危機って突然現れる
ある日のことだった。
研究所の地下300メートル。
誰も入ったことのない封印区画に、藤井壮馬は呼び出された。
所長の顔は異様に真剣だった。
「今日は遊びじゃない」
「いつも遊んでませんけど」
「遊んでいる」
巨大な金庫の扉が開く。
そこにあったのは――
黒い立方体。
一辺三メートル。
表面には意味不明な文字が刻まれている。
光を吸い込むような黒。
見ているだけで頭がくらくらする。
「なんですこれ」
「分からん」
「分からないんですか」
「分からん」
「所長が?」
「分からん」
人類は50年間研究した。
結果。
何も分からなかった。
「名前は?」
「謎の立方体」
「そのままですね」
すると突然。
立方体が光り始めた。
ブォォォォォン……
研究員たちが悲鳴を上げる。
モニターは全部真っ白。
重力計は壊れた。
時計は逆回転。
なぜか給湯室の電子レンジだけが爆発した。
「まずい!」
所長が叫ぶ。
「どうするんです?」
「藤井君!」
「はい」
「くっつけろ!」
いつもの流れだった。
分からない。
危険。
藤井。
以上。
壮馬は立方体へ近づく。
「何とくっつければ?」
「とりあえず壁で!」
「雑ですね」
ぺた。
その瞬間。
研究所全体が揺れた。
ゴゴゴゴゴ……
「成功か!?」
研究員たちが歓声を上げる。
しかし。
立方体は壁ではなく、
研究所そのもの
と接続されていた。
「まずいぞ」
所長が青ざめる。
「何がです?」
「研究所が移動している」
「え?」
窓の外を見る。
東京がない。
空もない。
月もない。
「どこですかここ」
「分からん」
「またですか」
研究所は、なぜか宇宙の外側みたいな場所へ転送されていた。
その時。
立方体から声がした。
『接続確認』
『管理者認証開始』
『藤井壮馬を検出』
全員が固まる。
壮馬も固まる。
『接続能力者を発見』
『創造者候補』
「創造者?」
壮馬が首を傾げる。
すると立方体が開いた。
中から出てきたのは――
無数の小さな立方体。
「増えた」
「増えたな」
一つ。
二つ。
十個。
百個。
千個。
一万個。
研究所中を立方体が飛び回る。
そして。
全部が壮馬へ向かった。
「所長」
「なんだ」
「嫌な予感がします」
「私もだ」
ぺた。
ぺた。
ぺた。
ぺた。
全部くっついた。
翌朝。
ニュース速報。
「東京上空に巨大な立方体人間出現」
「身長12キロ」
「正体は藤井壮馬の可能性」
巨大なキューブの塊となった壮馬は、雲の上から叫んだ。
「所長ーーー!!」
研究所の屋上で所長が叫び返す。
「何だーーー!!」
「取れませんーーー!!」
「知っているーーー!!」
その瞬間。
謎の立方体が再び光る。
『次の管理者試験を開始します』
「え?」
『ステージ2』
『銀河ジョイント大会』
所長は空を見上げた。
そして静かに言った。
「帰りたい……」




