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ゴーストライター ~幽霊専門代筆屋~  作者: 都宮 アキ


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エピソード1 幽霊からの手紙 第6話

6話です。

楽しんでいただければ嬉しいです。




「ひとまず、最初に会ったっていう公園に行こうか」



猫を探すのにまずはじめにどこへ行こうかという話になったとき、藤原がスマホを操作しながらそう提案した。

佐渡は気になって尋ねた。



「何て調べたんだ?」

「単純にAIに猫の行きそうなところを聞いたんだ」

「AIとか使うのか」

「今時これくらい普通だろ」

「そうかもしれねーけど、なんか神社の関係者が使うイメージ無いって言うか」

「言わんとしてることは分かるけど、時代の流れにはどうしても逆らえないからね」

「そういうもんか。確かに、賽銭箱にQRコードもあったしな」

「佐渡は使わないのか、AI。AI反対派とか?」

「いや、そういうわけじゃねぇんだけど、俺はどうもデジタルが苦手でさ……」



佐渡は肩を竦めて、「昔、テレビも壊したことがあるんだよ」と告白した。


佐渡のアパートの最寄り駅であり公園の最寄り駅は隣の駅であった。

昨日と同じ道のりで公園まで辿り着くと佐渡は公園の外から中を確認した。


公園は中々に広く見通せないほどだった。

ブランコなどの遊具の他、野球が出来そうな広場があり、奥の方は木々が生い茂っていた。



「こうして改めて見ると野良猫が結構いるもんなんだな~、この公園」



公園のあちらこちらに猫がいるのを見て佐渡はしみじみと言った。



「餌やってる人とかいるのかな?」

「この様子だといそうだよな」

「なら、そういう人に猫がいそうなところを聞けば分かりそうだな」



藤原の案に乗る形で、二人は公園内を探索し始めた。

だがそう都合よく見つかるわけもなく、佐渡と藤原は公園を一周したところでベンチで腰を下ろした。


まだ午前中というのもあって人影は少なく、いるのは杖を付いた老人や小さな子供連れの親ぐらいなものだった。



「ここで待ってればあの猫も来るかな」

「どうだろう? 俺たちの姿を見たら警戒して逃げるかも」

「除霊されるのがそんなに嫌かな?」

「やりたいことがあるみたいだったからね、あの猫。どうしても佐渡に頼みたかったんだね」

「……俺に何を頼みたかったんだろうな……」

「そうだな……まず、なんであの猫が死んだのか……それによって変わってくるかもな」

「割りと若そうな猫だったけど、事故とかに逢ったんかな?」

「霊体の場合、見た目の年齢が死んだときの年齢と違うときがあるからあまり見た目を信用しない方がいいよ」

「そうなんか」

「うん。霊によっては騙すために年齢を誤魔化すことがあるから気を付けて」

「お、おう」



藤原からの助言を佐渡は心のメモ帳にそっと書き込んだ。

そんな会話をしていると、やがて公園内に一人の男が入って来た。


痩せ型の男で公園にはあまり似つかわしくない雰囲気だったから余計に目立った。

佐渡はそれで男を自然と目で追っていたのだが、ふと男の背後に気が付いた。



「なぁ、あの人、凄いな」



佐渡は藤原を肘で突き顎で公園の入り口にいる男を指す。

それで藤原も男の背後に気が付いたようだった。



「えっ……ああ、本当だ……随分と、猫を引き連れてるね……」

「だろ?」

「アレ、全部彼が飼ってた猫たちなのかな?」

「そうなんじゃね? じゃなきゃあんなに懐かないだろ」



優に十匹を超える猫の霊が男の後を追うようにゾロゾロと移動していた。

必死になって男を見上げ付いていく姿は見ていて微笑ましくなる。

佐渡は思わず頬を緩め、それからベンチから腰を上げた。



「よし、ちょっと声掛けてみるわ。あれだけ猫が寄ってくる人なんだ、きっと猫を可愛がってる人なんだろう。猫が行きそうな場所とか知ってるかも」

「あっ――」



善は急げと、佐渡は男に駆け寄った。

それに藤原は声を上げたが、佐渡は気が付かなかった。


男は佐渡たちとは離れたベンチに腰掛けた。

その顔は神経質そうでどことなく近寄りがたく思えた。

一瞬声を掛けるか迷う。



「あのー、すみません。猫、お好きなんですか?」



だが佐渡は思い切って声を掛けた。

それは男の足元で猫の霊がじゃれつくようにしていたからというのも手伝った。



「……はい?」



佐渡の声に男は明らかに不審そうな声を出した。

あからさまに佐渡を警戒している。


これに佐渡は慌ててその場を取り繕った。



「えっと、その猫がたくさん寄ってきそうな雰囲気があるな~って思いまして……ハハハ……」



下手なナンパか、と自分でも思いながら佐渡は敵意は無いと笑顔を見せる。



「…………」



男は眉を顰めつつ佐渡の様子を伺っていたが、やがて警戒を緩め、薄ら笑いを浮かべて見せた。



「――好きだよ」



歯茎が見えそうなほど口角を上げ、自分の発した言葉に感じ入るように男は目を細めた。



「弱々しくて、可愛いよね」

「ええ、可愛いですよね!」



佐渡は男と会話が出来て内心ガッツポーズを取る。

これで質問に進めそうだった。

男は「それで?」と、佐渡に話の先を進めた。



「あ、はい。……そのちょっとある猫を探してて……もしかして猫が集まりそうな場所とかご存じじゃないかな~、と思って」

「ああ、それならこの辺はいくつかスポットがあるんだよ。公園の西側にあるラーメン屋の裏とか、北側には資材置き場の空き地があって、もうちょっと足を伸ばすと――」



質問されて嬉しいのか思いのほか男は快く佐渡に猫が集まりそうな場所をいくつか教えてくれた。これに佐渡は礼を言って男から離れた。


そして藤原に駆け寄ると早速自分の手柄を披露するがその声は弾んでいた。



「やった! 色々場所聞けた! さっそく行ってみようぜ! まずはラーメン屋の裏だなっ! この公園の西側にあるんだってよっ!」

「ごめん、佐渡。俺もちょっとあの人と話したいことができたから先に行っててくれるか?」

「え、いや、それなら、待つけど?」

「もしかしたら結構時間が掛かるかも。だから先に行って待っててくれた方がありがたいかな」

「そうか? 分かった」

「うん。なるべく早く追いつくから」



佐渡は少し変な藤原の態度は気になったが聞ける雰囲気ではなかったので仕方なく一人でラーメン屋の方へと向かった。


だいぶ待つだろうか。

そう思っていたが、藤原は公園の西側出口の手前で追いついた。



「何を話したんだ?」

「大したことじゃないよ。ウチの神社の宣伝」



藤原はそれ以上多くを語らず、佐渡はそれ以上突っ込んで話を聞けなかった。

ラーメン屋は公園のすぐ西側にあった。

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