編集者も大変だ
諏訪貴信がノートに書いた。
【藤井壮馬と諏訪貴信が手を組む】
その瞬間。
宇宙全体が揺れた。
ゴゴゴゴゴ……
謎の立方体が警告を発する。
『危険』
『危険』
『特異点発生』
『観測不能』
所長が叫ぶ。
「だから言っただろ!」
「言ってませんよ」
そして。
宇宙に一本の亀裂が走った。
バキッ。
空間そのものが割れる。
その向こうに見えたのは――
もう一つの宇宙。
そこには銀河があった。
星があった。
文明があった。
そして。
東京もあった。
「東京?」
壮馬が驚く。
しかし様子がおかしい。
東京タワーが十本ある。
富士山が三つある。
新宿駅が巨大ロボになっている。
所長が頭を抱える。
「なんだあれ」
諏訪は静かに言った。
「失敗作だ」
全員が固まる。
「失敗作?」
諏訪は頷く。
「私が昔、設定を書きすぎた宇宙だ」
「そんな理由あります?」
あった。
その宇宙では何でも設定できた。
【犬が首相になる】
成立。
【ラーメンが通貨になる】
成立。
【月曜日を廃止する】
成立。
結果。
文明が崩壊した。
「そりゃそうだ」
所長は納得した。
その時だった。
失敗宇宙の中心。
巨大な黒い都市が現れる。
都市の名前は――
新宿。
しかし普通の新宿ではない。
全長三万キロ。
意思を持つ都市。
銀河を飲み込む要塞。
その都市の頂上に一人の男が立っていた。
黒いスーツ。
黒い瞳。
黒いコート。
男は笑う。
「久しぶりだな」
諏訪の顔が少しだけ曇る。
壮馬が聞く。
「知り合いですか?」
諏訪は答える。
「昔の編集者だ」
「編集者?」
男は怒った。
「元だ!!」
宇宙が震える。
男の名は――
黒崎エディター。
かつて諏訪貴信の物語を管理していた存在。
しかしある日、
諏訪が設定を増やしすぎて宇宙を壊したため、
編集を放棄した男だった。
「貴様のせいで苦労した!」
黒崎は叫ぶ。
「犬首相編!」
「すみません」
「ラーメン経済編!」
「反省してます」
「火星が温泉になる話!」
「人気ありました」
「少しだけ!」
壮馬は思った。
この人たち、
たぶん昔からこんな感じだ。
その時。
黒崎が壮馬を見る。
「藤井壮馬」
「はい」
「貴様も危険だ」
「またですか」
「くっつける能力だと?」
黒崎は笑った。
「ならば見せてやろう」
指を鳴らす。
都市・新宿が変形を始める。
ガガガガガガ!!
銀河サイズの超巨大ロボットへ変形した。
名称。
超時空要塞新宿DX。
所長。
「もう嫌だ」
ナマちゃん。
「ぎゃお……」
そして黒崎は宣言した。
「藤井壮馬!」
「はい!」
「貴様が接続なら!」
「私は修正だ!!」
能力発動。
【修正】
壮馬の能力が消えた。
「え?」
「えええええ!?」
初めてだった。
くっつける力が使えない。
銀河十三人卿も驚く。
諏訪も少しだけ驚く。
黒崎は笑う。
「始めよう」
「接続者」
「作者」
「そして編集者の戦争を」
もう一つの宇宙を巻き込む、
史上最大の修羅場が始まろうとしていた。




