17話〜流れ、継がれ〜
チリン、チリン、
「リョウくんただいま」
「!?アユミちゃん……おかえり」
「出張ばかりでイヤになるね、やっとココに来られたよ」
「本部長さんだから大変なんだね?」
「本部長なんて名ばかりで、都合のいい教育係だよ」
「それじゃあ係長かぁ?」
「て、セーちゃん?」
「え!?そうだけど……」
「フケたね」
「あ”!?」
「ははは、ゴメンゴメン」
初めて会った時は20歳くらいだったから……そう考えるとセーちゃんも随分と?
「リョウくん……あ、マスターだったね?肉巻きを貰おうかね、おまかせで」
「はいよっアユミちゃん、それと……リョウくんでいいよ」
「そうかい?ならそうさせてもらおかね」
「で、今回はどれくらいの支店を回って来たの?」
「ん!?ああ、コレお土産ね、今回は4つばかしだね」
「ありがとう、じゃあまた4人のアユミジュニア支店長が誕生したんだ?」
「なによそれ、なんか引っかかるわね?」
「ははは、怖そう!?毎日呑んだくれて出社してそ〜」
「セーちゃん!」
「ごめん、ごめん」
へへっ、この人もフケたと言ったことへのお返しかい?
可愛いヤツめ。
「はいっ肉巻き、お待ちどうさまっ」
「うわぁ、コレコレ」
◆
『居酒屋なみのり』
〜season5・最終話〜
◆
「やっぱ美味しいねぇ、ココで食べる肉巻きは」
「そう、喜んでもらえて嬉しいよ」
「ん!?リョウくんまた腕を上げたね?」
「あ〜、アユミちゃんなんか企んでる顔したぁ」
えへっ、バレたか!?
「でもさ、リョウくんがココを継いでくれて助かったよ」
「そうだね、俺も横須賀に帰ってくる時の楽しみだからね」
「そうかセーイチローもこっちに出店すればいいのに」
「いやぁ、もうこれ以上増やすのは」
「今度また、セーちゃんのお店にも行こうかね」
「来て来て、アユミちゃんなら割り増しにしとくからさ」
「そう、ありがと……っておいっ!」
はははは、アンタもだんだんお父さんに似て来たね?
悪いところがさっ!笑
「でも今もナミちゃんの言葉を思い出すねぇ」
「え!?ああ……」
「店のことは気にせず自分の道を進みなさいって、なかなか言えないよ」
「そう……だね」
「でもリョウくんもココを選んだしね」
「当たり前さぁ、選ばなかったら張り倒していたよ」
「えっ!?」
「あ、アユミちゃん……」
「え!?ああ……心の声、心の声ね」
「どっちにしても……怖いっ」
「リョウくんはいいよね、ナミさんの最後の言葉はそれだからさ」
「どうしたのセーちゃん?」
「俺んとこなんてさ、『バーカ、バーカ、呪ってやるっ』って言って舌出してたからねアイツ」
「ははは、病床でかい?トシくんらしいね」
「らしいねじゃないよ、もう死ぬかも?って時にそんなこと言う?」
「なんだか気恥ずかしかったんじゃないのかね?あの人は」
「そうだよセーイチロー、その血からは逃げられないんだし——ドンマイっ」
「うげっ、なぁ〜ルイ、ルイにも似た血が流れてるからなぁ〜気をつけろよ」
「ははは、セーちゃんよっぽど遣る瀬無いんだね」
御愁傷様……
「まあ、でもココを継いで良かったよ、みんなの笑顔が見られてさ」
「そうだね、私たちの笑顔を作る場所——それがなみのりだからね」
「ああ」
「そうだ、ルイもちゃんと継ぐんだよぉ、私はルイの代になっても毎日来るからね」
「うん、ボクもパパみたいになるよっアユミさん」
「ちゃんな!ルイ、何度も言わせんな」
「アユミちゃん……怖いっ」
「あ!?ルイくんごめ〜ん、お菓子でも買いに行こうかね?」
「もうそんな歳じゃないよぉ、オバ……」
「てっめーっ」
「ははは、ごめんなさ〜いっ、多分ホントに」
「ルイの方だったか?バカトシが乗り移ったのは!?」
「アユミちゃん……ナミさん男ver.が乗り移ってる」
え!?
私もとうとうなりふり構わずの歳ってことかね?
ん!?
アレっ、ナミちゃん……ゴメン。
「どしたの?上向いて拝んで」
「え、いやぁ何かぁ空の方から怒られているような……」
「ははは、変な人」
「もう、セーちゃんは!?ってそういえば本物の変な人遅いね?」
「ああ、遅いね確かに」
「こっちのも本物だけどね」
「えっ、わ、私?もぉ〜リョウくんっ」
「ごめん、ごめん、肉巻きの新作あげるから許して〜」
「なら許すっ!ぜんっぜんっ」
チリン、チリン、
「こんばんわ〜」
「ああ!?モエちゃんっ」
「ルイくん〜、おはよ〜」
「僕寝てなかったよ」
「ははは、つい小さい時のクセで」
小さい時のって……ルイだってもう、
やっぱ変だねモエちゃんはさっ。
「さ〜て肉巻きパーティ開始っ」
って、ん!?
「リョウくんなんですか、こんなにたくさんのグラスを……」
「え、ああ、あの人たちも……」
リョウくん。
「そうだね、きっとこんな話をしていたから呑みに来てるよね」
セーちゃんまで。
「そ〜ですね、きっとタダシさんもココにいますよ」
モエちゃん……強くなったね。
よーし、それじゃあ!
「乾杯っ」
わっははははは〜
「なんだかホントにあの人たちとまた呑めてる気がして来たよ」
「ホントですねぇアユミちゃん」
「ね〜、予定を切り上げて帰って来てホントに良かったよ」
本当はあと3支店回る予定だったからねぇ。
汗……
「おっ、そうだ赤ワインも置いてやろうっと」
「リョウくん優しいね、赤ら顔の店長の分だね?」
「なら泡盛も置いてやろうよ」
「ああ、それはジューモンさんのだぁ!?」
ははは、ホントにみんなに囲まれた日々を思い出すよ。
「ん!?なに?」
「どしたのアユミちゃん?」
「何か今、腰のあたりを触られたような……」
「え!?俺じゃないよ」
わかってるよセーちゃん。
「ん!?何だろ、ホントに誰か来たのかね」
「触るってことはあの人だぁ」
やっぱり?
「じゃあみんなで一緒に」
「せーのっ」
——店長だぁ!
はははははっ
完




