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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第2階層―GREEN―
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ニートな女神と初めての魔物

第1階層編が全部で46話で終わったのに対し、第2階層編はドラマパートも長かったこともあってか46話以上かかりそうです。なんとか50話以内に終わらせたいのですけども。

 DGはまず頻繁に飛び跳ねて場所を移動するようになった。

 そしてこの移動の際、着地までの滞空時間の間はDGにダメージが通らないという事実も発覚。

 DGは、さらに跳んでいる最中に弓矢をつがえて着地と同時に射るという動作をするようになったため、それまでの②の弓矢を射る攻撃の前の隙がこれで完全になくなった。


 さらにその矢が3本連続で射出されるようになった。1人のプレイヤーに3本すべて放たれることもあれば、3人のプレイヤーに別々に1本ずつ放つこともあり前述の攻撃前の隙がなくなったことでかなり厄介になった。


 第2段階ではこれに加えて新たな攻撃方法がなんと3つも追加されていた。

 ただ、その追加された3つの攻撃については全部弓矢による攻撃だったけど。


 ⑤火の矢を射る

 おそらくは属性が火属性の物理攻撃なんだろうけど、下記の⑥と⑦もそうだが特別な矢は1本しか放たないためダメージ自体はそれほどでもない。


 ⑥毒の矢を射る

 なんか矢の先端が紫色に光っているのでおそらくあれは食らうと毒の状態異常になるんだろう。

 ただしこの矢は他の矢よりも速度がやや遅いため回避は比較的楽であり、戦闘終了までに誰もこの矢については食らわなかったのであくまで推定。


 ⑦雷の矢を射る

 この矢は雷属性の物理攻撃なんだろうけど、毒の矢とは逆で通常の矢よりも速度が速いため放たれたらまず回避は不可能。矢そのもののダメージもそこそこあったのだが、何よりもこの矢。食らうと一定確率でこちらが麻痺の状態異常になる。この攻撃が問題だったんだよね。


 私にはもう麻痺無効のスキルがあるから麻痺の状態異常にはならないけど私以外の3人は普通に麻痺になるし、パーティの中で1人でも麻痺になると途端に連携がしにくくなって大変。

 なので私は考えた末にこの⑦の雷の矢については自分から当たりにいくというか、他の3人が狙われた時もすぐにかけつけて攻撃を代わりに受けることにした。

 もちろんダメージは発生したけど、それも微々たるものだったし。3人には私の装備しているマントとフードには状態異常を防ぐ効果があるとだけ説明したらすぐに納得してくれた。

 まあ、今回のそれは嘘ではなく事実なんだから疑うようなら後で装備品の説明画面を見せるつもりだったけどもとにかく今はまだ戦闘中だったからね。


 DGについては、力はそこまで高くはないが耐久と賢さは高いようで、まあガーディアンというくらいだから防御面が優れていることは当然か。

 敏捷の方はなんともいえない。移動速度はまあ速いほうだけどそれ以上に攻撃速度が尋常じゃないくらい速いこともあってか今の私のように回避メインのプレイヤーには少し分が悪いというところ。


「うーん、こんなことならさっき装備戻さずに盾を装備したままにしておけば良かったのかな」


 そうすればダメージを防ぐことも出来る上に、盾術のスキルレベルの経験値もきっとたくさんもらえたに違いないのだ。まあ今から装備変更するのも面倒だし、この次に出現するだろうクエストボスがどんなやつなのか想像もつかないんでもうしないけど。


「稲妻斬り!」


 パス太はDGの弱点属性である雷属性の物理攻撃技、稲妻斬りをメインで攻撃していった。


いかずちの矢!」


 ナポリさんも同様に、弓矢で雷属性の物理攻撃をDGに命中させて微々たるものだがダメージを与えるのに貢献していた。


「パワーラッシュ!」


 だけどペペさんはそれとは少し違っていて、大剣の技で通常よりも大きなダメージを与えられるという技を使ってDGを攻撃していた。

 実はペペさんはまだ雷属性と光属性の攻撃技や魔法を覚えてはいないそうで、弱点をつくということはできなかったのだけど。何気にそれが1番大きなダメージを与える攻撃だったりするんだよね。


 え、私は何をしていたのかって?

