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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第2階層―GREEN―
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ニートな女神と初めてのイノシシ狩り

 ナポリさんはどうやら神話とか、そういうのに興味があるらしくその手の本をリアルでも買って読んだりしているとのことで、そこからさらにケンタウルスについて知っていることを教えてくれた。

 ただ語り始めたらキリがなさそうだったので途中でパス太が止めに入ったけど、おかげで私はケンタウルスについてちょっとだけ詳しくなった。

 ただ、それがこのクエストの中で活かされることはないと思うが。


 だって、このクエストのボスはきっと守護者ではないのだから。


「とにかく、これでクエストについての話は聞いた」


 パス太はそう言った。それから最後にセイジュさんにその守護者を奉ったという石碑のある場所を教えてもらうと、私たち4人の牧草地帯のマップデータのある場所に赤い丸印がついた。

 その地点は街からも牧場からもかなり離れた場所にあって、でも私は1回そこら辺もちゃんと見に行ったことがあるけど石碑なんてあったかな?

 もしかすると私が想像していたものよりも小さなもので前は気づかずに見落としていたという可能性もあるにはあったけど。

 おそらくこの『草原の守護者』クエストに挑戦中のプレイヤーが牧草地帯フィールドに出たら、通常のフィールドとは違う特別なフィールドマップへ移動するということなんだろうな。


 あの、前に花畑フィールドであったボスクエスト、『花畑に咲く悪の花』と同じように。


 つまりは今から私たちが街の西門を抜けたら、たぶん壊れた石碑があって普段よりも強力なモンスターが大量発生している牧草地帯フィールドに出るということなんだろう。

 そしてそのフィールドに出入りできるのはこのクエストを受けたプレイヤーだけ、と。


 私たちはセイジュさんの家を出るとそのまま街の西門の前までやってきた。

 そのタイミングで私は麺類トリオに声をかけた。そう、アイテム支援をしておかなくては。


「お、そうだったな。すっかり忘れていた」


 うん、私も危うく忘れるところだったよペペさん。


「それで支援って、今回は何をくれるの?」

「えっと、まずは回復アイテムですね。ポーション☆と聖水☆を皆さんに5個ずつ」


 そう言って私はまず先に回復系のアイテムを3人にそれぞれ譲渡した。

 え、5個ずつじゃ足りないんじゃないかって?

 いや、その時はまた追加で渡すから大丈夫だよ。それに3人だって店売りの普通のポーションや聖水とかはある程度持ってるだろうから。

 あくまで私が渡した☆つきの回復アイテムは不慮の事故で一気にHPやMPが減ったりした時用だということだ。まあ、またクエスト終わった後で使わなかった分を回収するのも面倒だったので今回渡した分についてはもう完全にあげた。別に必要になったらまたいつでも作れるんだし問題はない。


「それと装備品も支給しておきますけど。えっと、確認なんですけど皆さんも装飾品アイテムって3つまで装備できるようになってますよね?」


 たしかゲームを始めた当初は私は装飾品は2つまでしか装備できなかった。

 だけどレベル15になった時に装飾品を3つまで装備出来るようになったのだ。

 だから他のプレイヤーもきっと同じレベル15になった時に装飾品の装備枠が3つになっているのではと思っていたのだけど。


「ええ、私とペペさんがレベル17で、課長がレベル18。もう皆装飾品の装備枠は解放してるわ」

「えっと、ちなみにいつ増えました?」

「レベル15になった時だったかな」


 やっぱりそうだったんだ。ていうか3人ともやっぱりそれくらいのレベルだったのか。

 でもきっと3人パーティならそのくらいのレベルがあればこの階層の攻略は出来るんだろう。

 ただ唯一あの迷宮のボス、マダムバタフライ戦では苦戦を強いられるだろうけど。

 そういえばもう迷宮ダンジョンもボス部屋の前まで行ったって言ってたな。


「あの、じゃあこれ……」


 そう言って私が3人に支給したアイテム、装備品は力の腕輪だった。

 そう、沼地のマッドゴーレムが落とすレアアイテムである。

 さっきクエスト前の準備の30分間で沼地でマッドゴーレムをなんとか2体ほど見つけて倒し私は力の腕輪を2つ入手していた。

 あとの1つは私がもともと持っていたものだが、これはクエスト終わりに回収して店で売るかな。

 あるいはこの先もまたこういう誰かとパーティ組んだ時に貸し出す用にいくつか確保しておくのもいいだろうし。アイテムボックスにはまだまだ余裕があるからね。


「え?」

「これって……」

「すごいな、この装備品。でも、それを3つも?」


 もちろん3人は驚いていたけど、もう今回は何も言ってはこなかった。

 なんていうか、もうそれ以上考えるのを諦めたような感じで、むしろ私ならそのくらい普通かと思われたというか。端的に言うと私の異常さに慣れたというか。

 でもまあ、他のプレイヤーのあれこれについては基本的に深く詮索しないのがこういうゲームのマナーだしね。私の場合は質問攻めにされたけどそれくらいの無茶をやっていた自覚はあったからそれは仕方ない。もっとも、自覚はあるがそれをやめるつもりは今のところないけど。


