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ゴーストライター ~幽霊専門代筆屋~  作者: 都宮 アキ


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エピソード2 幽霊は殺人事件の犯人を知っている 第11話

第11話です。




「ユウマって人に話聞くのがうまいんだ! おばあちゃんが色々教えてくれたんだよ~!!」

「それを言ったらシオンちゃんも話聞くのが上手いよなぁ~。隣で聞いてて怒られるんじゃないかって思ったら、おじさんが色々教えてくれるんだから」



車に乗ってから情報交換をしようという話になった。


佐渡たちが施設で聞いた話を終えると、竹内とシオンの二人は楽しそうにお互いを称え合いはじめた。

そんな二人を見て佐渡はこっそりと(コミュ力お化け……)と恐れた。


シオンは車のシートから身を乗り出すようにした。



「それでね、ユウマが話を聞いたおばあちゃんの息子が、なんと久留和吾郎と同級生で友達だったんだよ! だからおばあちゃんも良く知っててさ! で、久留和吾郎のお母さんは近くのスナックで働いていたんだって。でも、お金を中々家に入れてなくて久留和吾郎はスナックまで行ってお金を貰いに行ってたみたい。お腹が空いたときは勉強して空腹を誤魔化してるんだって話を聞いて、よくおばあちゃんは夕飯を食べさせてあげたんだって」

「おじさんが言ってたのは久留和吾郎の母親はスナックのキャストの中でもめちゃくちゃ美人で頭良かったんだってさ。昔は銀座のキャバクラで働いてたんだって。でも、子供が出来たから仕方なくお祖母ちゃんの家に引っ越して暮らしてて、だから捨てた男の事スゲー恨んでたんだってよ。酔うとすぐ恨み節を言うんだってよ」

