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ゴーストライター ~幽霊専門代筆屋~  作者: 都宮 アキ


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エピソード2 幽霊は殺人事件の犯人を知っている 第3話

第3話です。




「――佐渡って、案外押しに弱いよね」

「うるせー……」



佐渡から事情を聴いた藤原楓は感想を漏らすと佐渡は唇を尖らせた。


藤原に電話で助けを求めたあのあと――藤原は車で佐渡を迎えに来てくれた。

それでそのまま藤原の実家である健康美神社へ。


健康美神社の本堂と併設されている藤原家。

通された部屋は以前も入ったことがある古風な和室の藤原の部屋。

使い古された畳の上には勉強机とベッドが置いてある。

二回目の佐渡は前回と同じように床に置かれた座布団の上であぐらを掻いた。


そしてここまで付いてきた老人の幽霊は佐渡の背後で仁王立ちをしていた。


藤原はその人物を見て言う。



「その人、確かこの間殺されたホテル王の長澤社長だよね?」

「そうなのか?」

「そうだ。気が付いてなかったのか?」



藤原の言葉に佐渡が老人の幽霊に尋ねれば、あっさりと肯定された。

老人の幽霊改め、長澤は確かにそう言われれば説得力があった。

社長らしい風格がある。



「殺されたんだ」

「知らなかったの? 新聞の一面にも出てたと思うけど」

「新聞なんか取る金ねーもん」



倹約を常としている佐渡にとって新聞購読代は後回しにされる出費だ。

佐渡は言われてみればそんな見出しのネットニュースを見かけた気がしたが、興味も湧かず詳細までは見ていなかった。


そんな佐渡だが世間に疎いわけではない。

ホテルナガサワは有名人が結婚式を挙げるなどして度々テレビにも登場するので全国的に知名度は高い。



「車の中で簡単には聞いたけど、殺した犯人を捕まえてほしいって?」



藤原が尋ねると、長澤は「そうだ!」と答えた。

ただ残念ながら藤原は長澤の姿が見えても、声は聞こえないので助けを求めるように佐渡に目を向けた。

通訳係を任された佐渡は首肯する。



「そうらしい」

「なるほどね……で、佐渡としてはどうしてほしいの? 電話で言ってたように俺に除霊してほしいの?」

「あっ、いや……」



藤原の問いに佐渡は言いよどむ。



「……殺人事件の犯人なんて聞かされて、それを放置するのもちょっとな、って思ってて……だから、頼みを聞いてもいいかな、とは思ってる」

「ふーん」

「ただ問題は、どうやって警察に伝えるかってところでさ。……警察に『長澤社長が幽霊になって俺に犯人のことを教えてくれたので捕まえてください』なんて言っても信じてくれないだろう? どうしたらいいかと思って……」



幽霊は存在しない。

つい二か月前の自分ならそう言っていた。


だからこそ、幽霊が見えない人間にどうやって幽霊の話を伝えればいいのかと佐渡は悩んだ。



「なぁ、藤原ならこの場合どうする?」

「うちの場合は特殊だから、警察に言えば動いてくれると思うからそのまま通報するかな?」

「マジか!! じゃあ、藤原の方から警察に通報してもらえないか!?」

「まぁ、落ち着いて。今は夜中だし……それに、警察なら他にも伝手があるんだ」

「伝手?」

「あぁ。明日紹介するよ」







深夜二時を過ぎていたので佐渡は藤原の家に泊まらせてもらった。

そして翌日は早朝に起き出して、授業の荷物を取りに家へと帰り大学へ行くという中々にハードなスケジュールをこなした佐渡。


欠伸をしながら教室へ向かうと先に到着していた藤原が佐渡の姿に気が付いて手を振った。


佐渡がそちらに目を向けると、藤原の隣に背の低い人物がいた。

赤メッシュの入った短いツインテール。

丈の短いワンピースの下にはショートパンツを履いている。

藤原の彼女だろうか。

可愛らしい人だった。



「佐渡、紹介するよ。コイツは高校からの友人の白石汐恩。――シオン、彼は佐渡。さっき相談したいって話した相談主」

「どうも~。白石汐恩です! よろしくね!」

「ああ、よろしく。佐渡佳己だ。えーと、白石ちゃんは、」

「あ、ごめんごめん。こんな見た目でもシオンは男なんだよ」

「はい?」

「そっ! ボクは魔性の男の娘、汐恩クンですっ! 気軽にシオンって呼んでね?」



ほっぺに指を当て、小首を傾げるシオンは女にしか見えない。



「男に見えないな……」

「よく言われる~。――それで? ボクに何を相談したいの?」

「ああ、えーと」

「俺から話すな。シオン、大事な話なんだ。佐渡は俺と同じで霊が見えるし、俺と違って会話ができる。それで、ホテルナガサワの社長が殺された件について、長澤社長本人の霊から犯人を教えてもらったんだ」

「えっ、えっ! 幽霊!!」



シオンは目をキラリと光らせてはしゃいだ様子だった。



「何それっ! 霊が犯人を教えてくれるなんてすごいっ!」

「しっ! 静かに……この話をシオンのお父さんに伝えたいんだ。場所をセッティングしてくれないか?」

「もちろん、いいよ!」



即答するシオン。

隣で聞いてる佐渡は二人の会話についていけない。



「シオンのお父さんって何やってるんだ……?」

「刑事だよ~」



佐渡の質問に答えたシオンはにこりと笑った。

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