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ゴーストライター ~幽霊専門代筆屋~  作者: 都宮 アキ


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エピソード1 幽霊からの手紙 第7話

7話です。




「あー、つっかれた~!」



佐渡はそう言って道端でしゃがみ込んだ。

猫の好きそうな場所をあちこち歩いて行ってみたのだがどれも無駄足だった。


太陽は真上に移動していて、佐渡は空腹と暑さに参っていた。



「少し休憩するか?」



涼しい顔をしている藤原がそう提案するところを見ると、藤原も表情に出てないが疲れているようだった。

佐渡は頷き、「よいしょっ、と」と立ち上がった。



「そうすっか。この辺でなんかちょうどいい店は……って、あー!!」

「どうした!?」

「猫!」



佐渡の指さす塀の上。

そこに探していた猫がゆったりとした足取りで歩いていた。



「見つけたぁぁぁぁっ!!」

「……アア?」



塀の上にいる猫は佐渡の声に振り返り、じろりと佐渡を見る。

藤原を警戒してるようでじりじりと距離を取るように後ずさった。



「待て、逃げるなよ!」

「……なんでだよ。何か用があんのか?」

「お前の願い、叶えてやるよ!!」

「ハァ?」



佐渡の言葉に猫は目をまんまるにした。

猫は後ずさりをやめるも、疑い深そうな視線を佐渡にぶつける。



「……朝までの態度と随分違うじゃねェか。どーいう風の吹き回しだァ?」

「お前がこのままでいると悪霊化するって聞いたからだよ。そうなったら目覚めが悪ぃ」

「あっそ。まァ、オレとしては別に頼みを聞いてくれるんだったらなんでもいーけどよ」



猫は後ろ足で頭を掻きながらそう答える。



「ただし、条件がある!」

「……フーン……どんな条件だって言うんだ?」



猫は頭を掻くのを止め、佐渡の次の言葉を待つ。

佐渡はここで口角を上げた。



「それはだな……そのフサフサの毛を俺にモフモフさせろ!!」

「……ハッ?」



猫は予想もしていなかった言葉に口をあんぐりと開けていた。

だが佐渡は構わず自分の事情を伝えた。



「俺はなー、猫は好きだが、アレルギー持ちで生きた猫は触れないんだ。でも、霊ならアレルギーなんて関係ないだろ? だから思う存分モフモフさせてくれるんだったらお前の願いを叶えてやるっ!」

「…………」


タダで猫の願いを叶えてやるのは癪に障るので佐渡はそんな提案をしたのだが、これに猫はほんの少し表情を歪めた。

そして長考の末、明後日の方を向きながら仕方なさそうな声を猫は出した。


「…………ハァァァァァァ…………いいぜ」



猫の溜息は長めだった。








「オレの願いは、いつもエサをくれてたヤツに『もう俺は死んだ』って伝えてやってほしいんだ」



猫の声は静かだった。



「いつまでもいないオレを探しててバカみたいだからな、アイツ」

「そうか……」



佐渡はこの話を聞いて鼻の奥が少しツンとした。

純粋に猫の願いを叶えてやりたいと、そう思った。



「で、そいつの名前とか住所とかは?」

「ンなの知るわけねェーだろッ! オレは猫だぞッ!?」

「なんで威張ってんだよ!」

「高貴なるお猫さまだからだよッ!!」

「ああ、もうそれでいいけど、だったとしたら、俺が見つけられるわけねーじゃねーか!」

「そこについては安心しろ。いつもエサをくれる場所にアイツは来るから」

「――佐渡とその猫ってなんか似てるのかもな」

「「どこがだッ!?」



藤原の呟きに佐渡と猫のツッコミが重なった。



猫が言う『アイツ』という人物は夕方、公園にやって来ることが多いらしい。

それで昼食を食べて少し休んだ後に公園に戻った。


夕方近くの公園は利用者が増えていた。

中学生だろうか。数名の少年が広場でキャッチボールをしていた。


佐渡はその様子に体が疼いたが、肩に乗る猫の重みに目的を思い出して、その『アイツ』という人物を探した。

だが、まだその人物は現れていないようで、ベンチに座って待つかと、今度は空いているベンチを探した。


そのときだった。



「あれ? 佐渡と藤原? どうしたんだ?」



聞き覚えのある声に顔を向けるとそこにいたのは友人の竹内だった。



「お前こそ、どうしたんだよ、こんなところで」



まさか一人でキャッチボールをするわけでもあるまいと、佐渡が尋ねると、竹内はにこっと爽やかに笑って手に持つビニール袋を顔の高さまで掲げて見せた。



「猫に餌をやりにきたんだ。……って言っても、俺のお気に入りは最近見掛けないんだけどな」



眉を下げる竹内。

佐渡はその瞬間、肩に乗る猫が強張ったのを感じた。

猫の尻尾がくるりと丸まった。



「へー、どんな猫なんだ?」

「めっちゃキレイなヤツ! マジで美猫! あっ、画像見るか?」



佐渡は猫の反応で薄々とは勘づいてはいたが、竹内のスマホに映し出された猫が肩の上に乗る猫だったので、猫の言う『アイツ』が竹内だと分かった。


猫は竹内に余程懐いていたのか、画像にはお腹を見せて目を細める様子もあった。


言葉を失う佐渡に気が付かず、竹内は自分が気に入っている猫の画像を何枚か映してからスマホをポケットにしまった。



「もうちょっと懐いたら家で飼おうとしてたんだけどどこ行ったんだか」



竹内は苦笑する。



「キレイだし、どっかで先に飼われたのかもなーとは思ってんだけど、でもそうじゃなかったとき、餌食えてなくて腹空かしてたら可哀そうじゃん? そう思うと通うのやめらんなくてさ」

「竹内なら、そうだよな」

「まあな。そんなわけで猫を探さないといけないからさ。じゃあな」



そうして竹内は手を振って公園の奥の方へと向かっていった。


そんな話を聞いては佐渡は言えなかった。

込みあがってきそうになる涙を堪えるようにぐっと腹に力を入れた。

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