 うん。まあなんか3人の方がかなりやる気になって張り切っていたみたいだし、私はDGが雷の矢を使ってきたきた時にみんなの前に飛び出して盾になるのと、後は体力が減って3人のうちの誰かが回復のために後方に下がったらその人が抜けた分の穴を埋める形で戦闘に参加してね。

 別にさぼっていたわけじゃないけど、自分から積極的に戦闘に参加しなくてもDGは倒せるということに気づいたんで今回はちょっと休ませてもらったんだよ。

 第1段階の時に私はけっこうダメージを与えていたし、何より全属性の魔法攻撃を試してみてDGの弱点を見つけたことだけですでにこの戦闘で私は十分活躍しただろう。


 本当は私も積極的に戦闘に参加すればきっともっと速くDGは倒せたんだろうけどね。

 あんまり私がなんでも1人ででしゃばっても他の3人のモチベーションが下がるだけだろうし。


「パーティだとそういうのも考えなくちゃいけないから面倒なんだよな」


 私は3人の戦闘を見ながらついそうつぶやいた。

 パーティプレイはたしかに戦闘そのものは楽になるが、その分自分だけでなく他のメンバーのことも考えながら戦う必要があるのでそこが面倒だと感じてしまう人もいる。

 逆にソロプレイだと1人でなんでも自由にできるからその点については楽なんだけど。


「迷うよな。別に私はどっちでもできなくはないんだけども」


 でもここまでソロでやってきて苦戦することもあったけど最終的にはなんとかなったし、こういうクエストの際は誰かとパーティを組んでもいいとは思うのだけど。


「やっぱりまだまだソロで行こうかな。そっちの方が気楽でいい」


 私の結論は変わることはなかった。

 それでも時たまこうして誰かとパーティを組むたびに同じ問いにぶつかるのは、私がパーティ戦闘の楽しさももう知っているからか。

 麺類トリオとの4人パーティも楽しいんだけどね。でもローズ達と一緒に戦った方が楽しかったと思うのは、きっとローズ達のパーティーが全員女の子だったからか。。

 同性同士のパーティーの方が楽しいと思うかどうかは、そのプレイヤーによるんだろうけど。


「お、ついに決着かな」


 DGはどうやら第2段階までしかないようで、その後は特に攻撃方法や行動パターンが変化することもなくそのまま体力を減らし続け。そしてついに今パス太の稲妻斬りによって体力が0になった。

 ただ、0になったところでDGは消滅することはなかった。

 その場で倒れこんだと思ったらDGの体からあの黒いもやみたいなやつが噴き出すように出てくると、それは空気の中に消えていきDGはダークなカラーから元の色合いに、つまり普通の守護者の姿に戻ったのだけど。


「やっと倒せたわね。でも本番はこの後でしょう?」

「ああ、今のうちにポーションと聖水を飲んでおこう」


 私たちは次のボス戦が始まる前のこの休息時間の間に回復アイテムを使ってHPとMPを全快させた。

 そしてそれから数秒後に状況は動いた。なんと守護者の体が光の粒になって消えてしまった。


「え、もしかして死んだの?」


 ただ、それに驚いている暇はなかった。


 再びの地鳴り、それも地鳴りというよりはもう地震に近かった。

 それから空に浮かぶ暗雲からあの石碑跡地にもう無数の雷が降り注ぎ、とうとう石碑は跡形もなく消し飛んでそこは更地に変わった。そしてその更地から一気に噴き出してきたのはあの黒いもや。


「さて、何が来るのか」


 私たちはただ黙ってその黒いもやの方を見ていた。

 黒いもやが地面から噴き出すのが止まった時、そこで噴き出した黒いもやはとうとう何かを形作り始めた。それはかなりでかい何かであり、間違いなくこのクエストのクエストボスモンスターであることはもう誰も疑っていなかった。

 そうしてこのクエストボスモンスターはとうとう私たちの前に姿を現した。


 遥か昔に、強大な力を持ってこの階層で暴れまわっていたという魔物、それはなんと大きな猪だった。


「え?」

「最後までイノシシか」

「でも間違いなくあれがボスだろう」


 そのイノシシはただただ大きかった。

 全長は、8メートルはあるんじゃないだろうか。

 黒い、いやところどころ紫色も入っている体毛と血のような真っ赤な目。

 口元から生える牙は長く、太く、口の左右に2本ずつ生えていた。


「……エリュマントス」


 私がその巨大なイノシシの頭上に表示されたモンスター名をつぶやくと、神話に詳しいナポリさんが教えてくれた。


「ギリシャ神話に出てくる凶暴な暴れイノシシの名前ね。たしかヘラクレスが神の座につくための12の試練のうちの1つにこのイノシシの生け捕りがあったはず」

「生け捕りですか?」

「ええ、それでヘラクレスは見事に成し遂げたそうよ。ああでもそうね。たしか神話じゃヘラクレスはエリュマントスの大猪を捕まえる前に、まずケンタウルス族と戦うことになったって」