 力の腕輪の効果はSTR+25という序盤ではかなりとんでもない代物。

 これを装備しただけでおそらくモンスターに与える物理攻撃のダメージが飛躍的に上がるだろうことはまず間違いない。

 通常のレベルアップでいうなら私の場合でも、STRは1レベル上がった時に2ずつ上昇しているのでこの力の腕輪を装備したら一気に12レベルほど上がったのと同じ数値になるわけだ。


「うわ、本当に25も上がってるよ。凄いな」

「ほんと。これなら私の矢でもコボルトとかなら一撃で倒せそう」

「なら俺はバトルボアも一刀両断できると思うぞ?」


 3人は私から受け取った力の腕輪を装備してから改めて自分のステータスを確認し、装備補正でSTRの値が25も上昇していることを見るなりそれぞれの反応を見せた。

 ああ、そうか。ナポリさんの武器は弓矢だったな。

 弓矢は一発一発の威力が低い代わりに攻撃速度は速く、スキルレベルが上がると様々な効果のある矢を放てるようになるんだったか。それに遠距離攻撃が出来るというのが強みの武器だ。

 耐久の高い敵とは相性が悪いが、その分敏捷が高い敵には強いといったところ。


「よし、皆装備したな?、それじゃあ行くか」


 そうして私からのアイテム支給が終わると、私たちはいよいよフィールドへ出ることに。

 ここから先は未知の領域だから気を引き締めていかなければ。

 ……ああ、でもフィールドの景観やマップはいつもの牧草地帯と同じだろうけどね。


 <第2階層:牧草地帯(特別フィールド)>


『草原の守護者』のクエストの舞台となった牧草地帯。

 私たちは門から出てフィールドに出た瞬間にまずクエストの最初の目的を理解した。

 視界の右上に出現したカウンター。魔物討伐カウンターと表示されたそれは100という数字をカウントしていた。


「えっと、つまりまずはモンスターを100体倒せばいい、のよね?」


 ナポリさんが確認するようにそう言ったら私が答えた。


「たぶんそうだと思います。けど、どのモンスターを倒せばいいのかわからないですね。もしかしたらこのクエストの中だけに出現するモンスターがいるのかもしれないですし」


 第1階層のゴミ山クエストに出現したカラスたちや、洋館クエストで出現したゴキブリみたいな。


「とりあえず壊れた石碑とやらがある場所に向かいましょう。道中でモンスターにも出くわすでしょう」

「そうね」


 そういうわけで私たちは歩き始めた。

 ただ、その後の最初の戦闘で私たちはこのクエストの恐ろしさをまず知ることになった。


「うん、あれ?」

「おいおい、嘘だろ?」

「え、え?、なんで?」


 3人は戦闘開始直前、そのモンスターの姿を見た瞬間に驚愕した。

 いや、私も驚いたけど、でもまあすぐに理解したよ。このクエストがなぜこの階層の最高難易度のクエストと呼ばれているのか。


 あのね、つまりはそのモンスターは本来であればこの牧草地帯に出現するモンスターではなかったわけ。でも私たちにとってまるっきり初見のモンスターというわけでもなかった。

 むしろ1度は戦ってその恐ろしさを知っているからこその恐怖というかね。


「どうしてバトルボアが。しかも1度に5体も!?」


 そう。本来であれば迷宮ダンジョンの地下2階から出現するはずのこの階層のザコモンスターの中でもトップクラスのやばさを持つモンスター、バトルボアが同時に5体出現したのだ。

