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ゴーストライター ~幽霊専門代筆屋~  作者: 都宮 アキ


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エピソード1 幽霊からの手紙 第1話

ゴーストレターの続編となります。

カクヨムで連載していたものをこちらでも掲載します。




心臓が痛い。


肺が上手く動かない。


目だけを動かすと薄い板が街灯の明かりを反射し鈍色に光った。


振り上げられたそれはオレの腹へ向けて振り下ろされさっくりと皮膚を割いた。


途端、切り口から熱いものが止めどなく吹き出す。


オレは抵抗したくても、前足も、後ろ足も、痺れてしまっている。


逃げられないオレはか細い声しか上げられなかった。


傷口が熱い。


だけど、体は震えるほど寒い。




――ああ……




――オレはじきに死ぬんだな……




内臓を引きずり出されながら薄れゆく意識の中でオレは思う。


生まれてまだ半年。


なんと短い生だろう。


まあ、気を許した自分が悪いが。




――アイツは、悲しむかな……?




最後に脳に思い浮かぶのは、いつも笑顔の男の顔だった。







(あー、うぜー……っ!)



佐渡佳己は遮断機が下りた線路上にいる少女を無視するように明後日の方向に目を向ける。

少女はしかし佐渡に向かって、「コンニチハ!」「コッチニ来テヨ!」と声を掛けてくる。


間もなく電車が通過するという警報音が辺りに鳴り響く。


だが、佐渡は線路に立ち続ける少女を助けようとする気はないらしく、無視を続けた。


やがて遠くから地鳴りのような音が響いてきた。

汽笛が鳴る。

次の瞬間、電車が通過する。

少女の姿は掻き消え見なくなる。

悲鳴はなかった。


警報音が解除され、遮断機が上がる。

そこには少女がいた痕跡は一切無く、平気で車が往来をはじめた。


佐渡は額から顎へと滴り落ちた汗を拭いながら顔を顰めた。



(毎日毎日、霊に声掛けられて、本当に嫌になるわ!!)



佐渡は逃げるようにして足早に踏切を渡った。



(うわ……またかよ……)



佐渡は目の前に老人がぼうっと立っているのが見えたがその老人に影が無いのを確認して構わず突っ切れば予想通り老人をすり抜けることができた。



(メガネもうざっ……)



今年のGW過ぎにトラブルに巻き込まれ眼鏡をするようになった。

視力が落ちたのも理由だが、もう一つの理由は突然見えるようになってしまった幽霊を見えにくくするためだった。


霊視能力が開花した原因を大学前で見つけたので、佐渡は駆け寄り、掛け声とともに膝裏に蹴りを入れた。



「藤原ー!! うらっ!!」

「うわっ!! さ、佐渡、どうかしたのか?」



蹴りを入れた相手、藤原楓はこれに振り返って目を見開いた。



(……こいつ、蹴り入れてもビクともしねー。結構本気で蹴ったのに体幹どうなってんだよ……)



佐渡は少しもダメージが入ってなさそうな藤原に「別に」と投げやりに返事を返した。


藤原は目を瞬き、「何もないのに佐渡は人を蹴るのか?」と尋ねた。


この人をおちょくるような言葉に佐渡はカチンと来た。



「んなわけねーだろ! 単純に、今日も朝から霊ばっか見掛けたからイラっとしてたんだよ!」

「あー、そういうことか」

「分かってんのか? こうなった原因さんよー? 俺の苦労が!!」

「分かるよ、分かる。俺も幼少期は人と霊の区別つかなくて危ない目に結構合ってたし」

「マジか……それはちょっと可哀そうだな……」

「ま、何かあったらまた相談してよ」

「イヤだよ。お前に相談したらまた血を飲まされてさらに酷いことになりそうだ」



佐渡はつい二か月前のことを思い返した。

女の霊に憑りつかれ、一時は目が見えなくなるほどになって慌てて神社が実家の藤原に助けを求めた。

藤原の血には霊を祓う力があるというのを人から聞いていたので藤原の血を飲んで事なきを得た。

ただ、その副作用で霊が見えるようになってしまったので、佐渡としては血を飲むという選択は失敗だったかもしれないと少し後悔していた。



「おっはよー! 今日も仲良いな、二人とも!」



そんな二人の背後から声が掛かった。


佐渡の高校からの友人であり、藤原と中学が被っていた竹内勇真だった。

明るい性格のムードメーカーなのもあってか、二人のやり取りをそう評した。



「竹内、ぉはよっ。別に仲良かねーよ」

「おはよう。仲良く見えるか?」

「仲良くねーの?」


竹内は佐渡と藤原の返答にキョトンとした顔をした。







小さな影が公園を横切り、出たところで一度足を止めた。


振り返った視線の向こうには一人の男がいる。


影は男を睨みつけるが、その視線に気が付かない男はベンチにゆったりと腰掛けていた。


その姿に目を眇め、尻尾を激しく振ってから身を翻した。


影は軽々と塀の上へとジャンプし、その場から素早く立ち去るのだった。

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