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ゴーストライター ~幽霊専門代筆屋~  作者: 都宮 アキ


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エピソード2 幽霊は殺人事件の犯人を知っている 第8話

第8話です。




佐渡がアパートの前で立っていると藤原の車が朝日を浴びながらやってきた。



「おはよう」

「おはよ、ありがとな、迎え」



佐渡は礼を言いながら後部座席に乗り込む。

藤原は車を出発させ、ルームミラーをちらりと視線を送った。



「その服、暑そうだね」

「はっきり言って、暑い……たくっ……なんでスーツ指定なんだよ、シオンは」



佐渡はジャケットを脱ぎ、ワイシャツの袖を捲りながらそうぼやいた。


シオンの家に向かうと家の外にはシオン、竹内、それから佐渡の知らない顔がいた。

自分より少し年上の瞳が印象的な男性だ。



「おはよー! 二人とも!!」



シオンの元気いっぱいな声が車内に響く。

シオンは佐渡の隣に、竹内は後ろの席に座る。

佐渡はちらりと長澤の霊を見ると、皆に追いやられてシオンの後ろの席で不満そうに座っていた。



「はじめまして、小紫って言います。今日はよろしく」



助手席に乗り込んだ男がそう挨拶をした。

この人物は誰なんだろう、と佐渡が思っているとシオンが「ボクのパパの部下の刑事さん!」と紹介してくれた。

小紫は久留和の出身と同じ埼玉ということで付き添ってくれることになったという。


メンバー全員を乗せた車は意外とスピードを出す藤原の運転で埼玉へと進路を向けた。



「ごっほん。えー、では、ボクの方から今回の事件の概要を説明しまーす!」

「それ久留和を調べるのに必要か?」

「トーゼン!!」



佐渡の指摘にシオンは胸を張る。



「と言っても、さすがに捜査資料をそのまま見せるのは無理だから、ボクがメモをしたのを教える形になるけどね~」 



それからバッグから警察手帳に似た黒い手帳を取り出した。

手帳をパラパラとめくり、真ん中くらいを指で止めた。



「まず事件発覚は七月二十日月曜日、午前六時半頃。住み込みの運転手の加藤勝次さんが起きてこない社長を起こしにいったところを発見」

「第一発見者ってやつだな」

「そうそう。死亡解剖の結果、胸を包丁で刺されたショックからの出血性ショック死。死亡推定時刻は死後硬直の様子から前日十九日の午後十一時から午前二時の間。ただ、身に着けていたスマートウォッチの脈拍は午前〇時二十一分まで計測されてたからその頃に殺されたんだろうって警察は見てる」

「いや、私が殺されたのは二十三時台だ。日付が変わる前には殺されてる」

「えっ」



シオンの説明に長澤が口を挟む。

長澤の声が唯一聞こえる佐渡はそれに長澤の顔を見てぎょっとした。



「何かあった?」

「あ、長澤社長が、自分が殺されたのは日付が変わる前だって言ってて……」

「へー……それは面白いね……」



シオンは今度はペンを取り出してメモに書き込みを入れる。

そしてシオンは佐渡の視線の先、自分の背後に顔を向けた。



「オッケー。社長、もしも気が付いたことがあればドンドン教えてっ」

「分かった」

「分かった、って言ってる」

「了解! じゃあ、続きを言うね? ……この事件の容疑者ははっきり言って多い。というのも、事件発覚前日の十九日は身内だけのパーティーが開かれていたんだ――」



容疑者はざっと十人。

長澤明里、六十歳。一番目の妻。

長澤真、四十歳。長澤の長男で、一番目の妻、明里との間に出来た子。現在はホテルナガサワの副社長。

長澤明依、三十八歳。長澤の長女で、明里との間に出来た子。現在はホテルナガサワの事務長。

長澤紗也加、五十歳。二番目の妻。一番目の妻との婚姻中のときの不倫相手。後に結婚。

長澤珠理亜、三十二歳。長澤の次女で、二番目の妻、紗也加との間に出来た子。現在はホテルナガサワのグループ会社、ビジネスホテルNの社長。

長澤瑠梨、二十五歳。三番目の妻。ホテルナガサワに新卒で入ったところを見染められ、現在妊娠中。

久留和吾郎、四十五歳。長澤の秘書。

大久保久、五十五歳。ホテルナガサワの前副社長。先月解雇されたばかり。

加藤文子、七十五歳。長澤家に雇われてる住み込みのお手伝い。

加藤勝次、七十六歳。長澤家に雇われてる住み込みの運転手。



「――これだけの人間が長澤の家に前日出入りしていた。そのうち、八人は長澤の家に朝までいたみたい」

「うへ~、名前覚えるだけでも大変そう~」

「大丈夫だよ、ユウマ。全員は覚えなくていいから。――警察が容疑者として見てるのは三人。まずは、解雇されたばかりの大久保久。次に、長男の長澤真。それから、次女の長澤珠理亜。大久保は当たり前だけど、みんなそれぞれ長澤社長のことを恨んでたみたい」

「まあ、社長って職業だと色々あるよな、きっと」

「たぶんね~。で、ここからが重要。長澤社長の証言だと、久留和吾郎が犯人ってことなんだけど、彼にはアリバイがあるんだよね~」



シオンは手帳をポケットにしまい、バッグから今度はA4の用紙を取り出して佐渡と竹内に渡してきた。



「言葉だけだと分かりづらいだろうから時系列作ってみたんだ」

「すげー! これは分かりやすいなっ!」



竹内の感想を聞きながら佐渡も同じことを思った。


七月十九日から二十日に掛けて時間軸が書かれてある。

パーティーがあったと言っていたが、表を見ると十九日の午後七時からそのパーティーは開かれていたようだ。



「久留和吾郎の時系列だけ説明するね。久留和の証言によると、午後九時半に大久保と長澤社長の面会予定があったからその出迎えと対応。三十分面談の後、大久保を送って自宅へ帰宅。午前一時頃まで自宅で仕事をして、その後、就寝」

「じゃあ、自宅で仕事が嘘なんじゃないか?」

「自宅のデスクパソコンの更新時間がその時間帯にはなっていたらしいよ。もちろん、偽装の可能性もあるけど。ただ、久留和吾郎と長澤社長は周りから見ても関係が良好で動機がないってことで早々に容疑者から外されてあまり調べられてないみたい」



シオンはそう答えた。



「そうなんですか? 小紫さん」



ずっと黙って聞いていた運転手の藤原が助手席に座る小紫に尋ねる。

そうすれば小紫は酷く言いにくそうに口を開いた。



「……今の話に間違いはないよ」

「小紫さんの方で何か追加情報とかはないんですか?」

「いやぁー……俺の口から言うのはちょっと……立場的にやっぱまずいからさ……」

「それもそうですよね、すみません」

「いやいや。ただ、よくまとめられてるよ」



小紫は苦笑気味にそう言った。


車はしばらくして埼玉県に入った。

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