8話〜帽子の中身は〜
「う〜ん……」
「どした?アサミぃ」
「ん……ふ〜ん」
「アサミ〜、お〜いっ」
「あ!?ノリさんいたの?」
「いたのって、ココは俺の店だ」
「そっ、ふ〜ん」
「こ、このヤロー」
アサミちゃん……またあの人見てるのかぁ!?
こんばんは、ナミです。
乾杯!
っと。
ナレーションだけは常識人ぽくね!
「ちょっと、ちょっとノリちゃん」
「なんだよナミ?」
「アサミちゃん、カウンターのあの人を」
「え!?ああ……」
気づいたかなノリちゃん。
「前にも来たなあ、日本酒呑む人」
「そう、思い出したね」
「だってあん時は阪神の帽子で」
「そうそう、それが気になってアサミちゃんは」
「え!?アイツは帽子を気にしていたの?」
「そうでしょ、そりゃあ」
だって阪神の帽子ってこの辺ではあんまり見ないから……
「ナミたちって愛知じゃん、やっぱ中日?」
「う〜ん、ウチは親が巨人だったから、でも中日も阪神も応援してたかな」
「そうなんだ、どっちにしても俺たち野球知らないしね」
「そうね、しかしアサミちゃんはそんなに気になるのかね?」
「ちょっと聞いてくるよ」
「うん」
「アサミぃ、またあの人見てんのか、シルバー好きだったんだ?」
「は!?何それ、ロマンスグレーよ」
どっちも今や……
「って、そうじゃなくてマサくんに余計なこと言わないでよ」
「ああ、そう言えばマサユキもこの間あの人見て変な顔してたな?」
「人のダンナを変なって」
「お前たち、結婚してないだろ?」
「いいのよ、こうゆーのはその気にさせたモン勝ちなんだから」
「で、そうやって呼ぶようにしていると」
「そうよ、普段はダーリンだけどね」
やっぱ……古い感じが!?
「ふ〜ん」
「まだやってんのかよ?」
「え、そうなんだけどね、ふ〜む」
「やたらと声かけに行くなよ、お前はすぐタカるから」
「なによぉ失礼しちゃうわね、売上に貢献し」
「自分の金でしてくれよ」
「むかっ!」
ココにもモエ病がいた。
チリン、チリン、
「おうっ!ジューモンさん、いらっしゃい」
「こんばんは〜」
「私のお出迎えと随分違うわね?」
「当たり前だろ、お前は」
「分かった、言わないでいいから!ね、ね、お願い」
「分かったよ、お前もツラいのな」
「そうよお」
あ、顔作った。
アサミ〜。
「で、ジューモンさんは……こっち座る?」
「え、ああ……どこでも」
「ちょっ、いつもココ座ってんのに、私がいるから?」
「そ、お前にジューモンさんを近づけると」
「な!?あったまくんわねっ、ホント」
そんな騒ぎに、
「ん?」
と、振り向くカウンターの老人。
「あ!?」
え?
「アレ、丹下さん?」
「おお、やっぱりジューモンくんかあ」
「はは、お久しぶりです、何年振りですかね」
「そうだなあ、かれこれ……でも、こんなとこで会うとはなぁ」
ふ〜ん、知り合いなんだあ?
じゃあ……
「ねぇ、ねっ」
「ん、どしたのアサミさん?」
「アンタ知り合いなのアレ」
アレって……人の知人を!?
「はい、前のご近所さんで、お酒がホントお強くて」
「ふ〜ん」
何、そのやる気のない返事は?
あんなにガン見してたのに。
「でさあ、丹下ってんだあの人」
「それがなにか?」
ん!?
「俺もそっち行っていいか?」
「どうぞどうぞ、一緒に呑みましょうよ!その方が楽しい」
「いつも1人で、話し相手がいなくてな」
「え、そうだったの?言ってくれれば私ならいつでも」
「ん!?そうか悪いねぇ、あ、でも」
「でも何、私じゃ不満て?」
「え!?いやいや、そうじゃなくてな」
なんか言い出しづらそうな?
「それよりアンタさあ」
「アサミぃ、もっと柔らかくいけよ」
「え、ああ、ごめんノリさん」
「いや、俺にじゃなくてさ」
「ま、とりあえず乾杯しますか?」
「そうだね、私たちも一緒に」
「そだね、今日は丹下さんとジューモンさんだけだからね」
「私わぁ!」
「は?」
「お前はやっぱ……」
「ごめんなさい、悪い女なの許して」
「どうしたんですか?アサミさん」
「どうせマサユキに怒られたんだろ」
「マサ……やっぱりかあ」
「マサユキとも知り合いで?」
「マサユキってホームセンターの」
「え!?アンタまさか……」
って、アサミちゃん……
「やっぱ、アレは別かあ!?」
なんだ、勘違いか。
「ああ、一昨年、ホームセンターの嘱託の期限切れで」
「あ!?」
煩っ、声大きすぎアサミ!
「アンタ……いや、あなた様は」
「なんだ、また変なこと言い出してアニメの見過ぎが?」
「丹下さんは仙人とかじゃないですよ」
「いや、そうじゃないわよ外野は引っ込んでて」
野球帽だけに?
「もしかして〜丹下……さん?」
「まあ、さっきからそう呼ばれているが?」
「え、あははは〜」
「そう言えばこの間も会ったな、ココで」
「え!?そ、そうかしら?おほほほ」
「気持ちわりーなお前」
「ちょっ何よノリさん」
「お前はどうせアレだろ、今日はなんで阪急の帽子なの?とか考えてたんだろ?」
「え!?なんで……」
分かるわよ、それは!
「ああ、コレか……」
あら、急にしみじみとして。
「この間……妻に先立たれてな、それで片付けをしてたら昔に子供たちに買った帽子がな」
ああ、それでぇ。
「家族思いのいい方、それに帽子のセンスもバツグン」
「何言ってんだアサミぃ、お前」
「や、やめてノリさん!今いいとこなんだから」
お前だけな?
アサミ。
「それでか?この間からチョロチョロと俺を見て何か言ってるなとは」
「す、すみません丹下さん、このことはマサくんには」
「いや、丹下さんマサユキに伝えた方がいいですよ」
「そう……だね」
ノリちゃん、あおっちゃってまたあ。
「なっんでも言うこと聞きます、だからお願いです」
「う〜ん」
「でもなあ、アサミじゃあ体も……」
「ノリぃ!」
「いや、俺じゃなくて」
「え!?俺?いや……」
「分かりました、マサくんのためです」
「いや、だから俺は……やめて」
「な!?」
アサミちゃん……チ〜ンだね。
完




