4話〜赤ワイン殺人事件〜
通報を受けた。
1軒の居酒屋で人が殺されたと。
そしてこの俺が駆けつけている。
そんな訳さ。
俺は衣笠栄署の刑事、トネリだ。
あ、やり直し、
衣笠栄署のデカさっ——腕利のな!
決まったところで、早速現場に到着っと。
チリン、チリン、
「いらっしゃ……ああ!?」
(ん!?殺人のあった店でいらっしゃいとは?)
「栄署の刑事のトネリです」
「ああ……ホントに来たんだ」
なんだこの男の感じは……
慣れっこなのか?
それとも——
「で、害者は」
「あ〜ぁ、コレです」
コレ?
「ほう、腹をひと突きか……」
ふむふむ、出血死……または外傷性ショック死か……
「刺された時の様子は?逃亡したものはいるのか?」
「はあ、店からは誰も出ていないけど……」
「そうか——となると、この中に犯人が」
「ヒソヒソ」
「なんだ、何か知っているのか?」
「いや、当たり前のことをいちいち口に出されても……と」
なぁ〜にぃ、
素人の貴様らが緊張感の山場の作り方を知りもしないで!
「ああ、営業の邪魔になるんで早めにしてくれませんか」
は!?
おい、貴様は女将か?
なんなんだ人が1人死んでんだぞ。
「ああ、ならなんか呑みもんとか頼んでくれない?」
「え!?いや、公務中なのでアルコールは……」
「アンタさぁ、ノンアルでもいいじゃん頼んじゃいなさいヨォ」
な、なんだこの中年女は!?
なんか……好み。
「じゃ、じゃあコーラでも貰おうかな?」
「はい、コーラね、食べ物は?」
「は!?ワンオーダー制?」
「いや、いらないのならいいけど……頼んだ方がイメージいいかな?」
「ああ、なら……え〜と、チヂミを」
「はいよっ、ナミぃチヂミね〜」
「はいよぉ〜ノリちゃん」
なんなんだ、なんでこんなにも軽いんだ!?
う〜ん、ということはこの男は相当な恨みを買っていたか?
店にとって出禁レベルの常連なのか!?
「はい、コーラね」
「あぁ、ありがと……ゴクっゴクっ——ハアおかわりっ」
「はいよっ」
って……ちっがぁ〜うっ!
アメリカ映画好きのせいなのか、コーラ呑むと、つい……
しかし、こんな大男の懐中に入ってひと突きとは——
よほどの手練れか、あるいは……気の知れた仲ということに。
ふ〜ん、どいつもしれ〜とした顔で呑んでやがって。
「店主」
「はい、なんですか」
な、面倒臭そうにしやがって、お前の店の事件だろ?
「刺された瞬間を見たものは?」
「いないんじゃない?いても黙秘とか」
は!?
「犯人でもないのに?」
「ノリちゃ〜ん、ウーロンねぇ」
「はいよっ」
「あ!?ちょ、聞き込み……」
なんか調子が狂うな。
「で、まだぁ?」
何が?
「霊柩車か何か来ないの?」
「は!?いやまずは鑑識が来て現場検証を」
「いや、そういうのいいから、早くして、掃除もしたいし」
まあ……そうだよね、血は拭きたいよね。
じゃなくて……
「しかしナイフが柄の部分まで深々と……相当な恨みなのか」
「はい、チヂミね」
「おお、うまそっ」
「なんか呑んじゃえば?」
「そうだなぁ、瓶もらおうかな?」
「はいよっ」
「うまいなコレっ」
ほふっほふっ、
「はいビールねぇ」
「ゴクっゴクっ、うまいっ!う〜んまいっ」
あー?やべっ!?
つい——
「あ、そうだ!?俺は瓶としか言ってないよ」
「お前……クズだな?」
「え〜、栄署きっての腕利きにぃクズたとぉ」
ま、自業自得なんだが……
「しかし、うまい」
ふぅ〜、鑑識が来るまで呑んでるか。
どうせコイツらなぁーんも喋らんし。
「おかわりいる?」
「あ、じゃあレモンサワーを……あと、唐揚げいいっすか?」
「はいよ」
「あの人、仕事中よね?」
なんだ、またあの中年女か……
「んっ、うん、アンタさぁいい呑みっぷりねぇ」
「は、そうですかありがとうございます」
「私ねぇ、口は硬い方なのよ」
「はあ」
「この意味分かる?」
「え、いやぁ……歳だからとか」
ビシッ、
「若い子は唇が柔らかいとかそんなの妄想よっ、殺されたいの?」
「あ、いや……殺人の後が私の出番なので〜」
「だから〜、キュッよきゅっ」
「あ〜ぁ、操作情報を流せと……」
「あったま悪いわねぇ、コレよコレっ」
なんだその手の動きは……
あ〜奢れと?
しかし何で?
やべっ、そうかぁ……
「あ!?勤務中だった——な、何がいいですか?」
「うーん、私はウーロン、マサくんはレモンサワー、アユミちゃんはぁ?」
「私はビールっ」
「で、ノリさんとナミちゃんは?」
「な、何でそんなにたくさん?」
刑事にたかるとはいい度胸だな!
「なぁ、俺もワインちょうだいよ」
うわっ!?
生き返ったぁ!
「やっと起きたよ店長」
え〜、どーゆーこと?
「あ、ナミちゃん……俺ここで寝てた?」
「そうよぉワインもこぼしちゃって」
「あ、ホントだコレ俺がこぼしたの?」
「そうよ〜、通販の引っ込むナイフまで刺してさっ」
引っ込む〜!?
「ああ、思い出した、アユミちゃんに刺されたんだ」
「えへへっ」
「うぉ〜、お前ら刑事を舐め腐って」
「うわっ、横須賀1の汚点デカが怒ったあ」
「わ、ははははっ」
貴様らっ!
こうなったら冤罪だろうとなんだろうと……
「こいっお前を殺人容疑で逮捕する」
「え!?ちょっ」
ガチャっ、
「なんでェ〜!」
ピーポーピーポー、
「あ〜あ、アユミちゃん……捕まったね」
「もう……前科持ちだね」
完




