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ゴーストライター ~幽霊専門代筆屋~  作者: 都宮 アキ


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エピソード2 幽霊は殺人事件の犯人を知っている 第19話

第19話です。




テストの終了を告げるチャイムが鳴り、佐渡はゆっくりとした動作でペンを机の上に置いた。



「あー……やべー……」



佐渡は回収されていく解答用紙を見て天井を仰ぐ。

正直、今日のテストは全体的に自信はない。

それもこれも昨日までの三日間が怒涛の展開過ぎてテスト勉強をする暇が無かった。


とは言え嘆いてばかりいても仕方がない。

同じテストを受けていた竹内に誘われて、集合場所の学生食堂へと向かった。


近代的な作りの食堂は学生の憩いの場として使われている。



「おーい! こっちだよー!」



シオンが佐渡と竹内の姿を見て手を振る。

そしてシオンの隣では藤原が涼しい顔で席に座って手を軽く上げていた。


窓から少し離れたそこは冷房が程よく効いていて居心地が良かった。


佐渡はいつも通り学食で一番安いたぬきうどんを、竹内は肉大盛りの牛丼を頼んだ。

先に食事を摂っていたシオンはサンドイッチを、藤原は和食定食を食べていた。

どちらも『らしい』メニューだった。



「ユウマ、もしよければこれ食べる? ボク、お腹いっぱいになっちゃって」

「おう! ありがとな!」



シオンがサンドイッチを勧めれば竹内が受け取る。

横から佐渡が気になっていた件を口にした。



「……それで例の件、どうなった」



声を潜めて尋ねるのは昨日逮捕した久留和吾郎の件だ。

その後どうなったのか佐渡は知りたくて堪らなかった。


父親が刑事のシオンであれば事情が分かるだろうと期待して聞いたのだが、シオンは予想に反して首を左右に振った。



「進展ないみたい。だんまり決め込んでる、ってパパが言ってた」

「いつ認める気でいるのかな……」

「でも、認めなくても逮捕できるんだろ? だって、証拠がある」

「大久保の件はね」

「長澤社長だって凶器が見つかっただろ?」

「同じ凶器だったとしても問題はアリバイ。死亡推定時刻にアリバイがある以上、社長の方の立件は難しそう」

「そういうもんなんか」

「そういうものだよ。……佐渡クンが教えてくれた大久保久からの情報、パパに話したら長澤瑠梨にも話を聞くって言ってたけど、実際どうなるか……黙秘を続けられると証拠がない限り警察はお手上げだからね」

「そっか……」



シオンの返答に佐渡は物思いに耽った。


昨日から長澤がいなくなった。

これは成仏したからというわけではない。


佐渡の見立てでは久留和の様子を見に行っているのだと思う。

長澤は久留和のことを今はどう思っているのだろうか。


やはり、憎く思ってるのだろうか。

それとも、過去を知って哀れに思ってるのだろうか。

または、己の愚行を悔いているかもしれない。


佐渡は長澤と久留和のことを思うと中々箸が進まなかった。







その日のすべてのテストが終わると佐渡はまっすぐ家へと帰った。

明日もテストがあるのだ。

テスト勉強をしないと。


そう思うのだが机に向かっても集中できない。

何度かペン先をノートの上に置いては離してを繰り返す。

しまいにはペンを指先で回しはじめた。



「――おい」

「うわぁぁっ!? えっ、あ、長澤社長……」



誰もいない部屋で突然男の声で声を掛けられ驚いた佐渡だったが、その声が長澤だと気が付き落ち着きを取り戻した。


いつの間に戻っていたのか。

長澤は佐渡のベッドに腰掛け、ふんぞり返っていた。



「お帰りなさい。久留和さんのところに行ってたんですよね? どうでしたか、彼」

「どうしたもこうしたも、警察にいる間、一言も喋らん。根性が座ってると言えばいいのか、悪いと言えばいいのか。捕まったのだから洗いざらい吐けばいいものを。往生際の悪い」



死んでもなお現世に残っているあたり往生際の悪さは長澤譲りなのかもしれない。


佐渡は親子が仲違いしている姿を見るのが苦手だ。

できるなら親子という存在は仲が良くあってほしい。


もしも長澤と久留和が和解すれば。

そうすれば久留和も自白をする気になるかもしれない。



「――久留和さんにこれまでのこと謝ったら?」

「急に何を言う」

「謝ったら、少しは気持ちも落ち着いて、事件の事とか、長澤社長の事とか、お母さんの事とか、話してくれるかもしれない……。それで自分の罪を認めてくれるかもしれない……」



佐渡はそんな風に考えた。

そしてさらに口を開く。



「長澤社長が成仏できないのは、久留和さんが何を思ってるか、知りたいからでしょう?」

「…………」



佐渡の指摘に長澤は腕を組み、考えるように目を閉じた。

それから、



「……謝るとしても、どうやって謝る? ……私の声は、今のところお前にしか聞こえないんだぞ?」



長澤は長考の末、呟くように質問してきた。

これには佐渡に考えがあった。



「俺が手紙を書きます。俺があなたの言葉を手紙に書いて、久留和吾郎に渡します。どうですか?」



女性の霊のため、猫の霊のために手紙を代筆した経験が佐渡を動かした。



「ほう……」



長澤は目を細め、



「……いいだろう」



佐渡の提案に乗った。

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