 へえ、ケンタウルス族と。それってあれだよね、つまりさっきの守護者がケンタウロスみたいな姿をしていたことと何か関係があるのかな。

 いや、というかこのクエストはその神話をモチーフにしているクエストということなんだろうか。


「でも、その最中に色々と問題も起きたみたい。ヘラクレスの師匠だったケイローンも、この騒動がきっかけで最終的に命を落としたくらいだし。まあ、後にケイローンの死を悼んだヘラクレスは、ケイローンをいて座にしてあげたらしいけど」


 なるほど。まあそこら辺はもうこのクエストとは関係ない部分なんだろうけどナポリさんって本当に神話に詳しいんだな。すごい知識量だ。


「おい、そんなこと話してる場合じゃない、来るぞ!」


 ペペさんの一言で私とナポリさんはまた身を構えてエリュマントスの方を見た。

 エリュマントスの体力は300%、HP大ケージ3本分だったことからもやっぱりこいつが今回のボスクエストのボスなんだろう。つまりこれが正真正銘このクエストの最後の戦いというわけだ。


「ヘラクレスは生け捕りにしたらしいけど、僕たちはこいつを倒さなきゃいけない」

「あら課長、もしかしてビビッてるんですか?」

「いや……うん、正直に言うとちょっと」


 へえ、パス太にもそういう部分がちゃんとあったんだ。

 フォレストベアにも、クイーンビーにも、マッドゴーレムにも無鉄砲に挑もうとしていたから私はてっきりパス太はそういうのに対しての恐怖心とかは薄いと思っていたんだけど。

 エリュマントスはかなりでかい上に見た目でもう迫力十分だから面と向かって相対したら誰だって足の1つや2つすくんでしまうということか。……足は2つしかないけど。


「大丈夫だ。ここまでやってこれたんだ。きっと勝てる」


 そしてここでペペさんのポジティブ発言。

 正直まだ戦闘が始まってもいないこの段階でそのセリフはちょっと説得力に欠ける部分もあったけど、ナポリさんとパス太、そして私を勇気づける効果はあった。


「そうね、ここまで来て負けたんじゃ納得いかないし」

「絶対に勝つぞ」


 皆の気合は十分だった。


 さて、というわけでいよいよエリュマントスとの戦いが始まったわけだが。

 まずは私たちは散開してダークガーディアン戦と同じようにエリュマントスの4方を囲い込むというフォーメーションを組んだ。

 いや、ボスが1体だけならこのフォーメーションがパーティプレイでの定石なんだよ。

 これによってまずボスの行動や、攻撃範囲なんかもわかるからね。


 先手は私たちが取った。

 まずはナポリさんがエリュマントスから見て左方から弓矢での通常攻撃をしかけたが、もちろんエリュマントスは巨体であるために矢は命中したもののダメージはほぼ0だった。

 あるいはHPが10000あったとしたら1ダメージは与えられたかもしれないという程度の。


「やっぱり皮膚が硬いか」


 弓矢はもともと威力が低い武器ではあるけどそれでもダークガーディアンに対しては少しは効いていたはずの攻撃がこのダメージ。つまりエリュマントスの耐久はダークガーディアン以上ということか。


 そして今度はエリュマントスの攻撃。

 エリュマントスは大きく息を吸い込んだと思ったらそこで雄たけびを上げた。

 するとエリュマントスを中心とした半径10メートル圏内の地面が抉れた。

 これはもはや雄たけびというか衝撃波に近い。そしてこの攻撃は全方位攻撃だった。


 なるほど、接近戦が得意なプレイヤーが集まってよってたかってボコボコにしようものなら今ので一網打尽になるわけか。


 私とペペさん、遠距離攻撃メインのナポリさんは幸いにも今の攻撃は食らわなかった。

 最初の時点で10メートル以上距離を置いていたからだ。

 ただ運悪く攻撃をしかけようと接近するところだったパス太は今の攻撃をまともに食らってしまった。

 私は、パスタの体力がそれでいきなり2割近く削られたことにも驚いたけど何よりもパス太がいきなり地面に倒れ伏したことに驚いた。


「課長!!」

「大丈夫だ。それにしても厄介だな」


 どうやら今の衝撃波攻撃、理屈はわからないが横ではなく上から下への攻撃だったようだ。

 いや、違うか。つまり今の雄たけび攻撃の本質は衝撃波ではなく重力波。攻撃圏内にいるプレイヤーを問答無用で地面に叩きつけてダメージを与えるんだ。

 これは、あれだな。不用意に近づいたら確実に殺られるやつだ。


「皆さんいったん下がってください。また私が魔法を試します。ナポリさん!」

「わかったわ。HPケージを見ておけばいいのよね?」

「はい、お願いします」


 私はダークガーディアン戦の最初と同じように、エリュマントスにも何か弱点となる属性がないか調べるために全属性のアロー系の魔法を連続で唱えて全弾エリュマントスに命中させた。