 たしか迷宮ダンジョンでは多い時でも同時に3体までとかしか出なかったのだけど。


「しかも他のモンスターの姿がない、ということは……」

「まさかバトルボアを合計で100体倒せっていうこと?、冗談でしょ?」


 まだそうと確定したわけではない、けどもおそらくはそうなんだろう。


「そんな呑気なこと今は言ってる場合じゃない。来るぞ!」


 ペペさんの掛け声と同時に戦闘が開始された。

 というか5体いるバトルボアのうちの3体がこちらに突進してきたのだ。

 それを私は余裕で、ナポリさんとパス太はギリギリというところでかわしたが、ペペさんは大剣使いで敏捷が低かったせいかかわすことはできなかった。

 しかしペペさんはダメージを受けることはなかった。なぜならばペペさんは……


「うおらぁ!!……すごい、本当に一撃で倒せた」


 こちらに向かって突進してきたバトルボアを大剣で切り伏せると一撃でバトルボアを1体倒したのだ。

 それはきっと力の腕輪の効果もあってのことなんだろうけどきっとペペさんはレベルアップで手に入れたスキルポイントなんかもSTRの値に多く振ったのだろう。

 さすがに全部STRに振ったわけではないだろうけどバトルボアを一撃で倒せるほどSTRが高いというのは恐ろしい話だ。ちなみに私の場合は通常攻撃だけなら2、3回剣で斬れば倒せる。


「大丈夫です。今の突進攻撃の速さから推察するに強さは迷宮内に出現するバトルボアと同じ。しかも牧草地帯フィールドは広くて障害物もほとんどないから行けます!」


 私はそう言い切ると、3人はそれを聞いて頷いた。


「そうね。この広さならたとえ同時に何体出てきても回避できる」

「バトルボアは突進攻撃以外してこないし、落ち着いて対処すればいけるぞ」


 ナポリさんとパス太がそう答え、ペペさんは無言でもう大剣を次の獲物、バトルボアに向けて振り下ろして行った。

 そうか、ザコモンスターなら大剣使いとか攻撃力特化型の武器を使うプレイヤーはたいていが一撃で倒せるんで防御とか回避する必要はないんだ。

 ただ向かってくる相手を返り討ちにしていくだけでいいんだし。


「よし、そうとわかればどんどん行くぞ」


 そしてそれからはもう早かった。

 パス太が先陣を切ってバトルボアに向かって突っ込んでいく。バトルボアの方ももちろんパス太に向かって突進攻撃をしかけてくるがそれを直前でかわすとパス太はバトルボアを手にした剣で斬りつける。

 仮に回避が間に合わなくてもパス太は盾を装備しているので盾で攻撃を防げばダメージは最小限に止められる。まあ、バトルボアの突進攻撃は盾で攻撃を受け止めても後方に吹っ飛ばされるんだけども、そうなった時は他のメンバーがカバーすれば問題はないのだ。

 結果としてバトルボア×5は3分もかからずに全滅させられた。

 倒したら普通に経験値とゴールド、そして私がダメージを与えた個体からはドロップアイテムも落ちたけどやっぱり普通のバトルボアと違うところはなかった。


 ちなみに、3人は私のバトルスタイルについて初戦の後で興味津々で聞いてきた。

 私のバトルスタイル。つまり右手に片手剣、左手に短剣を装備というダブル武器スタイル。

 そして前までのドラゴンシリーズの装備とは違い、蝶々シリーズの装備に変えたことで防御よりも回避に重きを置くようになった戦闘。

 なによりも私の敏捷の値の高さについてはパーティ内で私の次に敏捷が高いであろうナポリさんでさえ目で追うのがやっとという速さらしかった。

 ペペさんにいたっては私の姿が残像をともなって見えたと。え、そんなに?


「それにその左手の短剣。私の気のせいじゃなければそれ……」


 ああ、まあさすがに気づくよね。

 だって戦闘中に私が投げた短剣が命中したバトルボアが全部毒とか、麻痺とか、眠りの状態異常になっていったから誤魔化しようがない。


「はい。この短剣は簡単に言っちゃうとダメージを与えたら高確率で相手に状態異常を与えるんです」


 私がそう説明するとペペさんが聞いてきた。


「もしかしてその短剣も?」

「はい。第2階層の迷宮ボスをソロで撃破した時の金の宝箱の中に入ってたものです。あと短剣を装備できるのは、この街の住人クエストの中に短剣を装備できるようになるクエストがあるんです」


 私が答えるとペペさんはそこでわかったもういいと言うとそれ以上は何も聞いてこなかった。


「へえ、そんなクエストがあるんだ。私たち住人クエストの方はほとんど手つけてこなかったからね」

「それなら今度いくつかやってみる?」

「言っておくけど、今回みたいなボスクエストとかはなしでお願いしますよ?」

「え、どうして?」


 パス太は他のボスクエストにも挑む気だったのか。

 まあこの階層の他のボスクエストのボスは弱かった(私からすると)からきっとこの3人なら大丈夫だとは思うけど、ナポリさんが嫌と言っているので挑むことはなさそうだ。


「それよりも玲愛ちゃん。その、これは聞いてもいいかどうか悩んだんだけど」

「はい」

「いや、別に変ってわけじゃないんだけどね。さっき門を出る前に装備して今もつけてるその、仮面は何か意味があるの?」


 おっと、それ今このタイミングで聞く?

