6話 〜呼び方〜
「そう言えば最近トシちゃんみないね?」
「あ!?そうだね、そう言えば……」
「まだ調子悪いのかね?」
「はい、店長ハラミね。どっかフラついてんじゃないの?アイツは」
「お、ナミちゃんありがと。へへ、かもね?」
まあ、多分そんなもんでしょ、あの人は?
「セーイチローはなんか食べる?」
「じゃあ唐揚げを」
「はいよ」
「そうか、お兄ちゃんはセーちゃんだったか?どっかで会ったな?」
ここだよ、店長!
でもとりあえずは濁しとくか何となく。
「え!?まあ……」
「すご〜く、やる気のない返事。その感じはまさか——トシちゃんの息子っちか?」
「え!?そうですけど」
「やっぱりかぁ?」
「ええ、トシさんの息子さんだったんですね?」
「はい、そうです。店長とは何度も会ってるんですけど……」
「はいセーイチロー、唐揚げね。この人が覚えているわけないじゃない?」
「煩いオバっ……」
「あ〜、店長また言おうとしたぁ?」
「いや、まだ途中までだからセーフだよ」
ま、言ったも同然だとは思うけどね?
で、俺はセーイチロー24歳。
そう……アレの息子です。
「うわぁ唐揚げ美味しそうだね?」
「よかったらどうぞ」
「ええ、いいんですかぁ?じゃあ1つ……ウマっ!」
あと何か食べたいけど何にしようかな?
「セーちゃん、お返しに何か……ポテトとかは食べる?」
「え、いや大丈夫ですよ?」
「いや、いいじゃない、あれば食べるでしょ?ノリさん、ポテトと串なしの焼き鳥をタレで」
「はいよっ、喜んでっ」
「ふふふ、今更スタイル変えたんだ?」
「いや、言ってみただけだよ?」
「そんで、セーちゃんはトシちゃんがお父ちゃんで苦労したと?」
そんなこと店長には何も言ってないけど、まぁそうだね?
「おっさん呼ばわりされてなぁ?」
「何それ?」
「え?2歳の時におっさんて呼ばれてたんですよ。出掛けていても大声でおっさんて呼んでくるし」
「へ?2歳の息子を捕まえて?」
「はい……」
「10歳て言わされるしなぁ?」
それも覚えているんだナミちゃん?
「ええ、何それ?」
「はぁ、幾つ?とか聞かれるじゃないですか?」
「おぉ、2つとか指やりながら答えるヤツな?」
「はい、それを両手をパーにして、10歳て言わされてたんですよ?」
「2歳なのに?」
「はい」
「何の目的で?」
「いや、ただの悪ふざけで……」
「はぁ?」
「お風呂入ってる時とかに仕込まれたんですよ」
「可哀想になぁ?じゅっさ〜いて言わされてたもんなぁ、あれはあれで可愛かったけどさ」
まぁ、別になんか被害があった訳じゃないけど……
「聞いて来た人たちはみんな、は?て顔して驚いてたのを何か憶えてますけど」
「そうなんだ、まぁそんな小さい子が10歳て言えば驚くか?そんでトシちゃんはそれ見て笑ってるんだ?」
「いや、そういう時は大概いないんで、母が恥ずかしそうに2歳て言ってたようです」
「仕込むだけ仕込んで、それで満足と?」
「どうしようもねぇな、アイツはやっぱ」
確かに。
チリン、チリン、
「おお、遅かったね?」
「あ、うん。セーイチローはもういたんだ?」
「うん、今日は休みだったから」
「ほら、おっさん、セーちゃん居るよ?」
は?
「リョウくんも息子におっさんて言うんだ?」
「え、はは何か……」
「まったく移るもんかね?」
「セーイチロー!」
「はは、セーちゃんでしょ?ルイ。久しぶり〜」
「ナミさん、セーイチロー、ノリぴー」
「ははは、そうやって躾けてんだ?」
「いや、そうじゃないけど……」
可愛ければ何でもいいけどね?
チリン、チリン、
「あ、アユミちゃんいらっしゃいっ」
「こんばんは〜、今日は残業だから来れないかと諦めていたんですけど、間に合った」
「え、アユミさんこんな時間まで仕事だったんだ?」
「そうなのよリョウくん。あと……アユミちゃんな!ちゃんて言ってみ?」
「アユミちゃんっ」
「うわぁ、ルイくんありがとぉ〜。可愛い」
チリン、チリン、
「ん?おぉ、トシ〜!?」
「あっ、来た?」
「ちょっと出張行ってた」
「だからかぁ?身体はもういいの?」
「まあ……コレ土産」
「ん?どうするみんなに出す?」
「うん、任せるよ」
「うわぁ、トシくんも久しぶり〜」
「ああ、アユミさん久しぶりだね?」
「アユミちゃんな!ちゃんて言ってみ?」
「アユミちゃんっ」
「うわぁ、ルイくんありがとぉ〜。可愛い」
また?
「チョロいな?」
「うん、チョロなこいつ」
「こいつまでつけた?」
「ホントチョロいなこの女!」
「ええ、断定?トシくん久々なのに?」
はは、何か可哀想。
「まぁ、残業で疲れてるし……アユミさんも大変なんだから?」
「ちゃんなっ!セーイチロー、何回言わせんだっ!?」
「え〜!?」
完




