エピソード2 幽霊は殺人事件の犯人を知っている 第9話
第9話です。
「このルートは大きい車だと通りにくいから右から行った方がいいね」
道に詳しい小紫がカーナビを見ながら道案内をしてくれるから安心感が違った。
「そういや、今ってどこへ向かってるんだ?」
「久留和の実家じゃないのか?」
竹内の疑問に佐渡があたりを付ける。
だが、
「ううん。違うよ。白ゆり養護施設ってところだよ」
藤原が訂正する。
「養護施設?」
「昨日、シオンと一緒にSNSで久留和吾郎について調べたんだけど、そのときに久留和が養護施設育ちってのが分かったんだ」
「そんなん分かるもんなんか!?」
「調べ方にコツがあるんだよ」
「そうそう。カエデはそういうのホント得意なんだから!!」
「ちなみにどうやって分かったんだ……?」
「まずは久留和の大学と高校と中学の同期っぽい人間を探すんだ。そこから鍵垢を探して、リプライをチェックして、その中から久留和に関係する情報を探したって感じかな。人によっては情報をオープンにしてるから」
「ネットリテラシーどうなってるんだよ……」
「まぁ、久留和の世代的には難しいんじゃないかな? 本名で登録してる人も中にはいるから」
「うわー……」
「個人情報ガバガバ過ぎだろ……」
「あははっ! カエデなら調べる気になったら初恋の人まで調べられそうだよね」
竹内と佐渡がドン引きしている中、シオンが茶化すと藤原は大真面目に「分かるだろうね」と返答した。
車は市街地へと入っていく。
開発が進む大都市。
そこからさらに北へと進む。
やがて同じ市内とは思えないほどの田園風景が並び、古い家屋が目立った。
さらに進み住宅地の中に建てられた建物の前に車が止められた。
看板には白ゆり養護施設と掲げられている。
腰より少し高いくらいの門は閉じられ、敷地内では幼稚園から高校生ぐらいまでの子供たちが思い思いに過ごしていた。
「ここが久留和がいた施設か……」
「よし。じゃあ、カエデ、佐渡クン、準備してっ!」
「は? 何? 準備って」
「何って、これから聞き取り調査をするんだよ。だから、スーツで来てって言ったんだから」
シオンはびしりっと佐渡に人差し指を向けた。
「いい? 佐渡クンとカエデは今から刑事ね! これから小紫サンと一緒に養護施設に行って話を聞いてくること!」
「は、はぁぁぁっ?! なんで俺が??」
「だーって、佐渡クンしか長澤社長の声が聞こえないんだよ? で、カエデは保険。もしも佐渡クンが長澤社長の声を聞き逃してるようだったらカエデが教えてあげてほしいんだ!」
「いやだとしても、バレるって!」
「大丈夫大丈夫! 堂々としてたら分かんないって! ボクが髪のセットをしてあげるからさっ」
佐渡は抵抗を試みたが無駄だった。
後ろに座る竹内に肩を押さえ込まれ、そのままシオンが持ってきたヘアワックスで髪をセットされる。
こうなれば自棄だと、佐渡はおとなしく入学式で着たきりだったジャケットに袖を通した。
一方の藤原はシオンのヘアワックスを借りて前髪をオールバックにしていた。
そうすれば身長も高いこともあり十歳くらい老けて見えた。
「……なんか、俺だけ場違いじゃね? どうみても刑事ってよりは営業みたいな気がすんだけど……」
「大丈夫だから! ほら、ボクの手帳を貸してあげる! 困ったらこれを開いて、話をメモするフリをすれば刑事に見えるからっ!! 自信を持って!!」
「頑張れよ、佐渡! お前なら大丈夫だからさ!」
「……分かったよ、ありがとな」
竹内の明るさに毒気を抜かれ、佐渡はシオンから手帳を受け取った。
運転席でその様子を聞いていた藤原は「やっぱり佐渡は押しに弱いな」と言っていたが佐渡は気が付かないフリをした。