 てっきりさっき出る前に装備してから3人が誰も何も言ってこなかったからちょっと安心してたんだけど。

 え、なんのことってそれはあれだよ、だからあの装備するのにちょっと勇気がいるやつだよ。

 そう、あの水色の蝶々を形どった蝶々の仮面だよ。


「はい。えっと、この仮面と私が今着ているフードとマントとかはシリーズなんですよ。だからあれです。それで装備を揃えたいというか……全部そろえて意味をなすというか」


 私が少したどたどしくもそう説明したらナポリさんは理解してくれた。

 他の2人も、まあきっとわかってくれたと思う。ひとつ断っておくべきは蝶々の仮面というアイテムは決して私が気に入ってるからとか、趣味やおしゃれで装備しているわけではないということだけ理解してくれているならばそれでいい。


 理解してくれて、いるよな?


 あれ、なんかペペさん私と目があった瞬間にさっと目をそらしたけど、もしかして私なんか痛いやつだと思われてる?


 ねぇ、ちょっと。おい、誰か何か言ってくれよ。


 私は急にその場に訪れた静寂にとたんに不安になった。けれどもナポリさんはそんな私を見てにっこりと微笑むと言ってくれた。


「大丈夫よ。皆わかってるから」


 いや、いやいやちょっと。その言い方だとなんか誤解を招くよ。

 私は断じて痛いやつではない。こんなど派手で奇抜な仮面、シリーズものの1つじゃなきゃ絶対に装備してなどいなかったと断言できるよ。……やっぱりこれだけ外そうかな。


「ま、まあとにかく先に進もうじゃないか。今の戦闘でカウンターの数字が100から95に減ったということは、きっとバトルボアをあと95体倒せなきゃいけないんだろうし」

「そうだな。あまりこれに時間をかけてもいられない。その後にボス戦が控えているんだし」


 パス太とペペさんがそう言うと、そこで話は終わり私たちは移動を再開した。

 そしてそれから私たちはちゃくちゃくとバトルボアを見つけては戦って倒して行ったのだが。


『草原の守護者』のクエストに挑戦中はどうやら牧草地帯にはバトルボア以外のモンスターは一切出現しなくなるようで、それは出会う敵がすべてバトルボアであるという並のプレイヤーからしたら結構な鬼畜仕様だったわけだけど、私たちのパーティは比較的安全に攻略を進められた。


 バトルボアは1度の戦闘で平均して5体前後出現した。

 多いときは7体も出現してその時はさすがに全員無傷ではいられなかったけどまあなんとかなった。

 やっぱりバトルボアを一撃で倒せるペペさんが一番活躍していたと思う。


 あと、このクエストの挑戦中はどうやら牧場には入れないようになっているみたいで、牧場の入り口は封鎖されていた。

 そういえば『花畑に咲く悪の花』クエストの時も、花畑から森の方へは行けなくなっていたな。

 寄り道などするなということなんだろうけどもそれにしても牧場の入り口を封鎖って。

 アーネルさんやシアたちがやったのかね。


「あれが、石碑かな。ほんとに壊れちゃってるけど」


 そして私たちはクエストの目的地でもあった牧草地帯の橋、マップの赤い丸印で囲まれた地点までやって来た。するとそこにはたしかに壊れた石碑が建っていた。

 たぶん壊れる前は5メートルくらいの高さがあったんだろう長方体の、石碑というよりは墓石に近いような形状をしていたんじゃないか。それが真ん中あたりからひびが入ったのかポッキリと折れてしまって、石碑の周辺には石のつぶてが散乱していたけど、そのつぶては元は石碑の一部だったんだろうことは容易に想像がついた。


