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ジョイント!  作者: 諏訪貴信


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12/15

本を読む限り孤独ではない

宇宙の海に浮かぶ無数の世界。


その全てに亀裂が走っていた。


物語同士の境界が壊れ始めている。


運営ですら修復できない。


読者ですら止められない。


作者も。


編集者も。


そして。


接続者である藤井壮馬ですら。


「原因は何なんですか」


壮馬の問いに、


運営第一管理官・田中は答えた。


「孤独です」


全員が黙った。


「……孤独?」


田中は頷く。


巨大なモニターが映し出される。


そこにあったのは、


宇宙でも銀河でもない。


一つの小さな部屋だった。


机。


椅子。


古い本棚。


誰もいない。


いや。


正確には一人だけいた。


窓際に座る影。


その存在を見た瞬間。


諏訪貴信の顔色が変わった。


黒崎も息を呑む。


読者も沈黙する。


「まさか……」


諏訪が呟いた。


「まだいたのか」


壮馬が聞く。


「誰です?」


諏訪は答えた。


「最初の読者だ」


静寂。


宇宙が止まったようだった。


その存在は、


作者が生まれる前からいた。


編集者が生まれる前からいた。


運営が存在する前からいた。


ただ一人。


最初に物語を見つけた存在。


名前は。


最後の読者。


彼は物語を愛していた。


数え切れないほど。


誰よりも。


しかし。


ある日。


彼は全てを読んでしまった。


英雄譚も。


悲劇も。


喜劇も。


恋愛も。


SFも。


無数の結末を見届けた。


そして。


物語を読み尽くした。


「そんなことが……」


壮馬は呟く。


諏訪が頷く。


「どんな物語にも終わりはある」


「だが」


「彼は終わり続けることに耐えられなかった」


モニターの中。


最後の読者は静かに座っている。


本を閉じる。


一冊。


また一冊。


また一冊。


そして最後の一冊を閉じた。


それが始まりだった。


『もう終わりは見たくない』


その願いが。


無意識に。


全宇宙へ広がった。


終わらないために。


全ての物語を一つにする。


誰も別れないように。


誰も完結しないように。


誰も失われないように。


それが亀裂の正体だった。


敵意ではない。


憎しみでもない。


ただ。


終わりを恐れた孤独。


その時。


アーカイブが小さく笑った。


「俺と同じか」


誰も否定できなかった。


捨てられた物語。


終わりたくない読者。


どちらも同じだった。


存在した証が欲しかった。


その時。


藤井壮馬が立ち上がる。


「会いに行きます」


所長は目を閉じた。


「言うと思った」


黒崎はため息をつく。


「説得する気か」


「たぶん」


「勝算は?」


壮馬は少し考えた。


そして笑った。


「ありません」


全員。


「だろうな」


だが。


謎の立方体が光を放つ。


『ジョイントレベル3』


『発動条件達成』


『心の接続』


壮馬の右手に、


細い光の糸が現れる。


それは宇宙の果てへ伸びていた。


最後の読者へ。


諏訪は静かに言った。


「藤井壮馬」


「はい」


「これは戦いじゃない」


「分かってます」


「では何だ」


壮馬は遠くを見た。


そして答えた。


「話を聞きに行くだけです」


宇宙が静かになる。


作者も。


編集者も。


読者も。


運営も。


誰も言えなかった。


それが一番難しいことだと。


こうして。


接続者・藤井壮馬は、


宇宙の始まりから存在する孤独な読者、


最後の読者のもとへ向かう。


物語の終わりを決めるためではない。


終わりの先を見つけるために。

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