「水属性と光属性!、火、土、風、雷、闇に耐性有り!」

「え、そんなに?」


 さすがは最高難易度のボスクエストのボスだけあって耐性となる属性がまあ多いこと。


「じゃあ僕は水流斬りをメインに、ペペさんは隙を見て接近してパワースラッシュを」

「ごめん、私水属性も光属性もまだ技覚えてないの」

「じゃあナポリさんはエリュマントスの注意を引き付けておいてください。玲愛、さんは自由に」


 あ、うん。言われなくても私は自由にやらせてもらうつもりだけど。

 でもどうしようかな。アロー系の魔法を9つ叩き込んでそのうちの2つの属性が弱点で、5つの属性に耐性があるとのことだったけどエリュマントスの体力はそれでまだ300%のうちの10%も削れていないみたいだし。つまり賢さも相応に高いということ。

 そしてバトルボアと同じ要領なら残る力と敏捷の値についても……


「ぐわぁぁぁぁ!!」


 あ、やっぱりだ。

 エリュマントスは見た目の大きさに反して意外に速かった。

 でもやっぱりボスとはいえ体が大きい分重いのか、このクエスト第3段階の強化版バトルボア並の速さでの突進攻撃。狙われたのはペペさんでその突進攻撃をなんとか大剣で受け止めたものの後方にふっとばされた上に今のでペペさんの体力が6割消し飛んだ。

 私とナポリさんなら、今の突進攻撃を回避はできそうだがペペさんとパス太はさすがにきついか。


「どうしようか。それでもまだ耐久よりか賢さの方が低そうだし、今回は魔法メインでいくか」


 エリュマントスの弱点は水属性と光属性だったな。

 私の手持ちでこの2つの属性の攻撃魔法はというと……今は5つか?


「アクアバブル!」


 私はまずアクアバブルの魔法で空中に大きな泡を作り出した。

 この泡は敵が触れると破裂して水をまき散らしダメージを与えるもので、私は心の中で空中機雷と呼んでいる魔法だったけど。とりあえずまず1個設置しておこう。

 これからもリキャストタイムがあけて再使用できるようになるたびに隙を見てはこのように設置していって、エリュマントスが移動した際にあの巨体に泡が触れた瞬間に破裂してダメージを与えられるようにしておく。

 泡は何にも触れなければ3分したら自動で割れてしまうけど、アクアバブルのリキャストタイムは10秒なので、まあ3分以内に次々と泡を生み出していけば結果的にフィールドに空中機雷がたくさん漂うことになる。


 1番理想的なのは、エリュマントスが1回移動した瞬間に10個くらいの泡がいっせいに弾けて大ダメージを与えられるというものだが、そこまで上手くいくかどうか。


 ちなみに私は今回、ウィンドステップとファイアーステップはまだ使っていない。

 少なくともまだ今の段階では使わなくてもいけると判断したし温存しておく。

 というか、魔法攻撃主体で戦うと決めたのなら力の値を強化するファイアーステップの方は最後まで使わない可能性もあるんだけど。


 第1段階のエリュマントスの攻撃方法について確認できたのは4つだった。


 ①突進攻撃

 これはもうすでに説明した通りだ。エリュマントスもボスモンスターである以前にやっぱりイノシシだということなのか、攻撃の軌道は直線的だ。

 ただ体が大きい分よけるには全力で走って横にそれるしかないのだけど、それもギリギリでよけないと軌道修正してくるから回避のタイミングが難しい。


 ②雄たけび

 これも先に説明した。エリュマントスの周囲10メートルの地面にむかっての重力波。

 しかしこれは魔法攻撃であって、エリュマントスは力は高いが賢さはそうでもなさそうなので食らってもダメージはそんなにない。

 ただし問答無用で地面にたたきつけられておよそすべての行動が強制的にキャンセルされる上に、そこから連続で突進攻撃をしてきたら直撃するのは必至なので出来ればこれもくらいたくはない。