「そうそう! ビックリしたよね、その話! 捨てた男が会社の社長になったから会社まで押しかけていったけど門前払いされたって!」

「それって、まさか……」



佐渡が一瞬頭を過ったのはよくある話。

隣に座るシオンの顔をマジマジと見てしまう。


シオンは静かな表情で頷く。

それから振り返って、見えていないはずなのに長澤を見るようにしてシオンは口を開いた。



「――だから、もしかしたら久留和吾郎って、長澤社長の子供なんじゃないかな、って……」



長澤はシオンの言葉に一瞬息を呑んだような様子をしてから目を背けた。







夕方、スナック『ハナミズキ』の前では店の前のアスファルトに水を撒いている女性がいた。

派手な服を着こなし、濃いめの化粧をしている綺麗な女性だったが、首元や腕や手に刻まれた皺に年月の経過を感じさせる。


小紫を筆頭に佐渡と藤原が近付くとその女性は人の気配に顔を上げ、それから怪訝そうな表情をした。



「あら、まだ開店時間じゃないのよ」

「すみません。少しお話を聞きたくて。私はこういうものです」



小紫が警察手帳を見せると女性は戸惑いながらも年季を感じさせる店内へと案内した。

彼女は店のママでハナだと名乗った。



「それで何を聞きたいの?」

「久留和奈々さんについて」

「奈々? もう亡くなって随分経つけど何かあったの?」

「ちょっと捜査で必要でして……」

「なに、吾郎くんのこととか?」



ハナに言い当てられ小紫は一瞬迷いつつも隠し切れないと思い首肯した。



「……ええ、まあ……久留和吾郎さんについて調査している関係からお母さんの奈々さんのことを調べたくて……」

「なるほどねぇ。――ああ、そこ座ってちょうだい」



ハナは六席あるカウンター席を指した。

一方のハナはカウンター内に入って煙草の吸殻を引き寄せ煙草に火をつけ始めた。



「……吾郎くん、元気なの?」

「ええ、元気ですね」

「そうかい。それなら良かった」

「それで久留和奈々さんのことについてお聞きしたいのですが……先ほど亡くなったと……」

「そうだよ。……もう三十年近く前になるかな。酒の飲み過ぎで体壊してそのまま……吾郎くんの高校卒業まで持たなかったよ」

「そうでしたか……」

「頭は良いのにバカなことしたよ……やり直しなんていくらでも利くのに……」

「……近所の方から聞いた話ですと、奈々さんは元々は東京でお仕事をされていたとか……それで子供が出来たからこちらに来たと聞いたんですが、それは本当ですか?」

「そうだよ」

「吾郎さんの父親のこととか聞いてますか?」

「東京の会社の社長だって聞いたねぇ」

「名前は?」

「いや知らないねぇ。ミズキ――うちの店では奈々のことをそう呼んでたんだ。それで、ミズキはどんなに酒を飲んでもそれだけは口にしなかった。プライドが許さなかったんだろうね。でも酔うと必ず『私は騙された』『クソガキを産んだら結婚するはずだったのに』って言ってたねぇ」



ハナはいつの間にか短くなった煙草を灰皿に押し付け、二本目に手を出した。



「ミズキは頭は良かったんだけど、人を信じやすい子だったんだよねぇ。だから余計にショックだったんだろうね。男にいいように使われて捨てられたのが」

「奈々さんは吾郎さんのことを『クソガキ』と言ったんですか」

「言ってた言ってた。ミズキにとっては人生を狂わされたのは吾郎くんのせいみたいなもんだからね。――私も周りの客も窘めたんだけどね。そんなこと言うもんじゃないって。でも、ミズキは聞かなかったねぇ。だから児相が何回も家に来て、何度も吾郎くんを施設に入れてたからね」

「でも、施設から何度も家に戻ったんですよね」

「そうだね。吾郎くんはミズキに似て頭が良くてね、中学生ぐらいになってくると聞き分けもよくてミズキは吾郎くんに頼ってたみたいなんだよね。でも、酒癖が悪いからさ、酒を飲むとまた手を上げんのよ。怒るとご飯も食べさせないみたいでねぇ。ある時なんて、吾郎くんが店まで来て、『お金がないんだ』って来てさ。可哀そうで、ハナの給料を少しだけ前払いしたり、ここのお店でご飯を食べさせてあげたこともあったよ」



その頃を思い出してるのかハナは目が少し潤んでいた。



「……悪いね、刑事さん。だから、吾郎くんの父親についてはそのくらいしか知らないんだ」

「いえ、貴重な情報ありがとうございました。ご協力ありがとうございました」



小紫が締めの挨拶をする横で佐渡たちも頭を下げた。

久留和吾郎の過去に少し触れることができたが肝心な情報が手に入らず佐渡はじわりと背中が熱くなった。


何か他にもっと手掛かりがないだろうか。

佐渡がそう思った時だった。



「あっ!!」



長澤が一際大きな声を上げた。

なんだろうか、と佐渡がそちらを見ると長澤は宙に浮きながら天井近くの壁に飾っている古い写真を見ていた。



「あのー、あの写真って何なんですか?」



佐渡が指を指す。

ハナは写真を見て「ああ」と声を上げた。



「あれはうちの五周年記念のときの集合写真よ。ミズキも写ってるわよ」

「えっ、本当ですか? どれです?」

「あすこ。左から三番目の女の子。女優さんみたいでしょ?」



確かに彼女が言う通り、久留和奈々という女性は写真に写る女性の中で群を抜いて綺麗だった。



「――ナナリーっ!」



長澤はまるで幽霊でも見たような顔をして写真を睨みつけた。



「そうかっ!! ナナリーかっ!! ナナリー、久留和はお前の息子だったのかっ!?」



長澤が激高するように叫ぶ。

佐渡はハナに聞いた。



「あの……『ナナリー』って名前に心当たりはありますか?」

「えっ?」



ハナは一瞬驚いて、それから腕を組んだ。



「それ、ミズキが東京で使ってた源氏名よ? なんだ、そこまで調べがついてたの?」



「今まで黙ってるなんて、若いのに悪い人ね」とハナは顔を口角を上げた。

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