3話〜来る来ない〜
「あ〜、沁みるわぁ」
「ん!?アサミぃ酒が心にでも沁みたか?」
「違うわよノリさん」
「ああ、呑んだ翌朝とか味噌汁が沁みますよね〜」
「そうだな、アレは沁みるなぁホント」
「ススムくんも分かってるわね」
「はいアサミさん」
て、ススムはアサミさんとそんなに仲良かったっけ?
あ!?お疲れ様です。
私はイズ、イズミといいます。お久しぶりです。
まずは乾杯っと……
「それよりススムは私のことをもっと分かってよぉ」
「え〜イズのことはよく分かってるよ俺」
「そうよそうよ、そんなんじゃ逃げられちゃうわよ」
「はあ……」
「なんだ気のない返事して、もう飽きたのか?」
は!?
ちょっ——
変なこと言わないでよノリさん!
「分かります?マスター」
コラっススム、ここで捨てられる展開はやめてよぉ!?
「仕事終わって飯食い行ってって毎日だからなんか……」
あ〜、そっち?
ホッ……
「だから、やっぱココに来た方が楽しいっすよ」
え〜!?
「いや……でもほら、ここ変な人が多いし」
「イズちゃ〜ん、あなたはそんな子だったっけ?」
「あ!?違うのナミちゃん、ホントに違うの」
あ〜、つい滑らせちゃったぁ。
「はあ〜、沁みるわぁ」
「アサミさっきから何が沁みてんだ?」
「ああ、ノリさんコレよコレ」
「ああ、野菜ジュースかぁ」
「そ、なんか身体の芯まで沁み込むっていうか、身体をほぐしてくれるってゆーか」
「おお、わかる気がするな。野菜が健康にしてくれる〜、みたいななっ」
「そうそう、あ〜沁みるわぁ」
この人やっぱ……バ○なの?
「いや、マスターそこっすか?いいんすか」
「何がぁススム、野菜ジュースは身体にいいに決まってるだろ?」
「いや……だから」
あ!?本物だ!
この人、明らかなバ○だ。
「ノリちゃん、だからそこじゃないでしょ?」
「どしたぁ、ナミ」
「はぁ、アンタはココのなんなの?」
「え〜、あの子のなんなのさ、みたいな?」
ナミさん心中お察しします。
「持ち込みよっ」
「あ!?アサミ、てめー!?俺の目の前で堂々と……」
「沁みるわぁ」
「俺も欲しくなってきたな」
「でしょ?」
はあ〜、コリャダメだ。
いや、ダメだコリャ!!
「ノリちゃんちょっと……」
「どした?」
「ヒソヒソ」
「おお!?」
また悪巧み?
「アサミぃ今回だけは許してやるよ。お前のおかげで新しいメニューができそうだからな」
「ホント?なら私に何かご馳走してよ」
は!?図々しいにも程が……
「いいよ、ならお前の嫌いな野菜類を教えて」
「そうねぇ、ブロッコリーとか」
「は!?アレが嫌いなのか?」
「う〜ん、なんか子供の頃パセリのオバケみたいな感じがして〜、そっから食わず嫌いみたいな」
ガキを引きずっているのか、それでアンタは今でも……
「ふ〜ん、他には?」
「あとは、モロヘイヤ」
「ナミ〜、モロヘイヤね」
「はいよ〜」
「それと、生の玉ねぎと……」
「玉ねぎ一丁っ」
「はいよ〜」
「それから、セロリと……」
「セロリ入りましたっ」
「はいよっ」
なんか……ズレてない?