「どうする?、先に石碑に着いてしまったが?」

「うーん、今の段階では特に何かが起こる気配はなさそうだけど」


 その時点でカウンターの数字は残り13。私たちはそこで話し合った結果先にバトルボアをあと13体倒してひとまずカウンターの数字をゼロにしようということになった。

 それから10分ほどして、石碑の周辺を探索していく中でバトルボアを合計13体倒すとカウンターの数字はゼロになった。


「よし、これで最後だ。……あれ?」


 ところが、だ。カウンターの数字が0になった直後、カウンターの数字がそこから50まで戻ってしまった。


「カウンターが増えた?」

「なにか手順を間違えたのか?」


 ボスクエストは初めてだった3人はそのことに動揺した様子だったけど私は違った。


「皆さん落ち着いてください。これはきっと……」


 と、私が説明しようとしたところでいきなりの轟音が聞こえた。

 それは天から降り注いだ雷だったようで、その雷はさっきの石碑の跡地に落ちた。


「うわぁ!」

「え、ちょっと何!?」


 私たちが驚いたのも束の間、そこからそれまでは快晴だったはずの空に急に暗雲が立ち込め始めた。

 ただしその時点ではまだ雲が出ただけであり雨は降り始めていなかった。


「どうやらクエストが次の段階に進んだみたいです。ほら……」


 私が指さすとさきほど雷が落ちた石碑の跡地、その地面から何やら黒い靄のようなものが噴き出しているようで、きっと封印が少しだけ弱まったんだろう。


「これから後50体、またモンスターを倒すんです。するとクエストがさらに進行して……」

「最終的にあの場所に封印されていたボスが蘇る、ということなのね?」

「たぶんですけど」

「なるほど、それなら話は早いわ。さっさと続きをやりましょう」


 私たちはクエスト第2段階に突入した。

 といってもやることは第1段階とそう変わりはなかった。

 牧草地帯のフィールドに出現するボトルボアを倒して行くだけ。

 ただし、それでも少しの変化はあった。


「む、耐えただと?」


 第2段階で出現するようになったバトルボアが、ペペさんの一撃を耐えしのいだのだ。

 いや、それでも一撃でHPの8割は削れたんだけども。でも第1段階で出現した個体よりもHPか、それとも耐久か、あるいはそれ以外のものを含めた能力値が全体的に上がっていた。


「強くなってる?」

「ああ、間違いないと思うぞ」


 しかし、それでもまだ落ち着いて対応すれば何とかなった。

 倒すべき数も50体と、第1段階の半分の数になっていたし第2段階は割と早く終わった。

 それで、問題は次の第3段階からで、第2段階のカウンターをゼロにしたらまたカウンターが今度は20まで戻った。

 そして再び雷が、今度は3本ほどあの石碑の跡地に降り注いでからフィールド内に雨が降り始めた。


「雨が降ってきたんだけど!」

「大丈夫です。とくに何らかのバッドステータス(能力の弱体化)はないみたいです。ただ降っているだけであって」


 そう、雨はたしかに降ったがそれ自体に問題はなかった。

 ただ少し視界が不良になったかなという程度だし、このゲーム内ではプレイヤーの体に雨があたることはないため濡れることも冷たさを感じることもない。ただ、精神的に寒いと感じてしまうことはあるかもしれないけれど。

 一番の問題はやはり敵の強さだった。カウンターの数は20だからバトルボアを今度は20体倒せばいいのだけど。


「ちょっと、さっきと比べて速くなってない!?」

「しかも耐久も上がっている。これはまずいかもしれんぞ?」


 最悪だったのはどういうわけか第3段階になって初戦でバトルボア×7と戦闘になったこと。

 これは本当にまずい。油断してたらパーティの誰かが死ぬかもしれないと、私はその時そう思った。


<武器の特徴紹介―Part2>

③弓矢

遠距離攻撃がしたい人におすすめの武器の1つ。

銃とは違って攻撃1回ごとの威力は低めだが、銃が攻撃後に反動で隙ができるのに対し弓矢はそれがないため連続攻撃に向いている。

攻撃速度も武器の中ではトップクラスであり動きが素早い、また変則的な動きをするモンスターにも攻撃を命中させやすいというメリットがある。

反面、デメリットとしては威力が低いので耐久の高い、硬い敵を相手取るのに苦労するということ。

しかし弓矢は、スキルレベルが上昇すると戦闘で役立つ様々な効果のある矢を放てるようになるため初期武器としてとくにパーティの援護を担当をしたいというプレイヤーには人気がある。


④短剣

初心者にはあまり向かず、中級者向けの武器。

片手剣と違って武器の長さが短いので近接戦闘は苦手としているが、代わりに武器を投擲することで遠距離にいる敵にも攻撃できるという利点がある。

しかし、1回での攻撃の威力が低く、また投擲した際の命中率もゲーム序盤では低いということもあってかプレイヤー間で短剣をメインにゲーム攻略をしている者はかなり少数派というか、ほぼ皆無である。(第2階層の『短剣入門』の住人クエストを受けるプレイヤーの数は他の武器入門クエストよりも極端に低いというデータも有り)

初期武器の選択においても、知らずに選んでしまった者を除けば最初に短剣を選ぶプレイヤーはいないと言われているほどプレイヤー間には人気がない。

しかし、実はスキルレベルを上げていくとかなり有用なスキルをいくつも覚えるという話も……

その真偽は実際にこの武器を極めた者しか知らない。

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