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ゴーストライター ~幽霊専門代筆屋~  作者: 都宮 アキ


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エピソード2 幽霊は殺人事件の犯人を知っている 第6話

第6話です。




「白石さん、これが久留和吾郎の資料です」

「おう、ありがとな」



小紫から資料を貰い、白石は自分のデスクの上に資料を広げた。

と言っても、もともと捜査対象から外されているから資料は少ない。


久留和吾郎。

四十五歳。

長澤の秘書で、住まいは世田谷区のマンション。



「改めて見ると久留和って俺と同じ埼玉出身なんですね」

「そうか、お前、埼玉出身なのか」

「ええ。それにしても、なんで久留和を調べ始めたんです?」



小紫は不思議そうにしていた。

久留和は死亡時刻にアリバイがあり、動機が無いことから容疑者から外れていた。


その指摘に白石は面倒そうに口を開いた。



「タレコミがあったんだよ、『ケンコミ』からな。……犯人は久留和だって」

「ええっ? それだけで信じるんですかっ!?」

「何言ってるの。『ケンコミ』だから無視できないんでしょ」



白石と小紫の話に青柳が口を出した。

青柳は小紫を見下ろしながら冷たい視線を投げかける。



「いい加減に慣れなさい。だからあんたはいちいち仕事が遅いのよ」

「はい、パワハラー」

「……警部、私も久留和の調査をお手伝いしますか?」

「ああ、頼む」



二人のいつものやり取りを聞き流し、白石はこれから何をすべきかと思考を巡らせる。

そのとき、白石のスマホが震えた。

ジャケットのポケットから取り出し画面を見ればシオンからの電話だった。

二人に断りを入れ電話に出ると、『もしもし? パパ? 今電話大丈夫?』と愛息子の声が聞こえてきた。

これに白石の顔は綻んだ。



「ああ、大丈夫だ。どうした、汐恩」

『ごめんね、お仕事中に。あのね、久留和吾郎の情報が欲しいの。ボクに捜査資料を見せてくれない?』

「はっ? 資料?」



白石は思ってもみなかったことを言われて目をしばたかせた。

それから周囲に話が聞こえないように口元を手で覆った。



「あのな、シオン、さすがにそれは無理だよ」

『えー、なんで?』

「警察の内部資料を家族とは言え外部に見せられるわけがないだろ? 分かるよな?」

『でも、久留和吾郎の捜査には資料が必要なんだよ』

「捜査? どういうことだ?」

『フフフフッ! それはね、佐渡クンたちと一緒に探偵をすることにしたんだよ!』

「は……?」

『佐渡クンが幽霊から話を聞いて、そうして久留和のことを探る! ボクたちにしかできない調査でしょ? そうすれば事件もすぐに解決だよ!』

「いくら汐恩の頼みでもそれはパパもできないよ」



白石はできるだけ優しい声を出してそう言った。

すると電話の向こうが少し静かになった。

それから、



『ひっく、ひっく……』

「し、汐恩?! 泣いてるのか??」

『ボク、パパのお手伝い、したかったのに……ひっく、そんな風に断られると思わなかった……うぐっ』

「泣くな、汐恩! 分かった! 分かったから!! 夜、お家に帰ったら話すから、な? 泣き止んでくれっ!」



電話の向こうで泣き出したシオンを必死に慰める白石のその横で青柳が「小声で話してるつもりでしょうけど全部聞こえてるのよねぇ」と呆れる。



「青柳先輩、シオンって誰なんですか?」

「白石警部の下のご子息よ。目に入れてもいたくない、って感じでいつもあんな調子なの」

「デレッデレっすね。にしても、世田谷の大熊って呼ばれてる白石警部の息子さん……なんかゴツそうっすね」

「そんなことないわよ。母親似で可愛いわよ」

「へー」

「――おいっ、小紫っ」



いつの間にか白石の電話が終わっていた。

白石から声が掛かり、小紫は身を正した。



「ハッ!」

「お前、さっき埼玉出身って言ってたよな?」

「えっ? はい……言いましたけど……」

「なら、明日は休みだ」

「休み!?」

「それで、俺の大事な息子の汐恩とその友達と遊んでやってくれ。埼玉に行きたいそうだ」



白石は「おお、そう言えば」と声を上げる。



「久留和も埼玉の出だったな。ついでに調べられることがあったらよろしくな」

「……それって調査しに行ってこいってことじゃ……?」

「何言ってるんだ。上司が自分の息子の子守りを頼んでるだけだろ?」

「いやそれかなり無理ありますよっ!?」

「そうそう。明日は念のため警察手帳持って、スーツで行けよ」

「もう完璧に仕事じゃないっすか、それ……」



小紫が嘆く。



「ファイト」



それを青柳が肩をぽんと叩いて励ましてくれるのだった。

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