「でもセロリなんてお前だったらマヨネーズなしでかぶりつきそうだがな」
「そうなのよぉ、でも嫌いなの」
「そうなのよぉって、アサミさん自分でキャラ把握しすぎっしょ?」
「は!?小馬鹿にしたわねガキがぁ」
ススム〜、これ以上この人と関わらないで〜。
「それから?」
「あとは、おろしニンニクとか?イタリアンとか中華のニンニクは大好きだけど」
「そうなのか、香ばしさは好きだけど?みたいな」
「そうそう、焼肉とかラーメンに入れるとそのあとチューできないじゃん?」
「はあ?お前とチューする奴なんていないだろ?」
「マサくんがいんじゃないのさ」
「ああ、あの生贄かぁ」
「ははは、かわいそっ」
「ちょっ、アンタさっきからチョイチョイ絡んでくるわねぇ?」
「ああ、ごめんなさいアサミさん、ススムに悪気はないんですぅ」
「ちっ、悪気がなきゃいいってもんでも……」
「ナミ〜、すりおろしなぁ」
「はいよ〜、ついでに生姜もいっとく?」
「おお、すりおろしワンペアなっ」
やっぱ、何か企んでるよこの人たち。
「そういえば、今日は1人っすかアサミさん」
「悪い?」
「マサさんに逃げられたんすか?まぁアサミさんなら……」
「ふ〜ん、久しぶりに会って随分なこと言ってくれるわねぇ」
「ごめんなさい、ホントに……」
「すみませ〜ん、僕ガキなんで〜」
「ふ〜ん、じゃあ大人の女というものをじっくり教えてあげようかしら」
「ひゃっ、結構です、あ〜!?イズがもうすぐそうなるんで」
「そうって何?ススム!私がああなるとでも言いたいの?」
まったく——
「イズちゃん……ちょぉとオバさんとお話ししましょうか?」
「ひゃあ!?ごめんなさい、つい……悪気はな」
「悪気なく本音をねぇ?」
「やだなあもう、私がアサミさんのこと尊敬してるの知ってるじゃないですかぁ」
「ふ〜ん、そんな話1度たりと聞いたことないわよ」
「はい、できたぞ、アサミ専用野菜ジュース」
「お待ちどうさま、アサミちゃん」
「うわ〜ナミちゃんありがとう……って」
どうしたの?
「うわっ、沁みるっ」
「うまいんすかっ?」
「ちがっ、バカ……目に沁みんのよぉ」
涙流して……
「ゴホッ、むせたし……目ぇ痛ぁ」
「はははは、ほら遠慮せずに呑めよ」
「ちょっ、まさか嫌いなものばかり入れたの?」
「ピンポンっピンポンピンポ〜ン」
ナミさん楽しそぉ。
「わ、私を使って実験、それともただの嫌がらせ?」
「何勝手なこと言ってんのよぉ〜、持ち込みしといて」
「ナミちゃん、さっきはいいって」
「だから代わりに、コレ飲んでって」
「ぬぐぐぐぐ〜」
あ、アサミさん、破裂しそうな……フグ?
「ちっきしょ〜、酷い目に遭わせやがってぇ、2度と来るかぁこんな店」
チリン、チリン、
あ!?出てっちゃった。
「いいんすか?マスター」
「ん!?ああ、すぐ戻ってくるよアイツは」
ふ〜ん……そうなんだぁ。
チリン、チリン、
「おお、マサユキ」
「お疲れ様ですノリさん」
「今日は1人な、1人だよな?」
「え!?はは〜、またなんか……」
「もし背中に取り憑いているヤツをお祓いするならコレ呑ませてみるんだな」
「分かりましたっ!ノリさん」
「ちょっ、裏切る……うべっ、ゴクっグハァ〜——まっずぅ!」
「ははははっ」
ははははは、って悪いですよみなさんっ!
と、私……汗
「くっそぉ、やっぱ2度と来るか!こんな店……」
「どした?ホントにやばい系か?」
「あらっ!?なんだか元気になってきちゃった」
へ!?もう?
「へっへっへー私を陥れた罪で——朝まで寝かさないわよっ」
「ええ!?それだけは勘弁をっ」
「はっはははー」
「頑張れっマサユキ」
あ、マサさん、げっそりして……ミイラみたい?
「こんな店2度と来るもんかぁ」
チリン、チリン、
「あ!?逃げられた……」
チャンチャン




