13話〜ネット違い〜
チリン、チリン、
「あ、ノリちゃん出てぇ」
「はいよ、ナミ」
ピッピ、
「はい」
「ひとりなんだけど」
「ああ……ちょっと待ってください」
「ナミ〜、この間の爺さんなんだけどどうする?」
「え!?もう来ないって言ってたのに……満席って言っちゃう?」
「そうだね、また食べ物散らかされても他のお客さんのね」
「うん、お願いね」
「すみません、ただいま満席でして」
「ちっ、じゃあいいや」
プツッ、
「ふう……」
「今の人がこの間言ってた人?」
「そうなんだよアユミ、あの人酔うと散らかすんだよ」
「ふ〜ん、てゆ〜か装置のチャイムは昔風のベルの音なのね」
「ああ、雰囲気あるだろ」
チリン、チリン、
「お!?また来た、今度は」
「こんちわ〜」
「おお、シンヤかあ、久しぶりだな」
「あ、はい、入れますか?」
「そうだな、お前はどうしようか?ナミ〜」
「おいっ、どうしようかって何だよ」
「え!?分かったよ、ほらポチッとな」
ピッ、
ウィーン、
シュシュシュ、
プシュ〜、
「いらっしゃい、シンヤ」
「あ、はい、ノリさん」
「久しぶりだな」
「あ、はい、ちょっと来ない間に転送装置を新しくしたんですか?」
「お!?気づいてくれたあ、どうよ?」
「あ、はい、なんかモワモワ感がなくてすぅ〜って感じでいいっすね」
「そうだろ、つ〜か今日はもう4回も言ってるけどいいのか?」
「え、まだ一杯も呑んでないのに……ノリさんはやっぱ俺のあ、はいを奪う人なんだね」
「相変わらず変なカウントしているのねシンヤくん」
「あ、は……アユミさん、危ない5回目になるとこだった」
「ちっ」
「はい、瓶ね」
「あと、やきとりのタレをおまかせで」
「はいよ、本数もおまかせね〜」
「いや、5本」
「10本にしてアユミと食べればいいじゃん」
「え!?」
「何……シンヤくん、いやそうな顔して」
「いえ、そうじゃないけど、アユミさんの方が稼いでるし、お姉さんだし」
「ちゃんな!シンヤ、何回も言わせんな」
「あははは、怖いっ」
「んで、やっぱ気になるんだけど、あの転送装置はどうしたんですか?最新型なんて高いでしょうし」
「あ、ああ、アレはアユミのコネでな」
「え!?アユミさんの……ちゃん」
「ああ、フィンランド製らしいぞ」
「フィンランド?本場だぁ」
「まあ、詳しいことはアユミに聞いてくれ」
「あ、はい……」
(また持ってかれたぁ)
「アユミちゃんの会社ってフィンランドにも支社があるんすか?」
「ええ、それでこの間ちょっと行った時にね」
「ちょっとって……それで!?アユミちゃんってすごい人なの?」
「いやあねぇシンヤくん、私は顔見知りにもやきとりさえもらえない程度の女よ」
「え、あ、いや……今来ますから、一緒に食べてください」
「はいお待ち〜、シンヤ態度変えんなよな〜」
「いやですねノリさん、いやノリちゃん」
「お前はいつからビール1本で酔う男になったんだ」
「酔ってなんかいないわ」
「それお前、3000年以上も前の歌だろ」
「ご名答〜、よく知ってますね」
「お前がなっ」
「う〜ん、美味しい」
「あ!?アユミちゃん俺のやきとり」
「え!?くれるって」
「そうなんすけど、ニンニクももが俺の1番の」
「ちいせ〜なあシンヤ、転送装置の話聞いたらそんなのどうでも良くなるぞ」
「はあ〜、そうなんすかノリさん」
「そうなんすかって、なあアユミ」
「ふふふ、もう1本どころか、ボンポチも食べてくださいって私に言うことになるわよ」
「ええ!?その根拠とは……」
「良くぞ聞いてくれました、この装置は素粒子転送型装置ではないのよ、シンヤくん」
「ええ!?——じゃあ」
「聞いて失神しないでよ」
「ゴクリっ」
「え!?モエちゃんいたの」
「ええ、ひど〜い、さっきから居たじゃないですかあ」
「そうなのね」
「で、素粒子じゃないとなると……まさか!?」
「シンヤくんは分かっているのね」
「え、いや……でも」
「ええ〜何ですかぁ、私は分からないです〜」
「モエ、お前は話に入るなよ〜、文字数が増えるだろ」
「文字……すう!?」
「足から先に再構築しているのは分かるんですけど、その他は見当がつかないなあ」
「そこまで分かったら、答えはもう少しよ」
「そうなん……あ!?まさか脳を最後に組み立てるとか」
「そうっ、それがみんな思い付かないのよ〜、シンヤくんすごいからやきとりもう1本もらうわよ」
「あ、はい、ってくれるじゃないの〜」
「へ〜、でも脳を最後にしたら素粒子転移のノイズがなんたらとか言ってなかったっけ?」
