エピソード1 幽霊からの手紙 第2話
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教授が教室を出ると同時に竹内は大きく伸びをした。
「ぐああ~! つっかれた~! 午前中だけとは言え、土曜日も授業はしんどいな」
隣にいた佐渡はそれに同意しながら机の上を片付ける。
さらにその隣にいた藤原は竹内の言葉は聞いていない様子だった。
竹内は大きく息を吐きだすと、目を輝かせながら二人を見つめた。
「なぁ、これからカラオケ行かね? 二人が仲良くねーなら親睦深めるためにもさ~」
尻尾があったらぶんぶんと振っていそうな様子だ。
「パス。俺、カラオケ苦手」
「俺は家の用事があるから」
しかし、あっさりと二人は断る。
竹内は肩を下げ、「つれねーなー」と残念そうにした。
佐渡は忙しい竹内を内心では好ましく思いつつ、ふと思いついて藤原に声を掛けた。
「あ、なぁ、藤原。今日、お前んち行っていい?」
「いいけど、どうしたの?」
「お前の姉ちゃんに相談があるんだよ」
「そうなんだ。たぶん大丈夫だと思うけど」
「……やっぱりお前ら実は仲良いよな?」
「そうか?」
竹内の指摘を受けても佐渡はピンと来ない。
出会いが出会いなだけに佐渡は藤原と友達という感覚は無いのでそんな風に返した。
藤原は竹内の言葉を聞いてなかったのか、佐渡に事実だけを伝えた。
「ちなみに相談料は三〇分五千円だから」
「金取るの!?」
「相変わらずの守銭奴だな!?」
藤原の家業を詳しく知らない竹内、藤原の姉の存在を知っている佐渡がそれぞれの反応を返す。
藤原はこれに肩を竦めてみせた。
「――仕事だからね」
*
「ごめん、ちょっと姉さんに電話してくる」
「おう」
藤原はそう断りを入れてその場を離れた。
昼時なせいかやや閑散としたホームの端で「もしもし」と話をしている藤原を横目で見ながら、佐渡は屋根の下の日陰で電車が来るのを待つ。
頭上の電光掲示板には次の電車は三分後と記されていた。
(おっ、猫!)
佐渡は少し離れたところに猫がいるのを見つけた。
子犬ほどの大きな長毛種の猫で尻尾がフサフサしていた。
血統書付きと見紛うばかりの立派な猫だったがその首に首輪が無いのを見て野良だと分かった。
佐渡はその気品ある姿に相好を崩す。
「美人な猫だなぁ、お前」
思わずしゃがみ込んで声を掛けてしまうくらい魅力のある猫。
佐渡の声に猫は優雅に振り返り佐渡をジッと見つめた。
その姿がまた佐渡の心を掴んだ。
「ああ、俺がアレルギーじゃなければ触れるのにな~」
「お待たせ。どうかしたのか?」
「ああ、いやそこに猫が……――って、あれ?」
「猫がいたのか?」
「ああ。めちゃくちゃ美形の野良猫がいてさ、綺麗だったな~」
「へ~。俺も見てみたかったな」
やがて電車がホームに滑り込んでくる。
二人は涼しい冷気に満ちた箱に入り込むと扉が閉まった。
電車が次の駅へと向かう。
そして電車がホームを去ると、先ほど佐渡が見惚れた猫がホームにいた。
猫は未だ佐渡を見つめる。
突如、意を決したようにホームを駆けた。
疾風のように駆ける猫は電車を待つ人にぶつかった。
次の瞬間、脚をすり抜けて見せる。
一方のぶつかられた人間は猫のことなど気にもしない様子だった。
猫はホームの端までいくとそのままの勢いで手すりに飛び乗りひらりと跳躍した。
それは通常の猫ではありえないような飛距離だ。
空を飛ぶようにして滑空する猫は電車の上に綺麗に着地し、そのまま溶けるように車内に入り込むのだった。




