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ゴーストライター ~幽霊専門代筆屋~  作者: 都宮 アキ


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エピソード1 幽霊からの手紙 第4話

4話です。




改札を出ると日差しは少し和らいでいた。

ここから借りているアパートまで少し距離があるので歩きやすくて助かる。


佐渡は歩きなれた道のりを、幽霊を気にしないようにしながら進んだ。


そして公園の横を通り過ぎるようとしたときだった。



「おい」



背後から少年のような呼びかける声が聞こえた。

だが佐渡には少年の知り合いなんていない。

ここは公園だ。きっと友達に声を掛けているのだろう。


そう思って無視をしていたのだが、もう一度、「おい」と声が聞こえてきた。


佐渡は不思議に思って振り返る。

しかしそこにいたのは人ではなかった。



「ん? ――あのときの猫……?」



佐渡の足元一メートルほど先。

そこに子犬ほどの大きさの綺麗な猫が腰を下ろして佐渡を見上げていた。


先ほどの声、まさか猫じゃないよな。

そう佐渡が思った矢先だった。



「テメェ、やっぱりオレのことが見えてるなッ!」



猫は口を開くと少年の声でそう言った。



「猫がしゃべっ、はっ!? えっ!! 猫じゃねーの!?」



佐渡はそこで猫に影が無いのを見つけた。

猫の幽霊だ。


佐渡はくるりと身を翻し、脱兎のごとく駆けだした。


だが兎が猫に勝てるわけがない。



「逃がすわけねェーだろッ!!」



猫はひらりと跳躍し佐渡の肩に乗る。

佐渡は乗った感覚を覚え鳥肌が立った。



「悪霊退散、悪霊退散!」



佐渡は腕を振り、叫んで猫を追い払おうとする。



「悪霊じゃねーわッ!! シャァァァーッッ!!」

「うわぁぁぁっ! ――うげぇっ!?」



猫はこれに威嚇で対抗し、佐渡は耳元での威嚇の鳴き声に悲鳴を上げる。

そのとき足が縺れ、佐渡は情けなくもアスファルトの上に伏した。


猫は佐渡が転んだ瞬間ひらりと飛び上がりその背中に乗って、「フンッ」と鼻を鳴らして見せた。



「最初から大人しくしてれば無駄なケガもしなかったのになァ」

「……めっちゃ悪役のセリフなんだけど」

「アァ?? 誰が悪役だッ!! オレは高貴なる猫だわッ!!」



佐渡からは見えていないが猫は背中でふんぞり返っていた。

猫は太く短い脚で佐渡の肩を踏みつけ、低い声をで尋ねた。



「オレが見えて、オレの声が聞こえるってことは、テメェはただの人間じゃねェなァ。なァ、そうだろ?」

「イエ、俺ハ、タダノ人間デス」

「嘘こけ! こうやって会話してる時点でおかしいだろーがッ!」

「くそ……最初に無視しときゃよかった……」



佐渡は駅のホームでのことを思い返し、今後はむやみやたらに声を掛けないようにしようと思った。

仕方がないので佐渡は猫との会話をすることにした。



「で、俺に絡んで来て何か用かよ、ヤクザ猫」

「ヤクザ猫だァ??」

「あ、いや、高貴なるお猫さま」



佐渡が軽口を叩くと猫は凄んでくるので佐渡はすぐに下手に出た。

これが普通の猫ならまだしも、相手は猫の幽霊、つまり化け猫だ。

以前、女の霊に憑りつかれたときのように目が見えなくなったりしたら堪ったものではない。


佐渡の態度に猫は満足したのか肩を押す力を少し弱めた。



「フンッ……お前の力を見込んで頼みたいことがあるんだ」

「頼みたいこと……?」

「ああ。なァに、命を取るわけじゃねーから安心しろよ」

「ヒッ!」



生暖かい猫の吐息が首筋に当たり佐渡は生きた心地がしなかった。

佐渡の反応に気をよくした猫は嚇すように囁く。



「引き受けてくれるよなァ?」

「っ!」



このとき佐渡の脳はフル回転していた。

いくら猫とは言え、霊とは関わりたくない人生だ。

逃げるためにはどうしたらいいか。


考えを巡らせて、その結果、



「あっ、あそこにいるのはっ!?」

「ハァ?? 何が?? ――って、おいっ!!」



佐渡が大声を上げて猫の気が逸れたところで佐渡は体を起こして走った。



「あっ、待て、このヤロー!! 逃がさねーからなッ!!」

「うわぁぁぁぁぁ!! どっか行けぇぇぇぇぇぇ!!」

「いいから、オレの言うこと聞けェェェェェェッ!!」



佐渡と猫の追い駆けっこ。

なんとか猫を巻き、佐渡は部屋に戻ると猫の影に怯えながら翌日の日曜日は過ごすのだった。

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