「だからよノリさん、フィンランドの凄さは」
「ええ、聞きたい聞きたいアユミちゃん」
「また来たのかよモエ〜」
「私だって興味ありますよ〜、ベルギーからの転移だと、ぶぉ〜おおんってノイズがスゴいんですから」
「そうか、赤道を跨がないんだったな」
「そうなんですよノリさん、800年も前に赤道付近の磁場の捩れが整合性エラーのキャンセラーになっていると解明されたのに」
「だからベルギーからだと遠距離ノイズを消せないと」
「うわ〜考えるだけでお腹の辺りがゾワゾワっとしてくる」
「な、古代遺跡にあったジェットコースターってのがそんな感覚に襲われるらしいよ」
「うわわ、乗りたくない」
「女の人は結構好きだったみたいよ」
「わあ、私は乗ってみたい〜」
「お前今、ゾワゾワがいやって」
「ゾワゾワの種類によっては別腹です」
「ねえ、そろそろ答えを教えてくださいよぉ」
「いいわよシンヤくん、ミックスピザでどうかしら?」
「また奢るんすかぁ?年収は俺の倍近くありますよね」
「シンヤくん、居酒屋さんで地位とか年収の話なんてタブーよ」
「ええ、いつもアンタが……」
「今日は違うの、今日は」
「分かりましたよ〜、ナミさんピザいいっすか」
「はいよ、シンヤくん、任せといて」
「ワインは自腹でお願いしますよぉ」
「分かったわよシンヤくん」
「で、早く言えよアユミ、長引かせるとまたシンヤにたかるんだろ」
「ふ〜ん、ノリさんのハイボールはいらないんだぁ」
「あ、はい、欲しいです」
「ってノリさん、あ、はい、そのものを取らないでくださいよお」
「ははは、シンヤが移っちまったな」
「じゃ、そろそろ答えを言うと……」
「やっとか」
「ざわっざわ」
「モエ、煩いっ」
「ええ、ナミさんまで〜」
「つ〜か、ナミは興味ないだろ」
「ノリも煩いっ」
「うわぁ、男が出た」
「じゃあ、ナミさんが怒る前に言いますよ、これはなんと——量子転送型装置なのですっ」
「ええ!?ウソだろ?」
「いくら何でも量子って」
「でも、逆に量子ならあのノイズのなさは納得かも」
「やっぱシンヤくんは分かる人ね」
「え、へへ」
「そこは、あ、はい、だろシンヤ」
「ええ!?アユミちゃん……」
「しかし、量子なんてそこまで」
「ね、西暦5079年の今でも信じられないわよね」
「つい30年前のジュネーブ会議で否定されてたのに」
「30年なんて化石ですよ化石」
「ふ〜ん、32歳のアユミはじゃあとっくに化石ってことか」
「ノリ〜て〜め〜」
「うわっ!?分かったよぉ、ごめんアユミっ」
「あ〜、そう言うことか、量子なら精密設計図化できるから、脳を最後に組み立てられるんだ」
「そっ、シンヤくんやっぱ天才!それが本場フィンランドでも中々辿りつけなかったのよ」
「でもさ、フィンランドは通信系はもう何千年も最先端てのは分かるが、何でそこまで」
「良くぞ聞いてくれましたノリさん、そこを言いたかったのよ、何でフィンランドかってことを」
「何か理由があるんですかアユミちゃん」
「いい、モエちゃん、フィンランドは寒いのよ極寒よ」
「それが」
「あ!?そうか極寒とサウナ間の転送」
「冴えすぎじゃないのシンヤくん、私が自慢げに言おうとしたのに」
「ごめんなさいアユミちゃん」
「いいわよ、あってるから」
「そんなことで」
「そんなって地元の人には大変なことよ」
「そうか……俺たちは楽しようとしているが命に関わる人たちもいると」
「ノリさんもなんか今日はまともね」
「なんだよアユミ、俺をバカにしてんな」
「ノリちゃん、ちょっと」
「え、うんうん、ああ」
「なになに?ノリさんたち、私の功績を讃えたいならいとわないわよ」
「ん?コレをセットして座標をZ22X923の……Yの……」
「ノリさん、ピザをどこへ送るの、出前?」
「いや、お前に届けるためだよ」
「へ!?」
ピコピコ、
ギューん、
「ノリ……さん」
「シンヤちょっと待ってな」
「あちっ、うわっべっべっ」
「アユミちゃん——」
「ちょっ、いたっ、何コレ!?」
「ははは、ピザの転送お待ち」
「って、何で頭に被されたの?」
「調べたらグルテンは量子転送に向かないんだって」
「ええ、何で〜」
「ああ、グルテンの網目が誤作動を生むのか?」
「そう、量子認識レンズが誤作動するんだってさ」
「それでナミちゃんたち、さっき」
「はは、得意になってたからな」
「もう〜、次から新しいの出ても教えてあげないっ、バカ」
「あっアユミが転送装置で食い逃げした」
完