 攻撃前に合図として息を大きく吸い込むのでエリュマントスが息を大きく吸い込んだら全員いったん距離を取ることに決めたらあまり問題はなくなったけど。


 ③火炎ブレス

 うん、まああれだけ大きな口があるんだから何かしらブレス攻撃はあると思っていたけど案の定ありましたっていうか、本当に期待を裏切らないよねこのゲーム。

 もちろん火属性の魔法攻撃だが、第1階層の迷宮ボスのドラゴンが使用してきたファイアーブレスをもうパーティメンバー全員1度経験済みなのでこれは割と回避できた。

 ただ若干ドラゴンの時よりもブレスの攻撃範囲が狭くなっていたのかな。

 あるいはドラゴン戦よりも今回のバトルフィールドの方が広かった分安全地帯も広かったというだけなのかもしれない。


 ああ、そうそう。

 これは言い忘れていたというかまあ言わなくても大体わかってくれてると思うけど、さっきのダークガーディアン戦もこのエリュマントス戦も何も牧草地帯フィールド全域で戦っているわけではないからね?

 確認はしてないけどきっと戦闘開始直前にまたどこかに見えない壁みたいなのが張られていてフィールドがある程度制限されているはず。100か200メートル四方ってところかも。

 そのくらいの距離まで突進していったエリュマントスがそこでくるりと向きを変えて戻ってくることがあったからそれも推定でしかないけど。

 プレイヤー同士の決闘と同じ感じかな。あれもフィールドをある程度狭い範囲に区切ってその中でやりあうんだし。


 デビルツリー戦やベジタブルキング戦の時のように特設バトルフィールドに飛ばされることがなかったのは、ちょっとあれっと思うこともあった。

 ただ牧草地帯はもともと広大なフィールドだし、クエストの内容上同じフィールドの石碑のあった場所周辺で戦った方が自然であって、わざわざ別のフィールドに飛ばさなくても良かっただけなのかもしれないけど。


 おっと、少し話がそれたな。それでエリュマントス第1段階の4つ目の攻撃なんだけども。


「……前足を上げた?」

「とりあえず奴の正面から離れて!」


 エリュマントスは前足を大きく跳ね上げて後ろ足2本で少しの間だけ体を浮かせると、そこから前足を一気に前方の地面に叩きつけた。

 するとそこからエリュマントスの正面方向におよそ30メートルほど地面がどんどんと盛り上がって岩盤が下から突き出してきた。

 それを正確にはなんていうべきなのかは知らないが、たぶん土属性の魔法攻撃になるのかな?


 エリュマントスのその岩盤突き上げ攻撃によって突き上げられた岩盤は、なんと元の平らな地面に戻るまでに2分もかかった。逆に言うと2分間はそのフィールドに30メートルほどの岩壁が出現したわけであってつまりフィールドの地形が一部変化したのだ。

 なんとか初見で使ってきた時はパス太の的確な指示もあって全員よけられたものの、果たしてあれを直撃していたらどうなっていたのかなど想像したくもない。

 私以外の3人はもう絶句していたけど、うん、わかるよその気持ち。


「滅茶苦茶じゃないか!」


 私は1人そう叫んだのだけど、たぶん他の3人も同じことを思ったに違いない。


<モンスター辞典>

〇エリュマントス

伝説族。第2階層の住人クエスト『草原の守護者』に登場するクエストボスモンスター。

元ネタは本編内ですでに説明しましたがギリシア神話に登場する大きな暴れイノシシです。

このゲーム内でもその容姿は反映され巨大なイノシシのモンスターに。

基本的に体毛は黒ですが、ところどころに紫色の毛が禍々しい模様を描くように交じっています。


力、耐久、敏捷、賢さすべてが高い水準にありますが、その中でも耐久はトップクラス。

ただし他と比べると敏捷と賢さが低いので魔法攻撃がおすすめ。

弱点は水・光属性。耐性が火・風・土・雷・闇と5つの属性の攻撃をほぼ無効化してしまうので倒すならまず弱点をつくしかないだろう。氷と無属性は普通ダメージ。


体力もHP大ケージ3本分と多く、またHPが一定ラインまで減るとエリュマントスの攻撃パターンも変化してくるのだが、それは次話以降参照のこと。


ちなみに本編内最後の岩盤突き上げ攻撃については、実は魔法ではなく物理攻撃なのですが、あくまでエリュマントスが地面に衝撃を与えて地面が隆起した結果なので物理攻撃扱いです。紛らわしいようで正直どうでもいいような情報ですが一応念のために言っておきました。

また次話後書きでもエリュマントスについて続きを説明する予定。

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