたいだ」
「佐渡の言い分も分かるよ。あの状況じゃ確かに言いづらいな」
「だろ??」
藤原の同意の言葉に佐渡は勢いづいた。
「竹内のやつ良いやつだからさ、あんま悲しませたくないんだよな」
「分かるよ。でも、そうしたら猫の願いも叶えられないだろ?」
「そうだけどさー……」
「何を気にしてるのか分かんねェが、さっさと言っちまえばいいだろ」
「お前は一旦黙ってろ」
「猫はなんて?」
「気にせずに言えって五月蠅いんだ」
「なるほどね」
藤原は困ったように笑った。
それから「あっ」と声を上げた。
何かを閃いたのか、藤原は明るい顔をした。
「手紙を書いたらいいんじゃないか?」
「へ?」
佐渡は虚を突かれて間抜けな声を上げた。
何故ここで『手紙』が出てくるのかが佐渡には理解できなかった。
「ほら、前に女の人を浄霊したようにさ、手紙で想いを伝えればいいんじゃないか?」
藤原はじれったそうにそう言った。
そこでようやく佐渡は記憶が繋がった。
全ての始まりの二か月前。
佐渡に憑りついた女の霊。
彼女は死の直前、知らない男に連れ去られ逃げようとして死んでしまった。
家族や恋人に別れを告げられず死んてしまったことを彼女は酷く悔いていた。
佐渡はそんな彼女に想いを代わりに手紙に書いて家族に送ろうかと提案した。
それを彼女は喜んで受け入れ、佐渡は彼女の代わりに手紙を代筆して上げたのだ。
もともと佐渡は文章を書くのが得意だった。
藤原の案に佐渡の頭の中ではどんな手紙を竹内に書くかと構想を巡らせ始めた。
なんとなく頭の中では形になって書けそうだと思ったので佐渡は気が楽になった。
「あー、まー、それなら……」
「なァ、『手紙』って?」
横で聞いていた猫ははじめて聞く言葉のようで首を傾げていた。
それが少しかわいらしくて、佐渡は「想いを伝える方法の一つだよ」と答えた。
*
佐渡は猫を連れて帰り道コンビニへ立ち寄り便箋と封筒を買った。
借りているアパートの二階の自室に入ると夕日がカーテンの隙間から差し込んでいた。
洗い物が堪ったシンク、敷きっぱなしの布団、脱ぎ散らかしたままの寝巻と男子大学生の鏡というような部屋の中にある机に着き、佐渡は猫に向かって言った。
「じゃあ、教えてくれるか? お前の言葉を」
「……」
猫は戸惑うような雰囲気でじっと佐渡を見つめるのだった。




